Re:11colors

毎週水曜更新(2021年9月現在)。革靴、模型、日常。

たとえ手つきが慣れようとも

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この夏、とても仲良くしていた方が週末に遠い異国に旅立つ。いろいろなことが重なり参っていたところを救われたというか、マシにしてくれた人である。

 

その人の部屋には何度かお邪魔したことがあるがミニカーが一台置いてあって、クラシックなデリバリーバンといった趣で、サイドにはクッキー屋の広告が印刷してある。こういったミニカーは素敵で、ノベルティに使われたのかなんだか温かみがある。当時はミニカーはどういう風に使われていたのだろうか。プロモーションツールとしての側面はどの程度あったのだろう。

 

なにか、別れの品にミニカーを用意してみてはどうかと思ったが名店のミニカーショップイケダは廃業となり気軽に多様な(特にクラシックなものの)ミニカーを目にすることが難しくなったので、良い手はないかと思いプラモデルを作ることにした。

 

何度も何度も手にしているタミヤの1/48 シトロエン11CVスタッフカーは、たくさん作っただけあってその佇まいの良さというか、この大きさで曲線が美しくすらっとしたカーモデルがあるということがどれだけ幸福かということを知っている。

 

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作り慣れた手順はいつも通りと思ったが、パーツを挟むクリップやそれを固定するスポンジのスタンド、そしてスプレーなど使う道具が変わってくると違った名作の様子をのぞかせるのが面白い。カラフルに塗りたくなるボディーやシートはアンダーゲートで、スプレー塗装は驚くほどスムースだ。欲しい表現を手軽に得られ、そこから出来上がるものは、雑に言ってしまえば「表現上の自由をどう踏まえるのか」を意識さえすればセンスだけが表出する塊にすらなり得ると思う。

 

以前作ったときよりも私はプラモデルが確実に上手くなった。だからホイールやドアの取っ手を綺麗に塗るとかそういうこともできたと思う。実物に近づくというか、精密な表現に迫るみたいなこと。

 

ただ、そんなことをしたって「壊れたら大変」なんて思われたら嫌だったのでシンプルな表現にとどめた。それを受け止めて優雅に色を携えて存在を主張することができるのは誰がなんと言おうがこの縮尺の車ではタミヤシトロエン11CVスタッフカーだけである。小さく優雅な、愛おしい存在。ナンバープレートのデカールだって貼れるけど、もしそれが剥がれて悲しむのはその人だろう。

 

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プラモデルはいつでも何度でも同じものを作れる。ただ「作ろうと思った動機はどうか?」と思うとその時々で違うようである。同じものを慣れた手つきで作ろうとしても、俺の心はいつもプラモデル作りには慣れないままだ。

 

今週の物販