Re:11colors

毎週木曜日更新(2023年5月現在)。模型、日常。面白いことあれば他の日も

春とチロリアン

中山製靴のチロリアンシューズが馴染んできた。

今日は朝から天候が怪しく、さらにどうなるか見通しの立たない天気。

暑いのか寒いのか、晴れるのか雨なのか。全くわからない。

 

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そういうときにこそ履こうと思っていたのがここのチロリアンシューズだ。

雨に濡れてもあまり気にせず、晴れれば茶靴を履けたことに感謝する。

この辺の微妙な気持ちは、なかなか言葉にしにくい。

ただまぁ、こういう気持ちの微妙な動きは自分で察せられると良いなと思う。

今日で言えば3月で、もう冬に飽き飽きしていたし、暖かくなるとか言ってたし冬の隙間に春の欠片を拾い集めるような気持ちがあったのかもしれない。

 

「今日あったかいな!」

 

なんて言葉に出すのに足元は重々しい黒いブーツ。

そんなことは許されない。と思う。

ステッチダウンで作ると曲がりやすくて、馴染むのも早いのでオススメ。

 

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僕にとって平昌五輪カーリング女子はこんな感じだった。

「皮肉にも」という言い方が正しいのか。

 

平昌冬季五輪のカーリング女子、3位決定戦の日本対イギリスのラストショット。
スキップのイヴ・ミュアヘッドが放ったストーンは日本のストーンをハウス中央へと寄せナンバーワンストーンにしてしまった。失敗といえばそれまでだが、カーリングでは「相手の失敗を喜ばない」という精神があったりする。反対に相手のショットでも素晴らしいものは拍手を送る。東伏見チーム青森の試合を見ていたときにも、会場内でのラジオ解説で解説の小林宏さんが観戦している僕らが相手のショットに拍手を送ったのを見て「日本のファンの方も素晴らしいですね」と言っていたような記憶がある。

 

僕が「皮肉にも」と書いたのはミュアヘッドがミスしたからでなく、僕が小林宏さんの解説ですっかりカーリングの虜になってしまったトリノオリンピックのイギリス戦と同じようなことが起きたからだ(もしかすると、世界選手権だったかもしれない)。その試合も同じような形でイギリスのスキップはミスをした。当時は「やった」と一瞬思った。でも小林さんは確か「今のはギリギリのところを攻めてきたわけで、単なるミスに見えるかもしれませんが、その技術を見て欲しい」と話していて、とても驚いた記憶がある。こんな話をする解説の方がいるのかと。

 

戦術もルールもわからない中でシンプルで、平等な解説を心がけてときに我を忘れように熱く燃える彼の人間味に惚れてカーリングにハマったと言ってもいいほどに私はトリノオリンピックをきっかけにカーリングを観るようになった。BS放送や地上波で出来る限り、一人暮らしが始まりBS放送が見られなくなるまでは可能な限り追いかけた。その小林さんの「ギリギリのところを攻めてきた」という言葉と日本対イギリス、そしてスキップのショット。


ストーンが滑っていく途中に「攻めてきてる」と、トリノオリンピックのことを思い出した(同点でエキストラエンドで日本に後攻持たれて1点取られて負けるのなら自信のあるテイクアウトショットで仕留めに行く。といった感じに見えたが、どうだろうか)。
結果は知っての通りだが、僕は12年前と違って「やった」とは思わなかった。本当に僅かな勝負のアヤ、その攻めが良いゲームを生んだカーリングの持つ面白さにまた気付かされた。

 

そんな2つの試合に居合わせた日本人がいる。そうだ。本橋麻里だ。本橋麻里といえば、トリノからカーリング女子を見る人間からすれば刈谷アナウンサーが「マリリン」と呼び続けてそれで定着したことが印象深い。確か、テイクアウトショットのことをマリリンショットとか言ってたような。彼女がそこからどうなっていったかは詳しく書いている人もいるし、それを読まなくても「ああ、マリリンね」って分かる程度には浸透した。
トリノのあと、彼女が所属していたチーム青森小野寺歩林弓枝といった二人が抜け残ったメンバーに新メンバーを補充する形で存続した。その後の冬季五輪、バンクーバーでは良いところもあったが後半のチームのムードは良いとは言えず戦略の方針の違いが起きたり、コールが割れたりと見ているこちらにもその状態はわかるほどだった。
そのときのムードは記憶をもとに語ってもいいが、まぁ止めておく。

 

ただ、このときのことを頭の片隅に残しておきながら冬季五輪が始まってLS北見の様子を見続けていると、「ああ、本橋麻里は船長になったんだな」というような、そんな感想が浮かんだ。最初に注目されたチーム青森は小野寺さんのチームだった。小野寺さんに林さんが、それで目黒さんや本橋さん。という感じでチームの中のひとりだった。バンクーバーのときは目黒さんのチームだったと思う。きっとあのあたりで「もう自分でチームを作るときが来たんだ」と思ったんだと思う。事実作っているし。

 

ただ、当時は僕もあの険悪ムードは何が原因なのかを一方的に決めつける側だったので「ケンカ別れなのでは?」としか見ることができなかった。真実は分からないが、例えそうだとしても自分のチームを作るときが来たと思ったのは間違いないだろう。

 

こういったことは日常でもあることだと思う。会社でも独立します!なんて人が離れていくことはあるし、数年前にはウチの甥っ子が少年野球のチームを辞めるときに「野球は好きだけど、もっと上手くなりたいからここを辞めます」と話をしたということを耳にしたし。良い意味での「ここにはいられない」。

 

