Re:11colors

毎週木曜日更新(2023年5月現在)。模型、日常。面白いことあれば他の日も

曖昧を曖昧で包み、形にするイタレリ ルノー5

なんともいえない魅力ってものがあって、それを前に僕は無力になります。

どうみたって危ない予感しかしないものでも、それでも。という。

 

このイタレリのルノー5アルピーヌはそういうキットでした。

水色のボディはもちろん15センチ程度の大きさ、全体のカクカクしたフォルム。

「かわいい」とされる車になんとなく丸いイメージを持っていたのでそのせいもあるのでしょう。それらと比べて「おお、カクカクしてて、いい形してるじゃん」と思わせたのです。

 

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パーツの色分けも、水色・黒、白と楽しい組み合わせ。なんかいいなーこういうの。色塗らなくても全然行けるじゃん。このエンジンの感じとかさ、白は銀に塗ってくれってことだと思うんだけどでもこの色のツギハギ感が良いよなって。

道路工事でツギハギになったアスファルトとか、石のブロックとかそういう「ツギハギの様子がおもしれー」って思うあの感じ。統一しろって話なんですけど、統一したとしてもそれを剥がして地面を見てみると工事をしたツギハギのあとがあると思うとドキドキしますし、むしろそれが表面に見えている方が抜き身の刀的な危うさがあっていいと思う。

 

おもしれーおもしれーと切って貼ってを慎重にやるんですが、ちゃんと合わせないと合わないし、合わないところは合わないので、諦めて先に進めると合わないそれを収める部分は合わない前提で余裕を持って作ってて、なんだそりゃってニヤッとしながら先に進める。向こうのプラモデルはそういうことらしいと認識する。

 

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軍モノを買って私服に取り入れようとするときにサイズというより、そもそもシルエットをキレイに見せようだとかそういうことで作っているわけではないのでビミョーに勘所がズレてたりして、でも、良いなと思うと買ってしまうみたいな。モディファイされたM65よりも放出品のをざっくり着るほうがかっこよかったりして、なんかそういう感じ。着るとかっこいい日とそうでない日がある。なんの話ですかねこれ。

 

で、このイタレリルノーはなんかそういう、いろいろなアレがある。よくわからんが、良くて、気になる。

前輪の幅と後輪の幅が違うんですけど、それがパーツの精度に由来するのか、実車がそうなのかは何も書いていない。ただ、実車を調べるとそれらしいものも見つかるのでなんかそうなんだろうなって分かるくらい。

 

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一言書いてくれればいいのにというよりは「興味あるなら知ってるっしょ」という姿勢が気高くも美しいと感じる。それくらいが良いと思う。

 

「そんなこともあるのかー!」なんて驚いたり、キットの部分部分の曖昧さをさらに受け止める曖昧さがあるという土壌で形になっていく姿を二人目の自分が認識し続けていると、頭が柔らかくなります。

 

「スケジュールなんて書き込まなくてもいいし、ToDoリストなんていらねぇ。いずれ、何もかもが終わるんだ」

 

という気持ちになる。

曖昧なものが曖昧なまま進み、なんとなく形になって、思ったとおりに窓のクリアパーツはピッタリはまらない。すごい。

 

だって、そういうことに疑問を持つのは俺の思い込みが原因だもの。「こうであるべき」ってさ。とキットへの愛が歪んだ形で現れるのは、全部、ボディの水色だとか、シャーシの黒だとか、ホイールやエンジンパーツの白だとか、そういうなんとも言えない魅力のせいだと思いますし

 

「一つ一つを着実にやっていけば大丈夫!」

 

みたいな一工程一工程に正解を求めるが故に時間がかかって仕方がない上に場合によってはろくでもないものが出来てしまうケースに対する

 

「曖昧なままボヤボヤボヤーッと形になる正解もあるんだよー」

 

という気持ちの良い答えのような気もしています。

 

 

頭にガツンと一撃

頭にガツンと一撃

 

 

 

キット自体の作り込みがかなりライトで、本当に曖昧なので日によって「なんだこれ」と思ったり「あーやっぱりこの水色かわいいなー。小ささやクルマそのもののデザインも素敵だよなー」と思ったりと心が揺れるキットです。

 

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硬い硬い樹脂をパチパチ切ったものが何故かビニール袋に水をいれたもののようにポワポワと柔らかく揺れるような存在感になる。良いことです。

 

 

イタレリ 1/24 ルノー 5(サンク) アルピーヌ プラスチックモデルキット IT3651

イタレリ 1/24 ルノー 5(サンク) アルピーヌ プラスチックモデルキット IT3651

 

 

俺の思う最強の靴修理屋を超えた店へ行ってきた

最強の靴修理屋ってなんですかね。

これは難しい問題です。なぜならみんなそんなに考えていないからです。

ただ、大きな問題として、靴修理は業務の特性上、汚れてしまうという欠点があります。そしてですね、

 

「結構力いるんだな!」

 

とか

 

「その割に仕上がりはめっちゃ繊細にキレイ」

 

という、これは私が最近「デザインってこうじゃないと、まず出来ない」

と思うような

 

・仕上がりを描く力

・それを形にする道具

・道具を使う技術

 

という要素に非常に親しいものを感じます。

そんないろいろなものが複雑に絡み合った様子をガツンと見せてしまう。

 

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壁一面ガラス窓。

中にはフィニッシャーと、プレス機。

靴の修理ってこういうの使うんですよ。「ヴィィィィィィン」て音立てながら削る。この作業がすっごい大変。靴を固定するフォーム、なめらかに靴底を削って粗くしてゴムとかつけやすくしたり、仕上げに使ったりとまぁ出番が多い。

