Re:11colors

毎週水曜更新(2021年9月現在)。革靴、模型、日常。

何が世界観を作るのか NATURE AQUARIUM EXHIBITION 2021 TOKYO

入ってすぐ、パネライと思しき時計をつけている天野尚氏の写真が眩しい。

 

パネライがダイバーズウォッチとしての由緒正しさを持っていることから着用には合点が行くが、ここから彼の人となりを知ることになる。競輪選手としてお金を稼ぎながら趣味に打ち込んだ選手時代、虫の鳴き声に風情を感じること、アンティークの金魚鉢を集めていたこと。絵はこだわるがあまり完成することは少なかったそうだ。手書きの原稿用紙の文字を見てなんとなく人柄を察する。彼は、誰なんだろうか。アンティークの金魚鉢に何を見たのだろうか。不均一な厚さで、ヌメッとした質感。部屋にごろっと転がっていることが目に浮かぶ。収集したものがそのように転がっていることがなんと美しく、刺激的で、優しいことか。

 

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俺とは違う何かを見ていることは確かだけど、何かをつぶさに見たり、聞いたりしていたのだろう。その権化というか、眼に映る全てを吸収してやろうと言わんばかりにめちゃくちゃにでかいカメラで写真を撮っているようで、このカメラがシャレにならないくらいでかい。フィルムは富士フィルムに特別に作ってもらっていたというがフィルムもまたでかい。なにこれ。クリアファイルか?と一瞬思ったりするほど。それでこれまた自然の迫力をそのまま写し取ったような写真を撮るのだけど、それが思いっきり凝縮されたアクアリウムの世界に落としこまれるのが面白い。面白いっていうか、なんだろう。デカいものがギューっと小さくなるのだから密度がすごいよな……という感じ。

 

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とはいっても彼はもう存命ではないので彼の意思を継ぐ何人かのスタッフが作り上げたものか、あるいは彼のレイアウトを写した写真を見ることでしかその痕跡をしることはできないのだけど、例えば今回の展示の目玉のネイチャータワー360°は

 

「ここは森林!?」

 

と異空間に飲み込まれるような迫力があるのだけど俺が包まれる自然はきっと天野氏やスタッフの方々とは遠く及ばない。もっとデカいところを見ているわけだけど、そういうのとても楽しい。かっこいい流木や興味深い植物、泳ぐ魚を目を細めている間に時間を奪われるわけだけど、その奥にはめちゃくちゃにデカい自然がか隠れてるのが面白い。

 

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もちろん水槽の展示もたくさんあって、それをじーっと見ていると大体わかってくる。手前にレイアウトする石や水草は小さく、奥に行けば大きく。場合によっては執拗な高さまで盛られる土。奥行きをしっかりと出す考え方と前後を横断する形の流木。しれっと、背景には白や青などのパネルを配置していたりとか、そういうことが見えてくる。

 

「なるほど、そういうことか」

 

と思ったときに俺が見ているのは水槽で、天野氏が見た自然とはまるで違う狭い世界だった。

 

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なにを見て、なにを形作るのか。あのアンティークの金魚鉢が、忘れられない。

 

www.tokyo-dome.co.jp

 

結構会期長いので行ってもいいかもしれない。俺はミニパルダリウムが欲しい。

買えばよかったな。週末、買いに行くか。