Re:11colors

毎週木曜日更新(2023年5月現在)。模型、日常。面白いことあれば他の日も

豚色のポルシェの奥深さ

テレビの画面をピンク色のポルシェが走る。

当時の俺はポルシェ934イェーガーマイスターを組んだ後で、いよいよ俺もレース関連の番組を見るか。なんて思った瞬間の衝撃だった。

 

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レーシングカーのデザインは車のシェイプとスポンサーカラーが交わる交差点に生まれる何かであることは間違いないと思うが、それにしても、いやだからこそ異彩を放つ謎のピンク色のポルシェ。他の何とも違う何か。なんだろう。なんだろう。

 

調べるとすぐにそれは豚に見立てたペイントであることがわかった。豚。豚か。豚ね。

点線で区切られた領域には部位を示す単語が配置してあるそうだ。

なるほど、豚をこう表すのか!

 

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この車を豚になぞらえてしまう見立て。

見立ての文化はおそらくまだ模型ではそこまでないのではないか。実車ではあるのに。なんでだろうか。模型は、俺にはまだわからないことがたくさんあるが、箱を開けて、組み立て、完成させるまでに明確な何かがある。それをどう処理するか、表現するか……なんてことに考えを巡らすと急に模型という言葉の意味がぼやぼやぼやーっと曖昧になってくる。

実車を再現したものを作れますよ」という模(かたど)る型と書かれた存在が「実車を再現していない何か」に変貌する。そういったオリジナルのものは、模型なのだろうか。じゃあ、実車に限りなく近づけると模型は模型として確かなものになるのだろうか。

 

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俺たちは、ポルシェを豚色に塗ってしまった当時のデザインチームの気持ちをその気になればいつだって追体験できる。「〇〇に見えるからこうしました」○の中は彼らにとっては豚だった。俺は筆跡がデニムの綾織に見えるとかそういう話をしたこともある。何なら次に作ろうと思っているカーモデルがカセットウォークマンに見えて仕方がない。

 

きっと、そういう塗り方をしたときに成果物は実車を再現していない何かになるだろう。ただ、そこで考えて色を塗ったという体験はこの豚色のポルシェを生み出した人たちの気持ちを模った何かだと思う。それにしても点線でメリハリを生み出しながら部位を記し全体をデザイン的に形にしてしまう力は何度見てもすごい。

 

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俺たちがDJ的にプラモを扱うのであれば、レコードをターンテーブルに乗せて、その匂いがする、違う曲にしたってそれは良いことだと思うのだけれど。

 

http://www.troxlerart.ch/

 

プラモ多めなほしいものリスト

 

www.minicar-ikeda.jp

 

 

 

 

 

色について

ああ、今日はプラモデルの色について話そう。

色。そう色だ。色というのは非常に扱いが難しいが、楽しい分野だ。

特に今は、黒を白にするようなことが簡単になったし、今後ももっとそういうことは進んでいく。きっとムラなく、すぐに色を塗る事自体もいつか可能になる。

そうなると色を塗ることはもっと簡単で楽しいことになる。

ただ、色を取り扱うことの難しさはそんなに変わらなだろう。ここが難しい。

 

例えば今、俺達がポケモンGOにでもハマっているとレッドはほのおのレッドになってしまうし、帰りに寄ったスーパーでトマトが特価だったらきっとその瞬間のレッドはトマトのレッドだ。もちろんりんごでも構わない。

 

ただ、それぞれのレッドは纏うフレーバーが異なる。ほのおのレッドは動きがある可能性が非常に高い有機的なシェイプで、まさにメラメラと燃える様子。一方トマトはどうだろう。丸く、コロンとしていてギュッと詰まった感じがする。

 

同じレッドでもこんなにも違うというのは当たり前の話なのだが、これは色を取り扱うときに注意深く観察する必要がある。

 

「俺はその色に塗ることで、何を、表現するのか」

 

ここに塗装の楽しみや、あるいはそれをしないことの楽しみがある。

 

