ビジネス書の最大の問題は「同じような状況になることはほぼない」ということだと思う。まじめに本の通りに何かをやってみたところで社内風土に押し潰されてしまうのが関の山だ。
そうして「勉強したって意味がない」なんて思うこともあるだろう。もしかすると「自分がダメなせいだ」なんて感じてしまうこともあるかもしれない。本当にそうだろうか。
ロジカル・プレゼンテーションという本の良いところは、ストーリー仕立てで伝えたいことが書いてあることだ。さらに良いのはストーリー部分は大抵、失敗に終わるという点だ。
企業と、コンサルタント会社。そしてその2社が提携を目指す、提携企業とのやりとりを通じて「ロジカルプレゼンテーションとはなんなのか」ということを知ることができる。
この本で「絶対ここを読んだ方が良い」というのは3章だ。目的の理解、論点の把握、仮説の構築、検証の実施と続いていく中で、「示唆を抽出する」というパートが最後にあるのがとても良い。
示唆を抽出するというパートでは「全てを調べ切って事実を並べることはできない」というようなことが書いてある。ただし、示唆は話が前に進むための重要な要素だという。
示唆の概念の面白さは、会議などの人の集まりに参加していると良くわかる。示唆が出ないから話が進まない。あるいは答えを出そうとしても、3章の「目的の理解」から「検証の実施」までが行われていない。そういうことがはっきりと見えてくる。
静かに会議に参加しながら「ああ、これは示唆が相手にハマってないな」なんて思ったり「そもそも目的の理解ができていないのではないか」と感じながら、黙っている。
そんなことをひと月でもやっていると会議の様子が違って見えてくる。「あの人はこういう論理のつながりを好む」とか「ここまで論理が飛躍するとダメか」とか。
ビジネス書は「仕掛けるための武器」のようなイメージがあるかもしれないが、実際はそんなことはないと思う。どの本もどちらかというと守備的に使う方が良いとすら感じる。
本著のような失敗をしてしまうのは誰か。俺じゃないし、君でもない。ベテラン社員たちがなんとなくで話している、目の前で起こっている会議そのものだ。
「なんとなく」だったり「社内風土」で構築される論理の隙間にビリッと一撃かましてやれば、話は前に進む。とにかく後出し、後出しでロジカルプレゼンテーションで得た知識を使っていく。そうして、早く会議が終われば十分なのではないか。
さぁ、早く帰ろう。
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