女子高生は現代の兵士である。
というのは模型の中での話であって、ちょっと極論過ぎるかもしれない。
とはいうものの、縮尺が表記された人間の模型の中では「戦争の中の情景を描き出すという役割」を与えられた兵士のように、一瞬を切り取ったポーズが魅力的なのがまっつく氏の手がける女子高生のフィギュアだ。
兵士を戦士と高速で言い換えて、そこから企業戦士、サラリーマンへの連想を思い浮かべられなくもない。ただ、彼らはあまりにもスーツを作業着として着用し過ぎてしまってはいないか。第一ボタンが開けられたシャツに形式的に閉められるネクタイや、革靴なのかスニーカーなのかわからない靴。翻ってみれば、今度は生地と縫い糸の違うボタンホールや極端に丈の短いジャケットやパンツといった具合でどうにも兵士の持つ情感にはとうてい及ばない。
女子高生の場合は、校則はさておき、着崩すことがそのまま個性の表現になってる。めんどくさいからだらしがないのではなく、わざとやっているので、だらしなさがある種の魅力につながっている。兵士の制服と同じくらい「ルールと自身が所属する集団」をはっきりとさせるのは、一定の時期に限られた人だけが着用することが許される、制服という服装だからだろうか。
このフィギュアは雨による水濡れ表現が特徴。今まで、私はこのように雨に濡れた兵士のフィギュアを作ったことはない。衣服の水濡れが「シワと身体への密着」で巧みに表現されるということに驚いた。
というのも、よく見てみると「肌色が透けている部分は、シャツが身体についている」。そして「透けていない部分はシャツは肌から離れている」。それは、このキットにおいてはシワの部分のほとんどが該当する。
なので「肌に近い部分を奥」「離れてシワになっている部分を手前」と考えることができたので、全体に肌色を塗って、そこからシャツと身体の密着具合によって肌色からシャツの水色へと塗り重ねていくだけで水に濡れた様子を表現できるというわけ。そういった意味では下着の透け具合を塗り分けるところは、このキットのハイライトとも言えるだろう。
また、困り顔を描くのも面白い。ハの字になった眉や、ばっちり化粧をした方が美人に見える顔つきなど妙に癖のある見た目が塗っていて楽しい。まっつく氏が手がけるJKシリーズは、フィギュアの持つ造形の美しさとは違った、一瞬を切り取ったドラマチックさが魅力のシリーズだ。
普段は緊張感あふれる兵士達を塗って楽しんでいる私としては、同じような組み立て、塗装のステップでもモチーフが違うだけで、こんなにも完成品がまとう雰囲気が違うのだなと感心してしまう。
買うならこの辺(他のキットと合わせて買おう)
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