プラモデル作りというのは不思議なもので「プラモデル作ってるんだ」と話をすると色を塗るものだと割りと思われるので、色を塗らない完成品を見せると「色は塗らないんですか?」と聞かれる。とはいうものの、大抵の場合は箱の中のものだけで完結させるには塗装という工程を踏めないことがほとんど。そして組み立てに必要なものを用意するよりも塗装に必要なものの方が多かったりするので、いつも不思議な趣味だなと思う。
色を塗ろうとするときに発生するのは「上手くいかない」という事態だ。言われた通りにやっても割とカジュアルに失敗はこちらに向かってくる。ただ、よく考えてみると「何が上手くいっていないのか」がよくわかっていない可能性があるのではないか。
子供の頃から習慣的にプラモデルを作っていて地続きの趣味としている場合には経験から「こんなものだろう」と自分の感性の判断があるからいいのかもしれないが、大人になってある日突然作り出すとその辺が難しい。
頭の中に浮かぶものも、なんだか左脳的というか具体的な感じだし、調べる力もついているから「すげー!」って感動したものに近づこうとかそういうのが「良い」と思ったりもする。私も、迷彩塗装はなんだか上手くいかなそうだなとずっとやっていない。先日チャレンジしようと思って買った飛行機は夜戦仕様になってしまった。
どうにもチャレンジができない状態が続いてしまっているのだけど、夜戦仕様の塗装は満足のいく出来になった。理由ははっきりとわかっていて、それは私が色を見つけたからだ。
夜戦仕様と呼ばれる飛行機は通常黒に塗られることが多いような気がするが、果たして本当に真っ黒だったのだろうか、何かそうでもないようなことがあったりするのではないか。大体、今の黒と当時の黒は質が違うのではないか? といった疑問が浮かんで、自分の思う黒さを気にしながら色を塗ってみた。
最初は青く塗ってその上に薄く黒を重ねる。さらに茶色を塗って、青と茶色を混ぜた濃いグレーを塗って、また黒を塗るみたいなことをやっていたのだけど、これは楽しかった。なんだか黒が黒くなっていくのが面白かったのだ。そこに若干の青みがあったり、赤みがある。自分の中の黒が見つかり、本当かどうかわからない説明書の「黒」が消えた瞬間は「この通りでなければいけない」という塗装に感じていた堅苦しさが和らいだひとときだった。プラモデルが致し方なく縛ってしまう「指定色」として名前のついたいろいろな色を自分の目の中に見つけたとき、きっと塗装は楽しくなる。
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