なんともいえない魅力ってものがあって、それを前に僕は無力になります。
どうみたって危ない予感しかしないものでも、それでも。という。
このイタレリのルノー5アルピーヌはそういうキットでした。
水色のボディはもちろん15センチ程度の大きさ、全体のカクカクしたフォルム。
「かわいい」とされる車になんとなく丸いイメージを持っていたのでそのせいもあるのでしょう。それらと比べて「おお、カクカクしてて、いい形してるじゃん」と思わせたのです。
パーツの色分けも、水色・黒、白と楽しい組み合わせ。なんかいいなーこういうの。色塗らなくても全然行けるじゃん。このエンジンの感じとかさ、白は銀に塗ってくれってことだと思うんだけどでもこの色のツギハギ感が良いよなって。
道路工事でツギハギになったアスファルトとか、石のブロックとかそういう「ツギハギの様子がおもしれー」って思うあの感じ。統一しろって話なんですけど、統一したとしてもそれを剥がして地面を見てみると工事をしたツギハギのあとがあると思うとドキドキしますし、むしろそれが表面に見えている方が抜き身の刀的な危うさがあっていいと思う。
おもしれーおもしれーと切って貼ってを慎重にやるんですが、ちゃんと合わせないと合わないし、合わないところは合わないので、諦めて先に進めると合わないそれを収める部分は合わない前提で余裕を持って作ってて、なんだそりゃってニヤッとしながら先に進める。向こうのプラモデルはそういうことらしいと認識する。
軍モノを買って私服に取り入れようとするときにサイズというより、そもそもシルエットをキレイに見せようだとかそういうことで作っているわけではないのでビミョーに勘所がズレてたりして、でも、良いなと思うと買ってしまうみたいな。モディファイされたM65よりも放出品のをざっくり着るほうがかっこよかったりして、なんかそういう感じ。着るとかっこいい日とそうでない日がある。なんの話ですかねこれ。
で、このイタレリルノーはなんかそういう、いろいろなアレがある。よくわからんが、良くて、気になる。
前輪の幅と後輪の幅が違うんですけど、それがパーツの精度に由来するのか、実車がそうなのかは何も書いていない。ただ、実車を調べるとそれらしいものも見つかるのでなんかそうなんだろうなって分かるくらい。
一言書いてくれればいいのにというよりは「興味あるなら知ってるっしょ」という姿勢が気高くも美しいと感じる。それくらいが良いと思う。
「そんなこともあるのかー!」なんて驚いたり、キットの部分部分の曖昧さをさらに受け止める曖昧さがあるという土壌で形になっていく姿を二人目の自分が認識し続けていると、頭が柔らかくなります。
「スケジュールなんて書き込まなくてもいいし、ToDoリストなんていらねぇ。いずれ、何もかもが終わるんだ」
という気持ちになる。
曖昧なものが曖昧なまま進み、なんとなく形になって、思ったとおりに窓のクリアパーツはピッタリはまらない。すごい。
だって、そういうことに疑問を持つのは俺の思い込みが原因だもの。「こうであるべき」ってさ。とキットへの愛が歪んだ形で現れるのは、全部、ボディの水色だとか、シャーシの黒だとか、ホイールやエンジンパーツの白だとか、そういうなんとも言えない魅力のせいだと思いますし
「一つ一つを着実にやっていけば大丈夫!」
みたいな一工程一工程に正解を求めるが故に時間がかかって仕方がない上に場合によってはろくでもないものが出来てしまうケースに対する
「曖昧なままボヤボヤボヤーッと形になる正解もあるんだよー」
という気持ちの良い答えのような気もしています。
キット自体の作り込みがかなりライトで、本当に曖昧なので日によって「なんだこれ」と思ったり「あーやっぱりこの水色かわいいなー。小ささやクルマそのもののデザインも素敵だよなー」と思ったりと心が揺れるキットです。
硬い硬い樹脂をパチパチ切ったものが何故かビニール袋に水をいれたもののようにポワポワと柔らかく揺れるような存在感になる。良いことです。
イタレリ 1/24 ルノー 5(サンク) アルピーヌ プラスチックモデルキット IT3651
- 出版社/メーカー: イタレリ(ITALERI)
- 発売日: 2019/02/20
- メディア: おもちゃ&ホビー
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