テレビの画面をピンク色のポルシェが走る。
当時の俺はポルシェ934イェーガーマイスターを組んだ後で、いよいよ俺もレース関連の番組を見るか。なんて思った瞬間の衝撃だった。
レーシングカーのデザインは車のシェイプとスポンサーカラーが交わる交差点に生まれる何かであることは間違いないと思うが、それにしても、いやだからこそ異彩を放つ謎のピンク色のポルシェ。他の何とも違う何か。なんだろう。なんだろう。
調べるとすぐにそれは豚に見立てたペイントであることがわかった。豚。豚か。豚ね。
点線で区切られた領域には部位を示す単語が配置してあるそうだ。
なるほど、豚をこう表すのか!
この車を豚になぞらえてしまう見立て。
見立ての文化はおそらくまだ模型ではそこまでないのではないか。実車ではあるのに。なんでだろうか。模型は、俺にはまだわからないことがたくさんあるが、箱を開けて、組み立て、完成させるまでに明確な何かがある。それをどう処理するか、表現するか……なんてことに考えを巡らすと急に模型という言葉の意味がぼやぼやぼやーっと曖昧になってくる。
「実車を再現したものを作れますよ」という模(かたど)る型と書かれた存在が「実車を再現していない何か」に変貌する。そういったオリジナルのものは、模型なのだろうか。じゃあ、実車に限りなく近づけると模型は模型として確かなものになるのだろうか。
俺たちは、ポルシェを豚色に塗ってしまった当時のデザインチームの気持ちをその気になればいつだって追体験できる。「〇〇に見えるからこうしました」○の中は彼らにとっては豚だった。俺は筆跡がデニムの綾織に見えるとかそういう話をしたこともある。何なら次に作ろうと思っているカーモデルがカセットウォークマンに見えて仕方がない。
きっと、そういう塗り方をしたときに成果物は実車を再現していない何かになるだろう。ただ、そこで考えて色を塗ったという体験はこの豚色のポルシェを生み出した人たちの気持ちを模った何かだと思う。それにしても点線でメリハリを生み出しながら部位を記し全体をデザイン的に形にしてしまう力は何度見てもすごい。
俺たちがDJ的にプラモを扱うのであれば、レコードをターンテーブルに乗せて、その匂いがする、違う曲にしたってそれは良いことだと思うのだけれど。
タミヤ 1/24 スポーツカーシリーズ No.328 ポルシェ ターボ RSR 934 イェーガーマイスター プラモデル 24328
- 出版社/メーカー: タミヤ(TAMIYA)
- 発売日: 2013/03/30
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