突然ですが、プラモデルは食べ物です。口が食べるのではなくて、脳が食べます。
そのせいか、組み味という言葉があります。味には食べ物と同様にいろいろな種類があってメーカーやジャンル、スケールごとに異なります。
その点ではハセガワの近年のカーモデルは品目も多く、複雑な味。でも美味い。ということが言えると思います。
ジムニーは間違いなく、そういうキットの一つです。ラダーシャーシを細かなパーツを使って組み上げる。車高の選択とサスペンション稼働の有無を選べます。ボディパーツにつくミラーやワイパーなどを通常通りにつけながら後方のドアガラスには内側から細いバーが付き、ライトの接着面にはインレットパーツがついてキラッと光る。そういう「細かいなー」ということを延々とやります。大変といえば大変ですが、それが良い。なんで良いかってどれも見栄えに関わる作業だから。丁寧に、というよりは手を抜かずに地道にやれば一か所を除いて失敗することはまずありません(ボディ側面のJIMNYロゴのインレットパーツだけは剥がす方向に注意。正解は下から上。後の方向はマークはロゴがバラバラになる可能性が非常に高いです)。
「手順さえ手を抜かずに作れれば誰でも」というのがハセガワの近年のカーモデルの特徴かもしれません。ただし、手を抜かずにというのが少し難易度が高い作業ではありますが。
難易度の高さの解消にはいくつか方法があって、最も有効なのは時間をかけて作るということです。今日はこの辺で、今日はこの辺でとずっと積み重ねていくやり方。蛇が自分より大きな獲物を消化するようにゆっくりと仕上げていきます。ついつい脳が滑って次の工程、次の工程と進めると私の様に片側側面のインレットパーツがバラバラになって虚無になってしまいかねません。
また、時間をかけることに関しては実は、無限に可能なのです。早くすることは限界がありますが、遅くすることはいつだってできます。
疲れたけど作業がしたい日には塗装したボディパーツのムラやうっかりついてしまった指紋をリカバリーしてみたり、ゆっくりモデリングワックスで磨いてみたり、とちょっとした作業で「早く完成させたい」と思う自分自身にディレイをかけます。これは極めて有効です。
ついつい、トップコートやクリアを拭いてしまう部分に時間をかけることで、細かなパーツに対峙する良い状態を生み出せます。ポイントは「わざと遅くすること」です。「全体の進行を遅くなるようにコントロールしている」と脳を騙して、巧妙に「早く完成させる」という指令をかき消します。そもそも早くって何に対してですか?なんて思えてきますよね。
一つはサスペンションの稼働です。この機構はジムニーが悪路を走っている最中の表現に非常に有効です。そして、カーモデルのほとんどは走っている最中の表現が難しいことに気づかされます。
もう一つは、このジムニーという車が持つ小ささとパワフルさのバランスが塗装が多少稚拙でも何だか良い感じに見せてくれる点です。平面の多い立体を筆で綺麗に塗るのはごまかしが効きにくく、難しいなと思いましたが出来上がってみると、ジムニーそのもののフレーバーがカバーしてくれていることに気づきます。
細かく、地道に、手を抜かずという作業が生み出す立体に不具合はなく、だからこそディレイをかけてじっくり完成まで進められる良さ。この経験はきっともっと細かく、複雑なものを作るときに大いに役に立つことでしょう。
去年のジムニーの記事
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