Re:11colors

だいたい木曜更新です。革靴、模型、日常。

ブレる筆塗り

筆塗りは筆と塗料を使うのでアーティスティックな作業のように思えるが、それと同じくらいメカニカルな作業であるようだ。

 

今日は時計を見に行った後に模型を作ったのでこういったことに気づけたのだけども、その実、筆塗りは機械式時計の「日差何秒」みたいなブレを感じやすい作業だと思う。そして、機械式時計を組み立てるようにそのブレをどこまで無くしていけるか?という遊びでもある。何もかもを筆塗りの風合としてしまうことはこの「日差何秒」がかなりズレた状態を放置してしまうことに等しい。

 

具体的には「混ぜる」「薄める」「塗る」の過程で結構わかりやすくブレが生じる。混ざってない、濃い、薄い、量が多過ぎる少な過ぎる……。など。

このブレを限りなくゼロに無くしていくにはメカニカルな動きが求められるというわけだ。いつでもよく混ざり、適切な濃度の塗料を適切な量で塗る……といった具合にそれぞれの工程の誤差を減らせば自ずと筆塗りは再現性を持ち、ミスも減り、綺麗に塗れるというわけだ。

 

各工程を洗練させる方法は様々で、これはゴルフクラブの選択に近いように思える。好みの14本をバッグに挿してラウンドするわけだが、このチョイスが難しい(が楽しいところなのかもしれない)。

塗料には種類があり、筆にも種類がある。また、リターダーなど添加するものもあったりするのでそれぞれと自分の相性を試すことになる。塗料はニオイのせいもあり住環境に依存する部分があるが、筆は選び放題だ。個人的には獣毛と化繊で大まかに分けて、その2つの相性を試すと良いと思う。私は最近、平筆はナイロンを使うようになった。

 

リターダーなどのサポートアイテムは、最初から使っても良いが、私が初めて色を塗るときにこれを薦められたら素直に買ったかどうかというと難しい。昨日使って、私もその性能に驚いたが、これは求める仕上がりがはっきりしてきたり、今の作業環境に不満を覚えたら使うものでもあると思う。

 

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最後に厄介だなと私が思っていることを書く。それは、良い筆塗りの仕上がりというのがいまいちわからないところだ。これは冒頭書いた時計の話と少し重なっていて、時計は機械式よりもクォーツの方が精度は上になるわけなのだけど、では機械式が無くなるのかというとそうはならない。また、機械式だから精度が劣っていて良いという話も聞かない。それぞれに試行錯誤の方向性は違えど誤差を限りなく減らすという観点はキープされたままである。

 

筆塗りで「やっぱりエアブラシやスプレーの方が綺麗だな」と思うのはクォーツの方が精度が良いと話してることと同じで、やはりそういう意味だと「筆塗りは筆塗りの良さがある」と思わせるものに出会う機会が少ない。

 

良い仕上がりという理想を持っている限り、筆塗りはエキサイティングな遊びであり動的な均衡を探る模型の楽しみ方の一つであり続けるだろう。