Re:11colors

毎週木曜更新(2021年1月現在)。革靴、模型、日常。

平野義高氏のタートルネックの男

いや、こんなにいい男がいたのかという驚きですね。レジン製 1/35 スケールのフィギュアの扉をものすごい勢いで開けてたら突然出てきたのがタートルネックの男性のフィギュアで、この瞬間を切り取ったというのが素晴らしいと素直に感激して買ってしまった。どんなに腕があろうと技術が発達しようと瞬間を切り取るのは人間なので、ここに人が作るものの面白さがある。

 

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なんてことのない、ポケットに両手を突っ込んだ姿は兵士の日常そのものであると同時に私と彼はあまり変わらないようだと言うことがよくわかる。たまたま生まれた場所や時代が違っただけで私もタートルネックの彼も同じようにポケットに手を入れて突っ立っている時間が等しく存在していたというわけだ。

 

このキットを作ったのは平野義高という方で、かなり著名な方のよう。私は模型がよくわからないので知らなかったが、この瞬間を切り取るセンスや男の「ニコッ」とした笑顔の良さには恐れ入った。男の笑顔はこうである。と思わず言いたくなる。笑い声を上げるのでもなくニコッと笑う姿が繊細な造形で表現されているので私の顔も思わずにっこりとするわけだ。この、なんともない単三電池ほどの人形に。

 

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思うに平野氏のタートルネックの男は、作風がよく出ていると思う。プラモデルにおける最新の3Dスキャンのもののような人間に迫る良さとも、アルパインミニチュアのような格好良さあふれる男たちとも違う。これらはどちらかというと西洋的でより実物に迫る点に美しさだとか、問題解決の到達を見ていると思う。本物のような絵画、悪いところを直接手術で治すようなそんな感じ。

 

方や平野氏のタートルネックの男はどちらかと言えば東洋的で、浮世絵とまではいかないが少し抽象的、そして鍼灸のようなもので細部に迫るというより、もっと大きな部分で造形を見せようとしている気がする。

 

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シワが生み出す影も柔らかく、ゲージの低いざっくりしたニットのテクスチャーも抽象的。身体もどちらかといえば丸く、シュッとした規律正しい軍人の姿とはちょっと離れる。ただ、だからこそ笑顔がより爽やかにニコッとして見えるのではないかと思う。造形全体が笑っていると言えば良いのだろうか。

 

カチッと細部に迫る精密さのある兵士たちはレジン、プラ問わずちょっとした首の角度で猫背っぽくなったり、鼻のつき方や顎の形が生み出すニュアンスに組み立てる側の好みが過敏に反応してしまい、良い男かどうかの判断がシビアになってしま……ってはないか(あまりそういう話はないですね。私は気になりますが)。

 

その点、このタートルネックの男の全体で見せてくる美しさはとても特別で、面白いと思うのです。

 

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それにしてもこういう原型を作る人は塗装される前提で原型を作るのでしょうか。顔なんかは最近メイクの動画を見たときに気づいたんですが、くぼんで欲しいところは影色を入れたりするわけで、その考え方がフィギュアの顔に応用される場合、作った原型の何割り増しかで凹凸が強調される形になってしまいますよね。

 

このレジンキットも、パッケージの塗装見本は結構アクが強いんですが、無塗装で仕上げるとそんなことなくさっぱりした男の笑顔なんですよね。