 

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このプレス機も、オレンジなのが却ってガラス越しに目立ちますね。

そして写真を取り忘れましたが、くっそ分厚い天板にくっそ重い鉄の脚のテーブルとかね。そういうものたちが、いちいちカッコいいんだから、見せてくれてありがとうございますと言いたくなるというもの。

 

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などを見せつつの、僕らお客さんが実際に立ち入るスペースはどーんと広くて開放感。そして何より清潔で、静かな店内が「気まずくない」。これはもう、店主のセンスとしか言いようがない。

 

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良いですね。John Lobbのポスター。

 

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ウェグナーのバレットチェア。レプリカではなく本物です。
服好きなら背もたれの形状にドキドキしますが、座面にもびっくりな仕掛け。

これはもうお店に行って体感するしかない(靴修理屋さんです)。

 

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このやばいくらいに俺らが描いた未来を形にした照明はイタリア製。有名デザイナーが多数在籍したそうですが、誰がデザインしたのかを公表しないという姿勢だったそう。なんでもかんでもあけすけに話すと、他人の褌で相撲を取りすぎる気がするので、ブランドはぜひお店に行って店主に聞いてください。

 

 

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木製なのに、会社にあるクッションの聞いた椅子に勝ってしまう椅子です。

 

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ルブタン、マノロなどなどの靴の写真集 。

奥にあるのはBerlutiのやべぇアートブックです。欲しい。

 

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この辺は知っている人は知っているバイリクエスト的なアレ。

 

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そんなもんがあれば、イヤーモデルもぼこぼこ出てくる出てくる。

はい。そうです。この辺で気づかれた方もいるかと思いますが、インテリアは別として本だとかポスターだとか靴だとかは全部本人の私物で、今まで持ってたやつをドンとお店に持ってきてるんですよね。

 

この最強感ってなんて言えば良いんですかね。

バカバカしくて、ある種残酷な話なんですけど、こういうものを私物でドンと持っててそれで靴修理もバリバリやって……って人が作った店なんですよ。

 

これがすごいんですよね。

 

なんていうんですかね。

 

「かっこよすぎて負ける」っていうか「あーやっぱり底抜けにカッコいいものは、理論上、正しいものよりもカッコいいし、それでいてこっちのが正しいよなー」と思わせる良さです。

 

これは今の時代は、デザインなんかもストーリー重視でバリバリ進んでいっててものづくりとかブランディングもそういう流れになってしまっている状態の中で「ただただカッコいいもの」を見るとか、知るということがどれだけ大事なのかということを感じさせます。これ本当に大事ですよ。ええ。

 

なんでこんなにあーだこーだうるさいって、だって、このお店そのものが靴じゃないですか。

しかもめっっっちゃドレス寄り。John Lobbのものが多く置いてあるのも納得ですよ。

 

お客さんが入るスペースは思いっきりかっこ良くて、これは物作りの裏側を知らないで「わー靴ってかっこいいなー!」って思うのと同じ。

 

それでいてすっげー大変な作業を、キレイな壁一面のガラスで見せているせいで機械とかミシンとか机とか椅子だとかそういうのは全部格好良く見えるし、事実本当にかっこよいものもある。

 

これはもうね、John Lobb特有の、技能の高さを意匠に込めるってのと同じ。

 

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職人の仕事ぶりを見せる。これはイタリア靴にもありますが、ロブの方がもっと貴族的な感じで繊細で難しくてキレイで誇張がありません。サラッと見せる。この様子はもう完全に、このお店のガラス越しに見える作業風景そのものです。

 

とにかく底抜けにかっこよくて誰もが「うあぁぁぁぁぁぁぁあぁ」となるので修理したい靴がある方は靴好きでなくても(というか、家具とかそっちに詳しいほうが絶対楽しいので)ぜひ行きましょう。

 

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メタボリズム建築感のある(あまり知らないです)、三田ハウスの一階にお店はあります。

 

forma shoe salon(フォルマ シュー サロン)

〒108-0073 東京都港区三田5丁目2−18

 

www.formashoesalon.com

 

www.instagram.com

 

インスタも、フォローしましょう。バリバリかっこいんだから。

 

 

 

塗らない車の国連感

昔、平林奈緒美ってデザイナーが「国連のものが好きだ」と話していたのを急に思い出した。

 

調べてみるとやっぱりそうで、そこには記憶のとおりに白い車が載っていた。

 

sanaegogo.exblog.jp

 

これ見てたら、なんか白いボディのカーモデルって色を塗らなくても良いんじゃないの?と思ったりしだして、まぁ、それは実車に近づけるって意味だと確実にNOなんだけど、ただそういうのも有りかなって思う。

 

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見せ方とか解釈の話になってきて、結局「塗らないんじゃなくて、塗れないんでしょ」っていうゴールになるんだけど、ただ、こういう真っ白なパジェロは、街を走るわけでもなく、ミニカーとしてあるわけでもなく、プラモデルでしか作れないんだよなとも思ったり。

 

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成型色が白、というか全体的に「塗らなくてもOK」という選択肢で作られたものではないので、全体の色がチグハグなのも面白いですよね。

すっきりとした樹脂の白さとクリアパーツの透明感、温度のないグレーが組み合わさるのも結構キレイです。

 

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現実の車の様子を纏わせるためにクリアパーツだけマッキーで塗りました。