Re:11colors

毎週木曜日更新(2023年5月現在)。模型、日常。面白いことあれば他の日も

「山と渓谷」と文芸同人誌制作のレイアウト

私は以前、小さなデザイン事務所にいて数年間レイアウトを主に携わっていたのだけれども

 

・扱うものが堅い

・事務所内で「OK」とされるデザインが割りと古式ゆかしいものだった

・提供される素材があまりカッコの良いものがなかった

 

という状態で、なかなか苦戦した記憶は鮮明に残っている。写真をバシッと一枚とかできないことがほとんどだった。

しかし、そこで得たものは今の私の同人活動にかなり役に立っているので今となってはかなり感謝している。

そんな私が「ああ、これこれ。この手間、というか配慮よ」と思ったのがKindle Unlimitedの対象タイトルの「山と渓谷」。

 

 

山と溪谷 2017年 8月号 [雑誌]

山と溪谷 2017年 8月号 [雑誌]

 

 

 

個人的に「クラシックなレイアウト」と「細かな部品づくり」に好感を持っているので、レイアウトに関心がある方にKindle Unlimited初回30日間無料体験で見る一冊に加えてほしいと思った。基本的なものではないものもあるが、見ていて印象的だったものを上げていこう。

 

 

 

この辺の細かな解説をきっかけにレイアウトに関心を持ち、基本を踏まえながら制作に取り掛かろうとするのなら、indesignなどを導入し、文と絵、写真などを織り交ぜて作成する形での同人制作も前向きに検討することはいい案だと思う。

 

平面構成的な写真の配置とわかりやすい粗密さ

 

「気のせいかもしれないけど、これやってるところって見たことないんですが」

と当時思いながら、教わったんだけどあのとき山と渓谷に会えていれば人生は少し違ったかもしれない。

 

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山と渓谷2017年8月号90ページ、91ページより引用

レイアウトを見てほしいので引用しました。文章などは関係がないのでぼかしをかけています(以下同)。

 

右ページの大小様々な四角形の写真を巧みに組み合わせてページを作っているのが印象的。これは私も旅行記的な記事や式典の模様などのページによく使った。

 

・沢山写真を使いたいけど、多くのページを割く訳にはいかない

・文章と写真を割りとしっかりと連動させたい

 

場合は私の事務所では割とこうなった(実際にページは1日目、2日目と日程で分かれるような構成で、後者の理由が該当している)。「なぜこんな複雑なシェイプを全体で描くものを作るのか?」と訪ねたことがあるが「その方が誌面が豊かになるよね。見ていて単調にならないし」と返されて当時はなんとなく納得していたがその後職を離れてあまりレイアウトの良くない雑誌を見ていると「ああ、これね。最後まで読むのがしんどいやつか」と、ゴールキーパーのように目立たないほうが却って全体の調子が良いようなそんな役割もレイアウトを良く構成する必要性を感じたりもした。

 

「なるほど、これがすごいのか。ではこれを参考に……」

 

ちょっと待って欲しい。

この複数の写真を構成したページの反対のページを見てみよう。

大きな写真を二枚取り扱っている。

これがもう半分小さい写真を四枚だったら?六枚だったら……。

そう考えると見開きのページで考えたときに左右のボリュームがはっきりと別れているのが伺える。

 

・大きな写真で誌面を作る

・細かな写真を組み合わせて誌面を作る

 

このコントラストをはっきりと取っているのが、美しい。

ちなみにこの前のページは見開きを美しい写真一枚でしっかり見せているので

 

1.壮大な写真の見開き

2.細々と道中を見せる次ページ

3.先頭よりはボリュームは劣るが壮大な写真の対抗ページ

 

と続いて壮大なハーモニーが奏でられているのも見逃せない。

ちなみにその後は

 

4.夕暮れが美しい2.と3.を混ぜたようなページ

5.登頂した山の基本的な情報をまとめたページ

 

とさらにボリュームが増しているのでぜひ見てもらいたい。

こういったバランスをオーケストラの指揮者のようにコントロールし、そしてそれを完璧なものへとガイドするために機械のように秩序を守る。これこそページ物を作る楽しみだろう。

 

 

 

 

 手間だけど、アクセント

仮に、今回引用している山と渓谷のページの様なものを作るとしたら大体のものが四角が占める。縦横の世界。そこで加えるアクセントの一つは「斜め」。というわけで先程の引用画像にもう一度出てきてもらおう。

 

