Re:11colors

毎週木曜日更新(2023年5月現在)。模型、日常。面白いことあれば他の日も

スケールアヴィエーションと俺と靴

私は元々の仕事のせいもあって「良いレイアウトの誌面」というものを見つけると少し感動してしまう。何をもって「良い」とするのかを説明するのは難しいが、一時期、好きなジャンルの雑誌があまり良くないレイアウトになってしまいそれが非常に残念だった。

私にとって「悪いレイアウト」とは私から見ても工夫の余地があって、「悪くないレイアウト」とは普通に読める、文字や写真などが頭に引っかかる前に「レイアウトがっ!」と引っかからないもの。

そして、良いものは「おーこれは綺麗だ」と思い、スラスラと読み、そして何がそうなっているのか、自分の制作物に活かせないか?と考えたくなるものだ。

 

Scale Aviation 2018年 09 月号 [雑誌]

Scale Aviation 2018年 09 月号 [雑誌]

 

 

表題のScale Aviationはそれに当たる。ページをパラパラと捲っていると「おっ?」「おっ!」と手が止まる。これは山と渓谷を読んでいるときと非常に近い状態だった。雑誌の対象物と編集、どちらにも精通した誰かがいるのか、すくなくとも作っている側が対象に詳しかったり好きなのだろう。

 

そんなレイアウトにガツンとやられて、そのまま飛行機のプラモデルが欲しくなる。という流れは体験として非常に幸せだ。誌面に魅力的に配置された写真に目を留めて、文章を読ませ、ネットで何が必要なのかと情報集め……と私の世界は広がっていく。こんな体験は最近していない。

 

もともと色々なことに興味を持っては面倒くさいからとやらなかったりする人間で(そのせいで山と渓谷に関心を持っても山へは登らない)、プラモデルはそういう意味だと「ガンプラはよく作ったけど、接着剤とか難しそう」というタイプ。とはいうもののからぱたさんの超音速備忘録は定期的にチェックしていたりして興味はあった。

 

wivern.exblog.jp

 

 

なので、スケールアヴィエーションにはガッツリ背中を押されてしまった感じ。からぱたさんもブログで「作りたいように作って楽しめば良いんです」みたいな話をしてたし、色とか塗らなくてもいっかーと軽い気持ちで買って、作る。

 

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クリップとか爪楊枝とか、使うんですね。接着剤も初めて買った。

 

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栄えある一機目はタミヤウォーバードシリーズのコルセアでしたがクリアパーツを白濁させるという痛恨のミスと何年も前のトップコートを使いつや消し仕上げを失敗するというなんだかもうグダグダな仕上がり。

 

悔しくて写真のスピットファイアをすぐに買って作りました。

手はすぐに感覚を思い出すものですね。もう8年位プラモデルを作っていませんでしたが、二作目のが作るスピードとか説明書の読解力が上がっていて驚く。

 

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手に持ってみるとこんなに小さい。こんなに小さいものを自分は作ったのか、と驚く。「説明書通りに切って貼ればできあがります」とAmazonレビューに書かれていたけど本当にその通り。

 

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色は、どうすっかなー。次は色の塗りやすい飛行機を。とか、色数絞って仕上げても良いのかなとか。なんの顔も描かれていない真っ黒や真っ白の赤べことかって、オリジナルと違う研ぎ澄まされたなにかがあるじゃないですか。そうやってどんどん数を重ねて色を増やすとか?どうでしょうね。次にいきなり行く?わからない。

 

それと私は靴好きなのでこういう飛行機を作っていると飛行機に由来した靴を急に履きたくなる。車を運転するときに車両感覚とか身体地図とかって車と身体の感覚が繋がる現象があるようだけど、これを作っているあいだに飛行機と私が繋がり、パイロットの気分が自分の体に逆流してきたようだ。

 

