Re:11colors

毎週水曜更新(2021年9月現在)。革靴、模型、日常。

僕にとって平昌五輪カーリング女子はこんな感じだった。

「皮肉にも」という言い方が正しいのか。

 

平昌冬季五輪のカーリング女子、3位決定戦の日本対イギリスのラストショット。
スキップのイヴ・ミュアヘッドが放ったストーンは日本のストーンをハウス中央へと寄せナンバーワンストーンにしてしまった。失敗といえばそれまでだが、カーリングでは「相手の失敗を喜ばない」という精神があったりする。反対に相手のショットでも素晴らしいものは拍手を送る。東伏見チーム青森の試合を見ていたときにも、会場内でのラジオ解説で解説の小林宏さんが観戦している僕らが相手のショットに拍手を送ったのを見て「日本のファンの方も素晴らしいですね」と言っていたような記憶がある。

 

僕が「皮肉にも」と書いたのはミュアヘッドがミスしたからでなく、僕が小林宏さんの解説ですっかりカーリングの虜になってしまったトリノオリンピックのイギリス戦と同じようなことが起きたからだ(もしかすると、世界選手権だったかもしれない)。その試合も同じような形でイギリスのスキップはミスをした。当時は「やった」と一瞬思った。でも小林さんは確か「今のはギリギリのところを攻めてきたわけで、単なるミスに見えるかもしれませんが、その技術を見て欲しい」と話していて、とても驚いた記憶がある。こんな話をする解説の方がいるのかと。

 

戦術もルールもわからない中でシンプルで、平等な解説を心がけてときに我を忘れように熱く燃える彼の人間味に惚れてカーリングにハマったと言ってもいいほどに私はトリノオリンピックをきっかけにカーリングを観るようになった。BS放送や地上波で出来る限り、一人暮らしが始まりBS放送が見られなくなるまでは可能な限り追いかけた。その小林さんの「ギリギリのところを攻めてきた」という言葉と日本対イギリス、そしてスキップのショット。


ストーンが滑っていく途中に「攻めてきてる」と、トリノオリンピックのことを思い出した(同点でエキストラエンドで日本に後攻持たれて1点取られて負けるのなら自信のあるテイクアウトショットで仕留めに行く。といった感じに見えたが、どうだろうか)。
結果は知っての通りだが、僕は12年前と違って「やった」とは思わなかった。本当に僅かな勝負のアヤ、その攻めが良いゲームを生んだカーリングの持つ面白さにまた気付かされた。

 

そんな2つの試合に居合わせた日本人がいる。そうだ。本橋麻里だ。本橋麻里といえば、トリノからカーリング女子を見る人間からすれば刈谷アナウンサーが「マリリン」と呼び続けてそれで定着したことが印象深い。確か、テイクアウトショットのことをマリリンショットとか言ってたような。彼女がそこからどうなっていったかは詳しく書いている人もいるし、それを読まなくても「ああ、マリリンね」って分かる程度には浸透した。
トリノのあと、彼女が所属していたチーム青森小野寺歩林弓枝といった二人が抜け残ったメンバーに新メンバーを補充する形で存続した。その後の冬季五輪、バンクーバーでは良いところもあったが後半のチームのムードは良いとは言えず戦略の方針の違いが起きたり、コールが割れたりと見ているこちらにもその状態はわかるほどだった。
そのときのムードは記憶をもとに語ってもいいが、まぁ止めておく。

 

ただ、このときのことを頭の片隅に残しておきながら冬季五輪が始まってLS北見の様子を見続けていると、「ああ、本橋麻里は船長になったんだな」というような、そんな感想が浮かんだ。最初に注目されたチーム青森は小野寺さんのチームだった。小野寺さんに林さんが、それで目黒さんや本橋さん。という感じでチームの中のひとりだった。バンクーバーのときは目黒さんのチームだったと思う。きっとあのあたりで「もう自分でチームを作るときが来たんだ」と思ったんだと思う。事実作っているし。

 

ただ、当時は僕もあの険悪ムードは何が原因なのかを一方的に決めつける側だったので「ケンカ別れなのでは?」としか見ることができなかった。真実は分からないが、例えそうだとしても自分のチームを作るときが来たと思ったのは間違いないだろう。

 

こういったことは日常でもあることだと思う。会社でも独立します!なんて人が離れていくことはあるし、数年前にはウチの甥っ子が少年野球のチームを辞めるときに「野球は好きだけど、もっと上手くなりたいからここを辞めます」と話をしたということを耳にしたし。良い意味での「ここにはいられない」。

 

ソチは小野寺(小笠原)さんのチームが出たし、先に書いたとおりに僕も視聴環境がなかったり仕事が慌ただしくて殆ど見られなかったので2010年から2018年に飛ぶわけなんだけど、ここでは本橋麻里はプレーヤーとしての強さを持っているのにリザーブに回っていた。どこかで出てくるもんだろうと思っていたらとうとう銅メダルを取るまで出ることはなかった。選手紹介で変顔を披露していた彼女がすっかり大人になったような気もする。

 

自分のチームが勝つ、とは少し違う、自分が集めたメンバーで勝つ。

本橋麻里も随分変わったなと思った。僕も随分変わって、最前線で戦うわけでなくなり、部下も増えたし、燃えるように仕事をするわけでもなくなったから、随分人が集まるようになって、だからか、彼女の気持ちは少しはわかるようになっていた。本人に聞いてみないと真意はわからないけど。

 

これは、ストーリーを真っ直ぐ見ることが出来るという点でも良かったことだと思う。自分の話はしてもあまり意味は無いのでやめよう。

 

カーリングはもしかすると、また4年後まで忘れられてしまうかもしれない。
でも多分、トリノで小野寺さん、林さん、本橋さん、目黒さん、寺田さんが出場して、刈谷アナ、小林宏さんがコンビを組んでカーリングを楽しく、わかりやすく。そして最後の最後には熱く僕にその面白さや精神を教えてくれた。僕にとっては今回の銅メダルはその地続きのストーリーだ。

 

ただ、それにしても藤沢さんの攻め方はすごいよな……。
強気なのがよく分かる。僕は五輪期間中は「難しい選択を相手に迫る場面を作る」みたいな話をネットでもリアルでもしたんだけど、その姿勢が相手に難しいショットをさせるように仕向けているのは見ていて単純に面白かった。

 

二年前の記事がありました。

re-11colors.hatenablog.com

 

 

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10年前にVOLVO CARS JAPANのカレンダーコンペで受賞したカーリングのグラフィックアート。

何故か行きつけの先頭に飾られていた当時の写真が出てきたので載せます。

 

※このブログは基本的に毎週木曜更新です。