Re:11colors

毎週木曜更新(2021年1月現在)。革靴、模型、日常。

パチン(ペタッ)

色を塗らないでスケールモデルを作るっていうのはお気に入りの曲のベースの音に耳を傾けるとかドラムの音にだけしっかり集中してみるとか、そういう模型という楽曲を構成するいくつもの工程の中から一個だけを抽出する遊びのような気もするが、反対に組み立てという一つの単純な楽器の音があってその上に塗装だとかデカールを貼るとかジオラマを作るという楽器が絡み合っているようにも感じる。

 

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パチン、パチンとパーツを切り離す音だけを奏でているうちは、プラモデル製作のリズムは極めて単純だ。パチン、パチン。こうして音に気づき始めると、聞こえもしない接着の「ペタッ」という音も聞こえてくる。まだ、音はシンプルだ。

 

そこに、色を塗ろうとすると今度は、塗料のフタを開ける音が聞こえる。いや、その前に攪拌球を入れたボトルを振る「カラカラカラカラ……」という音か。ペーパータオルを台所でちぎり、持ってくる。筆入れをテーブルの上にごとん。なんだか音の数が増えてきてメロディが生まれてくる。色々な工程をこなそうとすればするほど、色々な音が増えてくる。ほら、蛇口からデカール用の水を出す音がシャーっと。

 

私はまだ、こういった複雑なメロディに上手く乗れない。カラオケのガイドボーカルにすら上手くついていけないような感じに似ているが、それとは別方向のこの複雑なビートに自分がどうアプローチしていけば納得がいくのかがわからない。

カラオケを歌うように模型を作ることができるようになったとしても、歌い込んだクセみたいなものは出ないだろうなとか、そもそも私は歌を歌いたいのかというとそうでもないような気もしてくる。

 

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パチン、パチンと切っている間。聞こえもしないペタッという音に耳を傾けている間は、ドラムマシーンが単純で心地の良いビートを刻んでくれているだけなので自分が何を歌いたいのか、心地よく体を揺らしたいのかががよくわかる。

 

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切って貼れさえすれば、といつも思う。

 

文章を書くのが上手なあの人、イラストがうまいあの人、写真を撮るのがうまいあの人が「切って貼れさえすれば」その得意分野を模型を通じて表現できるのに。と。

 

「切って貼るだけ」というのはものすごく単純だけどめちゃくちゃに面白い。メロディが単純な分、見えてくるものもそれぞれだし、多くの人が取り組めるだろう。

 

あなただけに聞こえる特殊な電波を一番簡単に受信できる遊び方だと思う。

 

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