Re:11colors

毎週木曜日更新(2023年5月現在)。模型、日常。面白いことあれば他の日も

山の話とサンプリングについて

山の話が好きだという話でそれをなんとか心に宿らせられないかという話。

別に山に登るつもりはないのだけども、山に惹かれることがある。不思議だ。

何となく記憶を辿ってみると串田孫一の文房具56話に出会った事がきっかけなような気がする。

 

文房具56話 (ちくま文庫)

文房具56話 (ちくま文庫)

 

 

あまりにもキレのある、思ったよりも一瞬早くストンと終わる文章の長さがもたらす爽快感がこの本にはあるのだけども、氏が山に登るということで興味が湧きその後しばらくして名作と名高い著書「山のパンセ」を手に入れ、雪の中一夜を過ごし朝の綺麗さを語るエピソードなどに山に魅力を感じるようになった。その後も山のススメなんてアニメやイッテQの登山も見たりして「山って何なのだろう?」と興味が湧いている。

 

 

山のパンセ (ヤマケイ文庫)

山のパンセ (ヤマケイ文庫)

 

 

 

ただ、私は体力もろくになく運動神経もなく、致命的に方向音痴なので山に登ることは今後の人生ではあまり考えられないが、そういう「山」を自分の服装の中に宿らせようとすることがある。

 

 

www.ted.com

 

そういう行為はなんというのか、名称はあるのかと日々思っていたがTEDに出てきたこの袖の切り替えがお洒落なスタジャンのお兄さんが上手くそれを話してくれている。

 

——ノートリアス・B.I.G. 別名ビギーが 『ラ・ディ・ダ・ディ』に新たな解釈を加え No.1ヒット曲『ヒプノタイズ』を出しました 少しこれを再生します その後にスリック・リックも流して サンプリング部分を聞いてもらいましょう (音楽『ヒプノタイズ』by ノートリアス・B.I.G.) ビギーがこの曲が No.1ヒットになる一週間前に殺されたのは ヒップホップ時代を代表する悲劇ですが 『ラ・ディ・ダ・ディ』が 最初に出た時 ブルックリンに住んでいた 元気いっぱいの13才の 男の子だった彼には その曲と楽しい思い出が重なっていたに 違いないと思います お分かりのように 彼の解釈は 完全に彼独特のものです ひっくり返して 作り直し 模倣の寄せ集めのようなところは 全くありません 『モダン・ビギー』です。——

 

ああ、なるほどな。と感心する内容だった。

コスプレでもなく、物真似でもない(と思いたい)この遊びはその人自身の独特の解釈に寄って生み出されるから楽しく「良いな」と思えるのだろう。

私は山に登らないがTricker'sのブーツを履くときは山に押し入っていく姿を自分に宿らせる。J.M.WESTONのサイドゴアブーツを履くときもそうだ。分厚いコットンキャンバスのパンツを穿くときは山で暮らし、厳しい環境で暮らす人を思う。

もちろん、実際の彼らがその格好をしているかはわからない。私の中での解釈が1つ1つのアイテムを独特なものに見えるようにしてくれ、それが楽しい。

私は今、TEDでこの話をしてくれたお兄さんの様な袖に輪っかが走るスタジャンが欲しいと思っている。