ソチは小野寺(小笠原)さんのチームが出たし、先に書いたとおりに僕も視聴環境がなかったり仕事が慌ただしくて殆ど見られなかったので2010年から2018年に飛ぶわけなんだけど、ここでは本橋麻里はプレーヤーとしての強さを持っているのにリザーブに回っていた。どこかで出てくるもんだろうと思っていたらとうとう銅メダルを取るまで出ることはなかった。選手紹介で変顔を披露していた彼女がすっかり大人になったような気もする。

 

自分のチームが勝つ、とは少し違う、自分が集めたメンバーで勝つ。

本橋麻里も随分変わったなと思った。僕も随分変わって、最前線で戦うわけでなくなり、部下も増えたし、燃えるように仕事をするわけでもなくなったから、随分人が集まるようになって、だからか、彼女の気持ちは少しはわかるようになっていた。本人に聞いてみないと真意はわからないけど。

 

これは、ストーリーを真っ直ぐ見ることが出来るという点でも良かったことだと思う。自分の話はしてもあまり意味は無いのでやめよう。

 

カーリングはもしかすると、また4年後まで忘れられてしまうかもしれない。
でも多分、トリノで小野寺さん、林さん、本橋さん、目黒さん、寺田さんが出場して、刈谷アナ、小林宏さんがコンビを組んでカーリングを楽しく、わかりやすく。そして最後の最後には熱く僕にその面白さや精神を教えてくれた。僕にとっては今回の銅メダルはその地続きのストーリーだ。

 

ただ、それにしても藤沢さんの攻め方はすごいよな……。
強気なのがよく分かる。僕は五輪期間中は「難しい選択を相手に迫る場面を作る」みたいな話をネットでもリアルでもしたんだけど、その姿勢が相手に難しいショットをさせるように仕向けているのは見ていて単純に面白かった。

 

二年前の記事がありました。

re-11colors.hatenablog.com

 

 

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10年前にVOLVO CARS JAPANのカレンダーコンペで受賞したカーリングのグラフィックアート。

何故か行きつけの先頭に飾られていた当時の写真が出てきたので載せます。

 

※このブログは基本的に毎週木曜更新です。

This is チロリアンシューズ。中山製靴のチロリアンシューズ

チロリアンシューズは山が多い日本の風土にあった靴かもしれないという話をここ最近は良くしている。きっとそんなこともいずれ忘れてしまう気もするが、たまたまそんな風に思わせるような話を幾つか見つけてしまって都合よく面白く解釈しているのが今で、だからそう思っているだけなのかもしれない。

 

「いつ無くなるかわからない」という考え方は失礼な気もするが、私の父が作って取引先に納品していた婦人靴は父がこの世を去ったところで廃盤となった。作り方がわからないことが理由だった。

 

なので、きっと作るんだったら今なんだろう。

 

中山製靴は北綾瀬にある登山靴を専門に手がける店で、私の住んでいるところから近場にあるので日本の登山靴を買うならここだろうな。と目星をつけていた店だ。

マウンテンブーツが主力、あとはプレーントゥ、チロリアンシューズがホームページに載っていて、店兼仕事場にある納品前の出来上がった靴が並ぶ棚にはチャッカーブーツがあったり街履き用に少しアレンジされた物があったりとホームページに載っていないデザインは結構あるようだ。

「見ていいですよ」と言ってくれるもののあんまりジロジロ見るのも悪いのと、作りたいものはチロリアンシューズと決まっていたのでそれをお願いした。

 

革は、いくつか出してくれてこちらの要望も伝えたが「これもあるよ」と出してくれたのが昔のイギリスの革。どこのかは忘れたとのこと。

もうあんまり用意は無さそうで「あと一枚、使ってないのがあるからそれを使いますね」と話してくれたので、それが良いと伝えたら「これが一番良い」と一言。

サイズを測ってもらって太め・普通・細めのうちの細めの木型で注文して、何週間かして出来上がった。

 

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サイトを見たときも気になっていたが、やはり履き口が狭く設計してある。

 

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カカトが抜けないようにというコンセプトで作られているのは明らかで、クッと曲がるカカトのラインや長めの芯材、土踏まずがグッと削れていたりカカトの丸みも意識した底面の木型の作りが特徴。靴内で足を正しくセットさせ、それを維持することに注力している。

 

取りに行ったときに出し縫いの作業をしていたので「機械は使わないんですか?」と思い切って聞いたみたが使わないとのことで手縫いのよく締まっている縫い目が力強い。

ステッチダウン製法で作られていて、これは私がこの製法でなおかつ甲の縫いもシンプルに太めの糸で縫うデザインのチロリアンシューズを知らないからわからないのだけれどもそれぞれの縫い目って揃うものなのだろうか。

 

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履いてまず目が行ったのはそこで、私が知っているチロリアンシューズはノルウィージャン製法だったり、甲の縫いはもっとピッチが広くとってあってインパクトの有るデザインだったりするものが多い。なのでこれが普通なのか、すごいことなのかは不明だ。ただ、見た瞬間に「うわっ」となったのは言うまでもない。

 

履き心地は思ったより柔らかい。これは底付けの製法のおかげでサイトに載っている「チロリアンハード」はノルウィージャン製法なのできっと堅いだろう。

「あーほんとに足が動かない。良い良い」と思いながら昨日とりあえず一日だけ履いている。

 

35,000円と小さな店ならではの安さと言ってしまって良いのか、なんなのか。

機械を使わなかったり、家族三人での経営だったりと諸々安い理由は見つかるがそれにしても安すぎないか?と思う。

 

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