「履きやすい」といわれる靴や「包み込まれるような」などと評されるそれは数多く有るがその2つの言葉が最も相応しい靴は恐らくここの靴だろう。
Russell Moccasin “Hiker Boot”
True Moccasin Construction」(=真のモカシン構造)と呼ばれる作りなのだが、間違いなくこれが利いている。
他の手持ちの靴で同様の製法で作られたものが無いから余計に「包み込まれるような」「履きやすい」というどの高級靴にも当てはまるそれをより体現している存在だというのがよくわかる。また、それらの言葉はより深く考えていると様子は様々だ。
足首を掴むようなフィッティングであったり
踵がグッと食いついてくるようであったり
甲の始まりから足首の付け根までをぐっと抑え、かつその結果土踏まず辺りもぐっと抑えるもの
など、いろいろ履いてみると見えてくる。
この靴に関して言うなら私は「器に入った水」を思い浮かべる。器の形に合わせ自らの形を変容させる柔軟性がそこには有るからだ。歩くたびに革は形を変え足をもちもちと包み込む。その履き心地が癖になる。所有者の中でどんなにこの靴よりも佇まいの良い靴を手に入れても「一目置く存在」のままだ。それがこの靴の魅力だ。
Russell Moccasinといえばマッケイ製法(orマッケイセメント製法)のものが多いがこの靴はブラックラピト製法と同じような中底・合板・本底の構成で中底と合板を縫う製法になっているのでオールソールも行いやすく
履き口に脱ぎ履きをサポートするリングがついている。
ブーツと言えば堅く(むしろその堅さが生む反発力をエネルギーに変える向きもある)、最初はなかなか良い関係を作れない物が多い中、圧倒的な柔らかさが持ち主の足を掴んで離さないこの靴は非常に興味深い存在である。
是非、手に入れる機会があるのであれば(オークションでも安く手に入る)、是非履いてみて欲しい。きっとあなたの良き相棒となり、数ある靴の中でも一目置く存在になることであろう。