昔、週刊ベースボールのコラムで「甲子園の優勝投手はそのときフォームと身体のバランスが最高潮に達している投手で、それ以降は大きくなる身体とフォームのバランスが崩れていく」というような形で何故甲子園優勝投手が大成しないのかを述べたものを目にしたことがある。
それ以来私は「今、この瞬間の最高のバランス」というものを体験すること自体に注意を払うようになった。
最近、似たような最高の瞬間を高校生ラップ選手権で見る。
1対1で即興で互いにラップを披露ししのぎを削っている彼らは経験を積むに連れて上手くなっていく。そして相手が、トラックがない交ぜになって奇跡の瞬間が本当にふっと訪れるのだ。同じ人でもある試合でいきなり一皮むけだしたり、想像にしない言葉をトラックに乗せて繰り出してくる。
それを見ていると「自分のその瞬間はいつなんだ」とふと考える。
今は、前のどの仕事と比べれても調子はいい。でももっと最高潮な瞬間、高いレベルで自分の中で身体と精神が研ぎすまされた瞬間を味わえるのではないか。なんて思う。