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右ページの左下部分に斜めになった写真がある。これは食事中の写真だがニュアンスを考えると「険しい道程の中でちょっと息抜き」と考えることができる。そこで縦横の世界のルールに縛られない斜めの写真を置く。これがアクセント。四角四面の世界に一個、これがあるだけで随分違う。ちなみにニュアンスだけでなくこの写真だけ自然ではなく人がかなりメインの割合を占める写真なので「他の写真と属性が違う(から扱いを少し変えてみましょう)」という考えがあるのかも、と判断できる。

 

ホチキス留めとしてのマーク

「こういうのを地味に作ってやるのがね。こうね(面倒だけどやらないとね)」と思いながら見ていたのが右ページ右下にあるマーク。

これは簡単にいうとホチキスみたいなもので、膨大な資料という名のコピー用紙の山を「これは意見をまとめたもので、こっちはデータ。でこれはまた別の人のか……」とホチキスで綴じながら分類しているようなもので、このページには「登れ!日本の3000m峰 全21座」と銘打った非常にキレイなマークがデザインされている。このマークが同様の特集ページには所々に打たれている。これによって「ああ、同じ特集のページなのね」と理解できる。オーケストラ例えを続けると曲目を判別させる役割といったところか。

 

最後に

いつかは山と渓谷のレイアウトの良さを書こうと思ってたが、そのきっかけはKindle Unlimitedの紹介プログラムがスタートしたことだ。

実際に書いてみるとこういった、シンプルで一見目立たないような気遣いが誌面によくできた誌面には多く隠されていることを改めて知れたことは私自身のメリットだったが、これらを知り、チャレンジしたりすることの楽しみが同人制作にも合っても良いと思うという気持ちが少しでも伝われば嬉しいと思っている。

また、こういったレイアウトを行うことで文章と写真はうまく絡み合いそれぞれがそれぞれを引き立て合う存在になる。

 

絵と言葉の一研究 「わかりやすい」デザインを考える

絵と言葉の一研究 「わかりやすい」デザインを考える

 

 

 

絵と言葉の一研究/寄藤文平著 にも水素と酸素が合わさると水になるように、絵と文が合わさると何か別のものになるといったことが書いてあるがそれに非常に近いことが起き、自分が書いた文と、写真や絵が「それぞれ独立した何か」ではなくなり良いものが出来上がると私は信じている。

また、冒頭にも書いたがこういった手の込んだ何かに挑んでみようと思えればIndesignなど各種専門ソフトを導入してさらなる制作のステップを踏むことも有意義に思えるのではなかろうか(導入したがする前とあまり変わらんものができた……なんてことはなりにくいだろう)。

 

 

編集デザインの発想法―動的レイアウトのコツとツボ570

編集デザインの発想法―動的レイアウトのコツとツボ570

 

 

 

冊子制作の全体を学ぶにはこの本がおすすめだが、今は絶版となっているのかマーケットプレイスのみの出品なのが惜しい。他にも何か探してみても良いかもしれない。

まずは、Kindle Unlimited 無料体験期間に山と渓谷を研究し同人誌制作時のレイアウトについての引っかかりを探ってみてはいかがだろうか。

 

 

 

丸善×一澤信三郎帆布

一澤信三郎帆布は京都にある鞄のお店なんだけど、京都の直営店じゃないと手にとって買えない。通販はやってるけど鞄を通販ってのはなかなか難しい。

ただ抜け道は幾つかあって一つは百貨店の催事。もう一つはどこかとのコラボアイテムを狙う。あまりよく知らないけど、多分そんな感じだと思う。

 

百貨店の催事は東京都内だと新宿伊勢丹で数ヶ月前にやってて「おお、すごいなこれ」とガシッとした強い鞄を見て感心した。他所の帆布とは少し違う。私が持っているものの中だとこれは一番硬いけど、私が知っている中という意味だともっと硬いものもある。そう思うとちょうどいい硬さなのかもしれない。

 

百貨店の催事で少し頭の片隅に残ってて、欲しいかもしれないなと思っていたらちょうどいいコラボアイテムが出た。それが丸善とのコラボ。

ある程度の人は本屋は〇〇派。なんていうのがあると思う。私は断然丸善派だ。

丸の内のオアゾの本店も、日本橋店も仕事の帰りであったり休日だったりに具合の良い方を使っている。丸善の何が良いかはよくわからない。

ただ、快適だな。見やすいな。と思うそれだけでいいのかもしれないけど。

あ、あとオアゾの文房具コーナーにはお世話になっているか。

気になっていたお店とお世話になっているお店が共同で出している鞄だから買ってもいいかなという感じで買った。なくなったら後悔しそうだしそんなに高くもなかったし。

 

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一澤信三郎帆布の鞄のモデル名などは詳しく知らないけどもこれはかなりオーソドックスなものなのではないかと思う。A4が入って把手は長すぎず短すぎず。中は特に部屋分けはされていない。前に中くらいのポケットがあるだけ。

