Re:11colors

毎週木曜日更新(2023年5月現在)。模型、日常。面白いことあれば他の日も

アソビなのにまとめている。SEIKOプレザージュのカクテルタイム

f:id:nero_smith:20210715212336j:plain

腕時計のカラーダイヤルが一大ムーブメントになりそうだがそれとは全然違うところである程度の期間をもって延々とカラーダイヤルの時計を出してるっぽいのがSEIKOのプレザージュ、カクテルタイムコレクションだ。といっても知ったのは昨年の今頃だし俺はSEIKOフリークでもないのでその辺はよくわからない。加えていうと時計にコストパフォーマンスを求めたりもしないのでコスパ云々もここで話さない(とはいっても製品特性上、少し最後に触れる)。
で、プレザージュのカクテルタイムコレクションの話。

 

このコレクション、実物を眺めると明らかに「予算内にまとめよう」という意図を感じる。カラーダイヤルをフラットな一色にせずにグラデーションにしたりテクスチャーを持たせたり、あるいはギョウシェ彫りといわれる凹凸を持たせたりするわけだけど、これが面白い。多分、予算内だとフラットな一色で鮮やかな色を出し切れないのではなかろうか。逆に言うとそれをやっていて「お、きれいだな」と思う時計は結構限られるしマジで高い。松竹梅の竹くらいの色味にこれまた(おそらく)竹くらいのグラデーションやテクスチャー、ギョウシェ彫りを掛け合わせて絶妙なバランスをとっているのを結構強く感じるのだ。

 

f:id:nero_smith:20210715212425j:plain

 

私が買ったティファニーブルーみたいな色の文字盤は、発色の難しさから特にそうだと思った。フラットな一色できれいな色は出せないけども、グラデーションとギョウシェ彫りでトータルにきれいに見せている。「色と加工できれいに見せる」というアイデアと工夫がカクテルタイムコレクション全体にあるのかもしれないので、他の色も買ってみたい。

 

f:id:nero_smith:20210715212311j:plain

 

目立つのは文字盤だが、腕時計らしくロマンのある話をすればこの時計は機械式時計だ。機械式時計というロマンをキープしつつ、カラーダイヤルを身に着ける楽しさを加える。しかも安く。この辺にSEIKOのマジメさが垣間見えるし、「これを足掛かりに機械式時計を買ってね」みたいな気分や「機械式時計をすでに持っている人でもこの価格なら遊べるよね」とかいう購買行動への刺激を割と露骨に感じる。マジメが故の駆け引きが苦手な感じというかなんというか(その辺シチズンはうまく隠してるけど隠しすぎたプロダクトが生まれているのが面白い)。

 

カクテルタイムコレクションをどこで買うのかという話もあるが私はヨドバシカメラで買った。安いというのもあるし、偶然見つけたというのもある。皮肉な話だが、ショーケースに入っていると、時計をきれいに見せるための強い照明がグラデーションの柔らかなトーンやギョウシェ彫りが生む光と影の繊細さを失わせていた。なのでショーケースから出してもらうと、案外落ち着いた色味で表情豊か。実物の方が手をかけた加工がよりよく見える。会ってみたら、プロフィール写真よりもずっと美人でなんだか家庭的だったというのはこういう感じだろう。

 

f:id:nero_smith:20210715212401j:plain

 

とはいっても弱点みたいなのがあって、それはベルトだ。レザーの質感は顔料が多く乗ったような均一で妙にピカっと光るツヤ。ミラネーゼベルトも最低限といった感じで粒の立体感などはほとんどないので光り方も普通。

じゃあ逆に革の質感が良くてメタルブレスもほどよいクオリティで……ってなると価格が上がりそうなので弱点とは言ったものの割り切ってる感じが個人的に好感度が高い。やっぱり、まとめてきていると感じる。どこに金をかけるかって言ったら「文字盤」で、どうするかと言われたら「色と加工できれいに見せていく(しかも安くて機械式時計で)」という強いコンセプトが形になっている時計なのではなかろうか。

 

この時計に関してはコストパフォーマンスという言葉の再定義が求められると思う。今は「コスパ」という言葉は5万の靴が15万の靴に負けていないみたいな話になってきている気がするが、このカクテルタイムに関しては5万で5万の時計が手に入るような良さがある。払った金額に対して安すぎるということはないというわけだ。

当たり前の働きを果たすために色と加工と割り切りで見せるカクテルタイムはどこに金がかかっててどこにかかってないのかがわかる、良プロダクトだ。

 

今週の物販