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俺が、エレールのトラクターをネイビーに塗ったのは、シタデルカラーが丁度使い切れそうだったという備品的な観点が一つ。加えて、ロードスターと色を合わせたら良いんじゃないかというのも一つ。あと一つは最後に話すのでここでは待ってほしい。

 

上記の3つの理由でネイビーにしたのだけど、その前に何色にしようかは結構悩んだ。

 

例えば

・赤 ✗部屋に赤い塊は主張が強すぎる気がするのと農機感が強く出すぎてしまう。

・緑 ✗ミリタリー感が出てしまう。トラクターのシェイプや構造がきっとそうさせてしまうのだろう

・オレンジ △これは一瞬、部屋に飾ってあるポルシェのイェーガーマイスターと同じ色にもなるので整合性があるように思えたが、このトラクターをオレンジにするとたちまち工事現場のフレーバーが漂ってしまうので断念

・黄色 ✗オレンジと同様で建機の香りがしてしまう

・ピンクや紫など色相環のそっちのほう ✗✗トラクターの雰囲気と合わなすぎる。特に今回はフランスのエレールというメーカーなので個人的に特にそう思う

・その他の色 あんまりイメージ沸かず

 

という悩みがあった。特に赤緑オレンジは元気の良い色なのにトラクターが持つフレーバーに合いすぎてしまうのが困った(今回ははっきりした色で塗装するのが楽しみだったので甘い中間色というよりはパリッとした色を使いたかった。なので選択肢は自ずと絞られていた)。ざっくり言えば赤は農機の赤。緑は兵器の緑。オレンジは建機のオレンジ。緑は検討の余地はあるが、葉っぱ感が出てしまうのがどうか。タイヤのオレンジに対して緑だとかぼちゃになってしまうし。黄色だとたんぽぽだし……とまぁスコンと抜けないのが現実だった。ミントグリーンとかそういうのが良いですかね。爽やか過ぎる?

 

この検討自体は、改めて文章に起こしてみると形の持つ属性と、ある程度意味のある色を自分で考えて塗るためには必要な過程だとよく分かる。

 

色は色そのものが持つイメージと、それを塗るものが持つフレーバーとの組み合わせが興味深い結果をもたらすのが面白い。

 

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特に、今回のように好きな色に塗る!という場合はそうだ。

「好きな色」と言いながらもキットにある程度引っ張られてしまうし、そこに特に策もなくトンチンカンな色を置いてしまうとこれはかなり難しい。

 

仮に俺の部屋がピンクで包まれていたなら、もちろんピンクは、ありだ。ピンクで塗る意味があるから。

 

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あと、先程あげた理由の残りの一つについて。

それは得意な色で塗るということだ。これは、私の場合はネイビーがそうなのだけどデニムが好きな分、色に対する解像度が高い。なのでムラなどの解釈は非常に広くなる。

 

もっとわかりやすくいうと色に対して贔屓目になってしまうのだ。

デニムが好きでネイビーに塗られたトラクターはコットンやインディゴの生産地で使われているものかもしれないとか、他人から見れば適当なことそれらしく話すことができる。私の場合は部屋にデニム素材のぬいぐるみがあるので変な説得力もある。

 

その色を用いると仕上がりもそうだが、出来上がった姿を愛することはとても容易く行えるので、部屋にあることにとても満足できると思う。

 

 

エレール 1/24 ファーガソントラクター プラモデル

エレール 1/24 ファーガソントラクター プラモデル

 

 

むき出しの形と誠実さ

世の中には様々な模型がありますが、それでも未だに形になっていないもののほうが多く、それは今後も変わらないような気がしています。

その中でもトラクターは形になっていないもの寄りの形になっているもの。要するに「キットはあるが数は少ない」という状態です。

もちろん、トラクターにも歴史があって様々なデザインのものがあって……となるわけですがその中でもドンピシャにこれだ!と思うものは先日のキーホルダーのコレ。

 

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re-11colors.hatenablog.com

 