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ダブルモンクストラップはあの〇〇がどーのこーの、というエピソードに光が当たることがほとんどだけどその一文の最後に記されている「飛行機乗りの靴をヒントにした」というフレーバーこそがこの靴を楽しませてくれる要素だと私は思う。

「何にでも合う」と汎用性の広さを語られる靴ではあるが、抑えるべき点は実は極めて明確だ。イタリア製、マッケイ製法、つま先はプレーンなものとゴツさよりもデザインをそのままエレガントさにつなげたものなので、ガチガチにまとめずとも、雰囲気だけ味わうのも良い靴。

 

 

 

これでいて、さらに知人がよく進めてくれていたブランドのフライトスーツも欲しくなるのだから頭が痛い話だ。

 

 

特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」のポスター(と少しだけとめはねっ!)について

少し前、大ファンである河合克敏先生の本「河合克敏本」が出たので嬉しくて買ってしまい、「そういえばとめはねっ!って読んでないな。というかこの本を見てたら読みたくなってきたわ」と思い、電子書籍版を全巻ダウンロード。

 

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 ※今は紙の本は入手しにくいのでKindleで買いましょう


書の世界を14巻通して、主人公たちの成長に合わせて知ることができた(そして変わらない、河合克敏先生の「楽しさ」を追求し続け、そこから生まれる成果は人の心を動かす。という姿勢に泣く)。そうして私は顔真卿を知ることになった。

顔真卿ってこれなんて読むんだろうか?」と漢字の並びに疑問を持っていたのはまだとめはねっ!を読む前の仕事の帰り道。東京メトロ上野駅にポスターが貼り出してあるのを帰り道に目にするので、字面はなんとなく頭に入っていたが、作中に出てきて、彼がどういった人物で何を成したのかを知った。

 

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そこで、ポスターの話である。
このポスター、英語で

「UNRIVALED CALLIGRAPHY:
YAN ZHENQJNG AND HIS LEGACY」

と書いてある。
私がハッとしたのは文章の内容ではなく、この書体。

 

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これはTrajan(トレイジャン)という名前で約2,000年前にローマに建てられた「トラヤヌス帝の碑文」をベースにしたもので、かなり有名なもの。

 

私が最初に書体、タイポグラフィについて専門学校で教わり、初めてセリフ体とサンセリフ体などの分類の中で更に細かく分けられていることを知ったときに出てきた書体なので非常によく覚えている。

 

わかりやすい判別方法はQのやたら長い棒だろう。やたら長いせいで文字詰めの関係で隣の文字の下まで侵入してしまい、漢字の部首のしんにょうみたいになっている(そこが面白いのだが)。

 

この碑文をベースにした歴史の香り漂う書体を、顔真卿展の英語表記に使っているのが良い、。拓本や碑文が当たり前のように根付いていた中国の文化背景(行ったこと無いし、とめはねっ!の話だけしか知らないが)にばっちり合っていて、これ以上にない取り合わせだと思う。

 

ただ、これが「果たしてすごいのかどうか」というと案外そうでもない気もする。なにせ顔真卿やここで副題に挙げられている王羲之などを調べるか、あるいは私のようにとめはねっ!を読んで書道の世界をグルーっと覗いてみるかすると、まず中国側の事情はよく分かる。加えてTrajanについても私が専門学校で最初に習ったくらいだから、知識としては常識だろう、と考えると必然の組み合わせを起用したまでに過ぎないということになる。
なので、すごいのか?と言われると「どうだろう?」と思う。「良い」とは思うが。

 

しかし、反対にこうでなかった場合を考えると怖い。
調べればわかること、まず教わるであろうこと、この基本的な2つを見落としていたらと思うとゾッとする。だって、私ですらわかるほどの取り合わせなのだから、ここで私がデザインしてこのチョイスが出来なかったら……怖い話だ。

あと、これはTrajanじゃないです、と言われたときのために「Tarjan風のフォント」ということにしておきたいそれと、Trajan Proとも言います。

そして祭姪文稿、直に見てみたい。

 

ganshinkei.jp

 

