Re:11colors

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私の負けた瞬間を思う

服装で誰かに「負けたな」と思う瞬間はなかなか無いが、最近そう思う瞬間があった。
その瞬間は私はスーツを正しく着こなすことでは私の知りうる限り右に出るものはいないというような友人と遊んだ日に訪れた。

 

会うたびに「あー、やっぱりスーツって良いな」と思い、その反面「靴だけはこちらも負けてはおるまい!」と子供の様に負けを認めずに「いずれはスーツを手に入れなんとかして同じ土俵に立とうぞ」と決意を新たにする日々が2・3年続いた。

その日の私はなんとかスーツスタイルという枠のふちにぶら下がれるような格好。ようやくそういったものを揃えられるようになったのだ。ネクタイもチーフも身につけている。靴はとびきりの一足だ。絶対に「かっこいい」と言わせてみせると思い臨んだ。
2人で喫茶店に入る。いつもは少し肩身が狭い面持ちだったが今日は違う。席に座りいつものように服や靴の話をして互いにニヤニヤしながらふと

 

「靴、見せて下さいよ」

 

と言われ足を伸ばした。その瞬間に敗北は訪れた。
落ち着いた配色とはいえ水玉模様の靴下は完全にパンツと靴との調和を乱していた。
いや、乱していたわけではない。向こうが完璧すぎたのだ。そして私は乾坤一擲と勝負手を放った後に反射的に返しの一手を打たれて頭を抱える将棋指しのように丸くなった。

友人はその日「買い物は制限を決めれば楽。靴は黒と決めれば後はそれを極めれば良い」と言っていたが私は「靴下はとりあえず靴と同じ色を用意しておこう。」と「パンツと同色」というセオリーよりも服装で靴を語りたいと思った心に誓った。

 

ここまで靴を語ろうという姿勢を表明しているので無論、友人には「靴、かっこいいですね」と褒められたのは言うまでもない。