Re:11colors

毎週木曜日更新(2023年5月現在)。模型、日常。面白いことあれば他の日も

俺のプラモが始まった日とかっこよくありたいという話

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ラッパーなんかはたまに楽曲やフリースタイルで「あの頃のアレにやられた」みたいな話をして自分のHIPHOPライフのルーツを語るんだけど、なんかそれがかっこよくて、いいなって思う。あの人たちは口では散々「オリジナル」というが、その傍らで、何に影響を受けたのかをしっかり語るので、まさにオリジンが示す「源流」ということを無意識にわかってる節がある。

 

俺のプラモが始まった日は正確には子供の頃の話になるけど、接着剤を使うスケールモデルライフが始まったきっかけは超音速備忘録だった。プラモデルがカッコいいというよりは、プラモデルを語る人がカッコいいなって思ったのだと、今も思う。

 

プラモデルはどうしたって今はモノファーストで、どうやって作ったか、いかに作り上げたかという話が多くて、俺は俺でどこの誰に刺さるのかわからない記事を自分のブログにひたすら書いてる。ただ、最初に書いた「タミヤのミリタリーミニチュアの完璧な段取りと踊ろう」は超音速備忘録への手紙だった。「俺を見つけてくれ!やばいぞ俺は!」と手紙を書くように書いたらどういうわけか届いて、そのまま今に至る。

 

re-11colors.hatenablog.com

 

あの頃は、というか今もだけどプラモデルシーンを盛り上げようと俺をグロウアップさせて、仲間の一員に入れてくれようと褒めてくれたり言及してくれて「これは、俺はいけるのではないか?」と思いそのまま書いてたら、nippperというウェブメディアにも寄稿するようになったし、スケールアヴィエーションという専門誌にも3回くらい載った。俺はここでようやく自分が長年固執し続けた「書くこと」で日の目を見ることになった。

 

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プラモデルはまぁ、こんなことを言うのもあれだがあんまり綺麗な趣味ではない。手は汚れるし、ゴミも散らばる。ニオイもするし、まぁ、散々だ。しかも作ってるときがカッコいいわけでもないのでこれまた困る。俺もたまに「なんでこんなおっさんばっかり作ってるんだ?」と疑問になる。作ってるところを写真に撮られてもカッコ良くはないだろう。

 

ただ、俺はプラモデルを語る人がカッコ良かったのでプラモデルを始めた。プラモデルがカッコいい趣味なのか?と言われると「カッコいいかもしれない」と思う。

 

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 靴には靴修理という分野があるが、ユニオンワークスというお店が靴修理を一気にかっこいいモノに持ち上げた。ゴムや革の削りカスが舞い、手はコバインクや接着剤で汚れる。作業着だって汚くなる。それでも、それがかっこいいと思うようなことが、プラモデルでも起こる日が来るといいので、俺もかっこよくいたいと思う。

 

今週の物販

 

3 Feet High and Rising

3 Feet High and Rising

 

 

 

 

 

 

 

俺のイギリスをプラモに押し付ける

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初めて買った本格靴はChurh'sのShannon。愛すべき質実剛健と言いたくなるような姿と当時住んでいた部屋の家賃を軽く越えていく価格が天秤にかかったが、その良さにすっかり魅了されてしまったので「いやー」なんて棋士が頭を抱えるような仕草をしながら手に入れた。それから、俺の革靴生活はスタートを切る。本気なイギリス物は見た目の重さが違う。良いか悪いかは別として、重たいとか、硬いとか、そういう強さがつきまとう。

 

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バッカニアという飛行機を知ったときには「ああ、イギリスだな」という感じがすぐに分かった。スマートなボディとは言いきれないズシッとした見た目だったり、何かの理想を体現しようとする華のあるアメリカのジェット機とは違う雰囲気の良さ。かっこいいのか悪いのか、という判断で言えば「これがかっこいいんだよ」とかっこよさを押し付けたくなるよさだと思う。苦いのが美味い、それがコーヒーだ。

そのバッカニアを1/100スケールでプラモデルにした、タミヤのコンバットプレーンシリーズのものを一年前くらいに手に入れ、先日作り始めた。最初はムラのあるグレーで下塗り。そして重厚感に沿うようにとつや消しのブルーグレーを上から。一気につまらなくなった見た目を「今回はこういう仕上げにするのだから」と納得しながらなんとなく放置していたのだけど昨晩、思い直して塗装を全部落として再スタート。