時代的にいつなんでしょうね。わからないですが、最近のものとの大きな違いは居住性といえば良いのでしょうか。屋根があってドアがあって室内で運転をするかどうか。あとは「より車に寄っていく」というか。ミラーとかそういうものがついて……とかがきっと発展の歴史としては存在するのでしょう。

 

数少ないトラクターというジャンルの中でも「説明書は少し間違っているが誠実で良い」とおすすめされたのがエレールのファーガソン。奥さんいわく「プチグリ」と書いてあるので「カタツムリとかそういう意味」ということらしいです。このプチグリが誠実かどうかは、作っていくとよく分かります。

 

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先程最近のものは居住性が云々と書きましたが、戦車とか車とか、何にしたって車輪が四個以上ついているものは大抵、箱の中に人が入るスペースと機械が入るスペースがある。あるいは板が車輪の上に乗っているというか。ここでいうトラクターはそうではなかった。むき出しの甲冑のようなものがエンジンを申し訳程度にカバーしていたり、それ以外のペダルだとかレバーだとかはバッチリむき出し。弾も飛んでこないし、空気の流れとかも考えなくて良いからそうなるんですかね。エンジンとかバリバリ見えている方が熱も程よく放出されるとか。

 

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そういうむき出しのパーツたちは「見えないから」という布を被ることができないので、とにかく細かく、メカニカルな雰囲気を怪しいバランス感で積み重ねていきます。なんのレバーかはわからないけど「ある」とかそういうものが極小のパーツで再現されています。これが細かくて細かくて色なんか塗るんじゃなかったと思いながら作るんだけど、作っていて

 

「あー、よくやるなぁ。ここまで」

 

なんて思ったりするんですよね。なんていうか、嘘がない感じというか。

彼らは彼らの作法でこのプチグリを模型として完成させたのだけどその細かな分割って、設計した人間のアイデアと金型の技術的な何かと、あとは資金力だとかそういうものが積み重なってるんだろうなと思うんですよね。「一体成型でズドン」とやらずにとにかく積み重ねていく感じ。パーツは細かいけど「よくやるわ」って思わせるところとか。これは完全に、靴でいうとJ.M.WESTONですね。

 

J.M.WESTONって調べると「痛い」とか「万力締め」とか、革靴を履く上で障害となるものが何故か、通過儀礼として捉えられていてそれが面白い靴なんですけど(僕は180のローファーは足との相性がめちゃくちゃ悪かったから最初は頭痛がした)、それでもずーっと変わらないし、できることを積み重ねているんですけど、そういう感じがする。

 

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エレールのこのプチグリことTE-20は細かなパーツで積み重ねはずっとするんだけど予想通りにカバーはキレイにハマらないし、タイヤなんかもデカイし重いしで普通にくっつけるだけだと重さに負けて歪んだりするしっていうもう何が何だかなことが続くんですけど、それでもこっちが木の板を使って水平垂直をとったりするとしっかりと出来上がるんですよね。

 

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それって、向こうが誠実で、こっちもそれに答えてやろうっていう一つの会話みたいで面白いんですよね。なんかこう、形にさせたくなるというか。痛くても馴染むまで履くみたいな。

 

「エレールってフランスのプラモデルを作る」

 

って数人に話をしたら

 

「うわー合わなそう。適当そう」

 

って言われたんだけど、J.M.WESTONとか、あとはなんですかねエッフェル塔とか出しておきますか。そういう物作りの観点から見ると案外そうでもないなと思っていたら、キットは誠実だけど説明書はまじで間違ってるところがあったりしてそこはそこで適当だなという感じで面白かったりもします。

 

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色は本来はグレーですけど、タミヤロードスターNDと揃えてみました。色に関してはまた書こうと思います。

 

俺のほしいものリストのプラモ。送られてきたら組み上げてブログ書きます。 

 

エレール 1/24 ファーガソントラクター プラモデル

エレール 1/24 ファーガソントラクター プラモデル