Re:11colors

毎週木曜日更新(2023年5月現在)。模型、日常。面白いことあれば他の日も

編集デザインと俺

「もう、自分の好きなことだけやろう」

 

なんて諦めのような大人への反逆の誓いのようなものを頭の中で沸々と煮え繰り返してたのは三年以上前。「もう辞めるわ」とドアを開けた瞬間に退職を決心した次の日だった。帰りの電車(といっても10:30とかそこらだ)で「今の俺は最高に気分が良い」とツイートしたのも覚えてる。帰宅して本棚を眺める。蛙の詩人草野心平の「口福無限」が目に入る。あ、幸服無限だ。頭の中で言葉遊びが始まる。

 

そうして幸服無限は昨年末まで13号。三年と少しの付き合いをさせて頂いた。

今は事情があって休刊中だが、仕事を辞めた自分の手に残っていたものが「編集デザイン」だったことは本当に今でも奇跡だと思う。

 

文章を書くことはデザイン系の専門学校に入るか入らないか位のタイミングから好きになった。学校の授業では当時はまだクォークIndesignが競い合っててその中での授業だったからどっちも少ししか覚えられず、編集に関する興味は全然わかなかった。

 

就職してみるといろいろ思い出したくないことが重なったが最終的に自分を助けたのは一番不得意なIndesginだった。このソフトはページ物を作るのに最高のツールだったがそれと同時に「ページ物を作るソフト」という印象が強いことが自分を守ってくれる意味で上手く作用したと思う。IllustlatorやPhotoshopよりも制限が強い(と思われる)ので必然的にやることも少なくなって深く深く集中できる、といっても当時の自分と労働環境は最悪だったが今でも交流の続く師匠の下、できないなりに修行を積んだ。

 

その会社を会社都合で退職することになり、その後の会社をドアを開けた瞬間の思いのまま辞めて幸服無限を作り続けて(一回誌面リニューアルもした)、紳士靴シリーズを作って思うのは

 

「俺、めっちゃ編集デザインうまくなってる!」

 

なんてことだ。事実、件の師匠に最新作を見せたら

 

「キレイで、今っぽいし、加えてタイトルを付けるセンスがある」

 

と走攻守三拍子揃った野手みたいな評価を貰えて嬉しかった。

 

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この本は動的レイアウトという切り口から編集デザインを教えてくれyr一番良いところは

 

・デザイナーへのアドバイス

・編集者へのアドバイス

 

と各章にそれぞれへの指摘が載っているところだ。

 

実際自分は業務としてはデザイナーも編集もライターにも触れたし実際は小さなところだと明確な分け方もなんなら教育も受けない形でそれを行うことがあることも知ったけども「立ってる立場にあったわがままを言いがちになる」なんてのを物書きとデザイン、どっちも感心がありながらどっちも行った自分は痛感した(究極的にはどちらも読者へ捧げることには変わりがないのに、自分の作品が壊れることを酷く恐れてしまう)。

文章と絵だけだと本は形にはなるがそれより上には上がれない。編集デザインの何らかの力が必要になってくる。個人で強度と存在感のあるものを作る上で必要な最後のピースはこれだと思う。

どれもそんなに輝いてなくても三つ揃うとそれぞれに都合の良いものが互いに用意できるようになる。綺麗なレイアウトは絵も文章もより魅力的にしてくれる。

 

実体を伴ったものを作るのは大変だけど、自分の生活や世界が少し変わるでオススメです。