Re:11colors

毎週水曜更新(2021年9月現在)。革靴、模型、日常。

Plamo(del)death by heat gun

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インナーゲームというテニスのメンタルトレーニングの名著があるのですが、この本は禅や瞑想のようなものとは違うアプローチで心と身体のコンディションを一致させ最大限のパフォーマンスを発揮しようという本です。

本を読んで、実践してみると大なり小なりゾーンのようなものに入れるようになるので大好きかつ人にオススメしたい本で、ぜひトライして欲しいと思います。結果的に得られる効果は瞑想や禅と同等のもののような気がしますが、具体的なアプローチがマジで面白い。ちなみに俺はテニスはやったことがない。

 

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本の中にはテニスボールの縫い目に注目してラリーを続けるだとか、ラケットから響く打球音に意識を傾けるなど、客観的でブレのないものに集中することでテニスのショットの精度が上がる、フォームが安定するという話が書いてあるのだけれど、そんな風に「今、行なっている動作そのもの」ではなくそれを取り巻く環境に意識を向けるという着目点を何にでも置き換えられることに気づけるかがポイント。私はプラモデルの筆塗りに毛足の長い、細めの丸筆を使うことで綺麗に直線が引けるようになりました。理由は「直線を引きたい」と躍起になるのではなく「筆のしなっている状態をキープする」方に意識を傾けることができるから。天才ですね。ええ。

 

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そんなインナーゲームの使い手である私は筆塗りの面白さをタミヤの傑作機シリーズ1/48 シーハリアーで味わっていました。このサイズのプラモデルを筆で塗るのはなかなか骨が折れますし、高速で完成させたいと思うとミスが重なります。というか翼を綺麗に筆で塗るのが難しい。

今回は、筆で塗られる形を楽しむように塗装を行なっていました。パネルラインごとに塗ってみたり、凹凸の関係でどうしても一定方向だと色が乗らないところ。そういう筆の面白さを観察しながら塗っていると、綺麗に塗ろうと思わなくても綺麗に塗れるものです。均一な塗装面を形成するのは難しいですが、静かな表情を持った機体は美しく「今回はうまくいくぞ」と思っていました。 

インナーゲームの面白いところはこういう、本来の趣旨と違うところを眺めていながら結果的にパフォーマンスとしては十分なものが得られる点でしょう。尾翼の乾燥を早めるためにヒートガンを当てながら、一定の面ごとに乾いていく塗装面を眺めていたらその瞬間は突然訪れました。

 

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そう、ヒートガンの熱で尾翼がとんでもなく歪んでしまったのです。それはもう、お話にならないくらい。もし私が乾いていく塗装面ではなくヒートガンの音や手元に置いてあるTIMEXの腕時計から鳴る秒針の音に関心を向けてさえいれば、こんなことにはならなかったと思います。

 

「プラモデルにおける死」というのを、味わいたいなと思いここ半年くらい生きていましたが、久しぶりの死は突然訪れました。精密に折り重ねられたテニスのラリーのような時間は、ヒートガンへの私の不注意がもたらしたのです。

 

ひとつラッキーだったのは次の日がゴミの日でその失敗作と向き合う時間がとても少なく済んだことでしょうか。とはいうものの、もう一回買って楽しめるのがプラモデルの面白いところです。週末は第二戦が待っています。

 

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