SOUL'd OUTにはウェカピポという必殺の曲がある。デビューシングルだけど、多分俺と同世代のB-BOYなら流派Rのエンディングでいきなり流れて度肝を抜かれた人が多いのではないか。
次の日、学校で「ウェカピポ見た!?」と友達と話す。それくらいにインパクトがあった。すごいことだった。ウェカピポはいつ聴いても未来の曲だ。たまに宇宙人が地球にやってきて人類に文明をもたらしたなんてSFの話で出てくるが、ウェカピポはそういう類の曲である。2020年代に入り、俺たちはスマートフォンを手に入れ、Bluetooth接続の無線イヤホンで音楽を聴くけど、それでもウェカピポの描く未来には辿り着けない。
きっとウェカピポはチューブ型の道路に空飛ぶクルマが行き交う、今とは違う世界線の未来で聴かれて初めて本来の意味を成す曲なのだろう。結局、俺たちはウェカピポの世界線には進めなかった。
そこで東京オリンピックである。2020年に一度延期になり世の混迷をそのまま描き出しながらも滑り出した世界的イベント。俺はふと期待した。
ここでSOUL'd OUT が出てきてウェカピポを歌うのではないか?
SHINNOSUKEのビートが、Diggy'moのクセのありすぎるまとわりつくようなライムとフロウが、Bro-Hiの高速ラップとビートボックスが描いたあの、遥か彼方に行ってしまった「ありえたはずの未来」と俺たちが生きる「今」が交差するならここしかないのではないか。それにウェカピポは腐敗した世界を巨大なパワーとタフな精神で乗り越え、混沌という荒波に光を照らす曲だ。完璧だ。
「Nah! ウェッカピッポゥ!」
閉会式はTOKYO 通信でお願いします。