最近また、新しい靴が出来上がった。
あまり褒められた話ではないが新しい靴が入ってきてもそれがすでにある靴に勝てない場合がある。最近は滅多に無いが勝てないならまだしも稀に負けることがあるからそれはそれで苦しい。
この新しい靴は今のところ「思ったより履いている」という感想が素直で、良さが上手く伝わると思う。履きやすい靴はたくさん持っているがこの靴は、作り手の狙い通りに履きやすい靴だと感じる。簡単に言えば「仕掛けにハマっている」。
木型は見た目の通り。そして言葉を付け足すならインサイドストレート。一見丸っこく見えるが意外と品がある。ここに惚れる人は多いと思う。「そうじゃないんだよな、自然とかそっけないとか、優しいって。そうじゃないんだよ。こうなんだよ」って。
何が言いたいのかというと、丸いのにその丸さを強く感じさせないというところが偉い。
ここの靴の製法は
・九分仕立て
・革底のみのマッケイ製法
・マッケイセメント製法
となるのだがマッケイセメント製法を選んだ。中板とアッパーはマッケイ製法で縫い付けるけどアウトソールは接着でくっつける製法。仕上げがまた丁寧でそれでまた更に「きれいだ!」となる。特に外側は湾曲が特徴的だからそれを野暮ったくさせてしまうのか、キレイに見せられるのかはこの辺の仕上げの上手さにかかっているのでは。
どれが正解って話は普段はあまりしないけどここの靴はマッケイセメントかマッケイが正解のような気がします。作り手側がおそらく気にした品や一種の軽やかさをどう出すのか?が分かりやすいのとあとはそのほうが安いからね。本格的な仕様が良ければもちろん九分仕立てでどうぞ。修理交換って意味だとマッケイセメント製法はある程度それが担保されているのと、わざわざ謳ってるメーカーもそんなに見ないので味わうのは悪くないと思う。揃えている革も面白いものが多くて、見かけないわけではないけど取り揃えているところは多くはないようなという物が多い。
私がオーダーした革も見るには見るが革小物がメインで靴に使うってのはあまり聞いたことが無い。ただ、そこに「なんか有名所とは違う良さのあるオイルドレザーを探そう」という意思は見える。それが良い。黒い革も複数あるし、スエードはイタリースエードをわざわざラインナップに入れてのグレーが珍しい。
この革についてを見ているとトルコの革が急に出てきたりしてその辺がまた、なんというか実験的でもあるが、あのシェイプで行こうと決めた人が選ぶんだから……と期待させる。
肝心の履き心地とエイジングの話にそろそろ入るが、履き心地はパターンオーダーシューズでもあり、最近の日本人の足型に合わせられるのはこういった小さなブランドの良さでもあるので当たり前に良い。
ただ私が注目したいのは履くときの良さだ。羽根が大きい分紐を緩めたときにパッと羽が開くので足入れがとても楽だ。そのあとグッと紐をキツくしながら足を正しい位置にセットする。この過程が苦じゃなく、自分が靴を履こうとしていることを認識するようになっているのが面白い。「この靴を履いている」と。これはかなり良い点だと思う。
無自覚にやれやれと履くという話ではなく、意識して履くことを楽に行わせてくれる。
その小さな「よしっ」という感じは割りと求めている人が多い瞬間ではなかろうか。大きな「よしっ」はなんだか気合が入りすぎてダサいけど、でも小さめなら……。と価格の高低でそこのバランスを取ろうとしたり、単純に尖りと丸みを対立させ「丸いのなら、そんなに気合もね……」と判断したり。
と自意識と戦って迷子になるパターンは靴以外にも往々にある。
ここの靴はそこが良く出来ている。全体の形であったり、革であったりデザインであったり。なんとなく、今の気分というか派手過ぎず、でも安っぽすぎず。とは言うもののコスパ重視はなんか違うし、ライフスタイルとかとも違うんだよな。という複雑なフレーバーを上手く仕分けて形にしている。なんでしょうね。個人的には品の良さが何故か漂っているところだと思うのですが。
エイジングについて書こうと思ったら結構な分量になってきたので少しだけ触れて終わることにする。
エルバマットのオリーブ、ニューヨークのブラウンでオーダーしたがともにイタリアのオイルドレザー。ただエルバマットの方が気持ち肉厚な気が。どちらもオイルをよく含んでいて履いて磨いてとやっていると良い経年変化をしてくれます。特にエルバマットのオリーブは表情が出る出る。
チャッカブーツのオーダーも十分ありかなと思っています。
気になる方は、是非(なんで宣伝……)。
あ、あと飽きるまでタイトルはこんな感じで行きます。