 

会期が短いのでスタートしたらすぐに言ってしまうのが吉と思われる。

チケットもかっこいいといいな。

 

 

 

とめはねっ! 9―鈴里高校書道部 (ヤングサンデーコミックス)

とめはねっ! 9―鈴里高校書道部 (ヤングサンデーコミックス)

 

 

前衛書に燃える島奏恵が真面目で熱くて良いです。

自分に似たものを感じる(何故か後半メガネのフレームが変わる)。

 

 

 

大槻藍子も良いですね。この人も真面目というか、本気というか。

 

  

 河合克敏ファンなら買わないと損します。めちゃくちゃ面白いです。

 

それと、とめはねっ!に関しては文庫本を是非出していただきたい……。

お願いします。

夏の帽子

今年は暑い日が多く、真夏日なので涼しいという皮肉な事態が起きるほどだ。

外出すれば汗をかき、かと思えば電車内や施設内は冷房がガンガンきいている。

「本当の夏バテを味わったことがないのか?」と驚くほどに内外の温度差がひどく、苦労した。とはいうものの今年は外が暑いので温度差を縮めるためには室温を上げるしかなく、それはそれで良い手とは思えない。

 

私は学生時代に冷房を強く効かせたがる勢にやられ露骨に体調を崩したことがある。夏バテとはこういうものかと驚いたものだ。気持ち悪い日が続き、汗もあまりかかなくなりとにかくしんどかった。それから夏は半袖で安易に暮らせない季節となった。上着を常に持つようにして、対策を打っている。

 

そんな夏との過ごし方に今年は帽子が加わった。昔は結構かぶっていたが、日差し対策というよりはオシャレのためにかぶっていた。なのでそれが面倒になった際にほとんどのものは手放したので、新たに買い足したということになる。

 

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このアイリッシュリネンの薄いピンクの帽子はセールで手に入れたもので、青もあったようだが売り切れていたのでピンクにした。最初はどうだろう?と思ったが夏に被るには色合わせの面でも比較的いろいろな色を使うし、まぁ楽しくまとめられるだろうということで購入した。というか暑いので良い帽子が欲しかったというのが先にたった。

 

ここでいう良い帽子というのがなかなか難しい。いろいろと候補を立てる前に気持ちが急いてしまってこの帽子を買ったがその後に候補が浮かんで一通り試したがツバが作る日陰の大きさはこの帽子が一番だった。

日光に対して顔がすっぽり隠れるので被っているのと被っていないのでは暗さが違う。CMYK印刷用にとキャリブレーションをしたPC画面がストンとワントーン暗くなる感じだ。

 

他の帽子もある程度影はできるものの、この帽子まではいかない。

こうなってくると似合う似合わないとは別のところでこの帽子の長所が出てくる。また、興味が湧いてこれ以上のものはないのかともっとアウトドアに振った帽子を試そうとするがそれはそれで服装との調和が取れない。機能性素材の風合いも悪くはなく好きだが、ツバがデカくなればなるほど機能面が悪い方向に作用し服装に合わなくなってくる。

最終的にこの帽子が、見た目にも日陰をつくる力においても一番ということになったので「ピンクだろうがなんだろうが合わせられるだろう」と読んだのは正解だった。

 

特に白眉なのは日陰をつくる力もそうだが、このアイリッシュリネンという素材が生む軽やかな風合いだろう。こればっかりはちょっと良い帽子屋さんで探すか何かしないと見つからないようで、適当に「暑いから買おう」なんて思って探す程度では似たような素材感の帽子を見つけることは出来なかった。

 

またいつか、私がこの暑さを軽視して帽子を手放そうとする日が来るとは思うがこの帽子の良さはそれをさせないのだろうと思う。

 

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それにしても、こういった帽子にたまに付いているこのポケットってなんのためにあるのだろうか。