ライブレポではないです。
私はKICK THE CAN CREWに大きな影響を受けて育ったのだけど、昨日初めてKICKのライブを見ることができた。中学の時に「かっこいいなー」って思ってたら友達が「VITALIZERいいよ」って教えてくれて近所のTSUTAYAで借りて、そのままずっと。
活動休止した後も聞いたし初めてiPodに入れた曲もそうだったし、とにかく好きだった。ライブがどうこうっていうのは当時は、金もなかったりしてあまり興味はなくてでも広告批評のピンクの特色で「コトバ」って書かれた奴はどういうわけか買って面白く読んで、一人暮らしになった今も部屋に置いてある。
そんなKICKを昨日、初めて見た。
神様かと思った、というのは言い過ぎにしてもびっくりした。「うわぁすげぇな」って。三人がステージに上がったときの妙な緊張感。私のように心待ちにしてた人もいっぱいいるだろうから誰もが成功を確信しているし、盛り上がらないわけがない。だからこその、少しだけナーバスなムード。その中でのKREVAの「俺はやってやるぜ」みたいな顔がすごい印象的で「ああ、この人はこういう人だよな。すげーな」って思ったりLITTLEの少し思いつめたような下を向いた顔とか、MCUなんかはもう私は一番好きだから「すげぇ。MCUだ。最高だぜかっこいい。この人も緊張してるのかな。だとしたらこんな人でも緊張するんだ」って思いながら見てた。
当たり前のように千%はやるんだけど、この曲のなんでしょうね。本当に帰ってきたとか復活したとかそういう感じって。
KICK THE CAN CREW「千%」MUSIC VIDEO
たとえ誰に抜かれようが 余裕に抜くアイディアが生まれそうだ
とか、めちゃくちゃ余裕あるじゃないですか。
余裕っていうかなんだろう、研ぎ澄まされていながらも清々しいというか。
そういう14年を経て洗練された何かを見たり、昔の曲を今、歌う様子とかはなんていうか本当にそれだけの年数があって今があるんだなと思ったわけで。
で、自分の話。
「ライブレポではない」と書いたのは自分の話をするから。
自分の14年はどうだっただろう。高校行ってデザインの専門学校行って転職を二回した。
確かに10年前はデザイナーとして事務所で働いていると思っていたけど今は「デザイナー」の肩書きは持っていない。嫌で、辛くて、このままだと頭がおかしくなるなと思ったときに業績が一気に悪化してクビになったから。転職の準備はなんとなくしてからよかったんだけどね。
今はデザイナーではないけど仕事の上でデザインをすることは多い。会社にはデザイナーはいないから、私がそれをやった方がみんなが本来やる業務に集中できるし良いことだなと思う。それと、ラッキーなのは特殊な業界だから商品特性を知っていてものを作れる人が少ない。これがすごい。おかげで好きな文章も書くポジションも抑えてるし、カメラマンもやれるし奇跡だ。
ダメな状況から自分で自分を変えながら、少しずつよくなって失敗するにしても同じ失敗はしないように実験してみたりして失敗して心を病みかけたけど「こうしたらどうだろう」とわざと違う試みをするというか。そのまま調子が戻ってきて、ここ数年でいうと、今なら絵が描けそうだ。と靴の絵がうまくなった。
もともと持っていたものを自分でなんとか復旧させて、それを組み合わせたらどう見ても「絵」が足りないから強制的に覚えさせたわけですが。
そんな形で14年経った今を復活祭を区切りに見ると「悪くないじゃん」と思う。
正確に言うと「14年前のKICKを聴いてた俺から見た今の俺は悪くないし、こうしてKICKを初めて見た今日、俺は俺をそう思えていてよかった」という感じだ。
あと私は単純な人間で、思い込みも強いから朝起きた時は「復活祭だから仕事はほどほどに……」なんて思ったけどKICK聴きながら歩いていたら
「いや、今日KICKは本番まで本気でリハーサルやってるはずだから、俺も仕事を本気でやらないとダメだ。やろう」
と自分なりにKICKに近づけるような精神状態に持って行けたのはバカバカしくてとてもよかった。でも多分そのときの気持ちって結構洗練された良さみたいなのあったと思うんだよな。昨日今日と作ったもの、どれも洗練されてたし。
あと、寄藤文平の「デザインの仕事」を読んで「日本語の装丁」つながりで、日本語をすごい気にしてるんだけど(もともと幸服無限でめっちゃ気にしてたけど)、そういう意味でも「復活祭」とか「千%」ってすごい好きだ。日本語の組み合わせで出来上がるものの良さにしっかり配慮してるというか。
千%はこの感覚はわかりやすいですよね。メーターがとうの昔に振り切れてるほどの充実感、満タン感。%は日本語じゃないって話もあると思うんですけど、日常会話での日本語っていうかそんな感じで、その辺の日常の言葉をうまいこと強くしちゃうのはすごいなと思う。
ふっかつさいのじゅもんをいれてください
とかね。こういうのものね。