 

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俺のイギリスやジェット機ってなんだろうと頭の中でフワフワしたものを集めて大きなフワフワにする。これを言葉にして俺のイギリスはコレ!としたいところだが、私はこういう抽象度が高い状態をそのままにするのも好きなので、フワフワが固くなる前に筆をとって塗り始めることにした。イメージはBarbourのオイルドコートのスモーキーな感じやBaracutaのスイングトップ。俺のイギリスは少し埃っぽく、雨に濡れたようなしっとりとした感じだ。

 

塗れば塗るほど自分の中のイギリスが雰囲気良く出てくるのが分かる。大雑把な塗りはボールペンで描きつけるイラストのような勢いと雰囲気のある仕上がり。俺は、プラモデルを作る匠ではなく、軽快に、そして緻密に仕上げるイラストレーターの気分。なので塗料の状態はいつもよりも慎重にキープ。決してつまらない見た目にならないように、そこから逃げるように、とはいっても雑にならないようにと即興的に行きたい自分と、丁寧に行きたい自分を行ったり来たり。あ、今日の塗装は楽しいぞ。

 

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仕上がった姿は俺にとっては最高の軽快さ。生地に風が抜けるような軽やかさは今まで作ったプラモデルの中でも随一で、今のところとても気に入っている。ちょっと派手かな、イギリスってもっとこう、地味というか耐え忍ぶというか……なんて思ったりもしたが、よくよく考えればBarbourやBaracutaの裏地はとびきりのチェック柄に思わずニコッとしてしまう軽さとロイヤル感がたっぷり詰まったものだったことを思い出した。

 

今週の物販

 

 

 

 

 

ドボン、プラモデルって引き算できないよね

前の会社にいるときに、取り扱う商材だとか取り組む仕事に対して「やりすぎはダメ」という話をよくしました。

 

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すぐわかる3年目がいるかと思いきや、全く分からない5年目とかがいるので面白いものだなと思ったことがあります。大体こういう話をして理解がこんがらがるパターンって「効率化ですね」とか「引き算ですね」とか言われるときで、どうにもうまく思いが伝わらず、なんて言うんですかね。すべてを完璧に行うことがオーバーキルになっちゃう感じとか、それで全く仕事が進まずもっと大きな目標が達成できないとかだと、困っちゃう。

スライム倒すのにバイキルトかけるか?みたいな話をしながらオーバーキルという概念を伝えてもわかってもらえない感じとか思い出すと頭が痛くなってきます。

 

こういう話を聞いてる側からは私は「効率よくどれもこれもやっている人間」と見られるし、そのまま「俺は一個一個丁寧に仕事をしてるから時間がかかるのはしょうがない」って却って現状の納得材料になったりして分断が深まる。店長は私ですよー。おーい。

 

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というわけでさんざん考えた結果、効率も引き算も存在しないという世界を生み出しました。効率はともかく、引き算って実際に引いてないですからね。正確に言うと足してないんです。

 

例えば「一回指差し確認する」って書いてあるのを、一回だけやる。丁寧にやる人は二回、三回とやる。それをやりすぎるとドボンっていうわけでブラックジャックに例えて話をする。「お前のは足しすぎ。例えば俺がブラックジャックで毎回17とかその辺を狙っているとして、お前はいつも21を取ろうとする。たとえ、今が20だとしても21を取ろうとして結果負けている」なんて。この後に「空いた時間で俺は勉強してるけど、お前は時間がないからいつまでたっても現状の満足感しか上がらないだろ。羽根が生えて飛ぶことはない」とかいうともう、鬼ですね。

 

そんな風に考えてるので、プラモデルにおける引き算ってなんだろうなっていつも思います。私は何も引いていない、周りが足し続けているだけなのだ。なんて。プラモデルを楽しむための「やりすぎが無い世界」がもっとあると良いなと思います。「何も足さない世界」なんていうと、箱にしまってそのままであることが最高到達点になりそうなので、「気分に合わせて好きなだけ足せる」みたいな感じが良いですね。

 

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とか言いながらタミヤの1/48シトロエンスタッフカーを7個も8個も作っているのは私なんですが、他にやらないと決めたことがあるから、こうやって「やりすぎ」を楽しめるということでここはひとつ。

 

今週の物販