休みの日に使っていると案外こういうものがいいんだよな。と知ってたことを当然のように再確認する。あまり几帳面にならずに持っていくというか。本入れて、飲み物入れて。財布も入れて。汎用性は言うまでもなく良い。

 

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あとはもうこれは単純に丸善とコラボをしているというその事実が際立つ良さだと思う。馬鹿みたいに真面目な「丸善」マークが愛おしい。

どうしても靴からの話になるんだけどマナスルシューズとかあったじゃないですか。あれもソールを裏返すと丸善のMマーク入ってるし。丸善って本屋なのか??と思うときもある。傘とかシャツとかもあるし。その辺の私の知らないところでの何か、本以外の物への力の入れ方が好きでもある。

日常使いするカバンに関しては鍵をぶら下げるために把手にカラビナをくっつけるんだけど、これは文句なくそうだろう、ということでくっつけた。

 

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お世話になる気もなくお世話になる鞄だろうなこれは。

「足りない絵」がうまくなりたい。

足りない絵というのは私が果たせる役目の中で「絵」だけが足りないことを指す。

 

完成度の高い情報表現をきちんと作ろうと思ったら、その3人が必要だということは、その3人がいればできるということでもあります。

デザインの仕事/寄藤文平 185ページより

 

 

デザインの仕事

デザインの仕事

 

 

ここでいう3人とは「デザイナー、編集者、イラストレーター」のことを指す。

私はデザイナーは3年ほど、エディトリアルをがっつりやる中で編集に片足を入れて、次の職場ではそのままライターの方に。イラストは当時全然描けなかった。

ただ、文学フリマを通じて「ああ、うちにはイラストレーターがいないな」と気づいて、というか

 

「思ったより売れるからこれはイラストレーターをつけたほうが、売れるし何より本として読む人の満足度が上がるだろう」

 

とデザイナーの私と編集者の私が話をしてイラストレーターの私を採用することにした。そう、イラストレーターの私がいれば完成度の高い情報表現ができる。はずだ。

というわけでこのブログでも定期的に書いているように絵の練習をずっとしている。

 

最近、少し面白いなと思うことがあった。

もともと「努力しない・時間をかけない」を掲げていてなるべく練習しないで上手くなろうとしてたのだけど『本を読んで』『練習をする』ことを覚えて毎日コツコツとは言わないでも暇な日はやるようにしていて。最近いよいよ11月に迫った文学フリマの準備をしていたら「ああ、こういう気持ちで、あれか、取り組めば良いのか」と気づいたのだ。

それは

 

・本を読む

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・練習をする

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・実践

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と分けて考えて臨むこと。

 

「こうやって分けておけば、何かしらやるだろう」と。

 

絵を描くのが面倒だなと思ったら本を読む。描き方に関して読んでいると、試しに練習してみるか。となる。練習して自信がつくと、じゃあ実際に描いてみましょう。と実践。そして完成へ。めでたしめでたし。

 

当然の話だけどもこれは定期的なサイクルではなくて、割と適当に動いている気がする。例えば本を読んで知識がパンパンになると試したくなる。練習もそんな感じで、コップの中に水が満たされたら別の容器に注ぐ。そんな感じで進む。

この中で面白いのは実践からどうなるのかだと思う。うまくいかないと悔しくて、他の二つに戻る。

 

しかも作成中に知識があると「この表現がよくわからないんだよな」「ていうか線を引くときのフォームが綺麗じゃないんだよな」「もっと線の感覚にシリアスにならないと」と至らない点に気づくので、またそれについての勉強や練習をしたくなる。

大体自分の場合は「この表現は逃げている」「この線の省略は描き方がわかってないからだ」という感じで。その辺のトライアングルは割と自在に動いてる。

 

そうそう、そういえば昨日なんだけど初めて自分の絵に色をつけてみた。

「これ使ってるよー」ってブログで教えてくれた方がいたので。

 

jurigeko.hateblo.jp

 

 

基本的に手描きで完成まで持っていくのが常だったから色をつけるっていうと絵の具しかなくて、失敗したら戻れないから嫌だったんだけどこれだったら失敗しても戻れるもんね。

 

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制作に使っているMacbookは黒いやつで昔でいう「松」とか呼ばれていたやつなんだけど、もう10年以上前の。学生時代のアカデミックパックのCS2でなんとかやってるからPhotoshopで着彩とか結構、ね。動作面の問題が。あと、マウスでってのも難しそうですし。というので止めていたけど、これだったらサクサクいける。

この作業をやってるときに初めて「見たまま、思った通りに描けばよい」というのが少しわかった。ああ、勉強してなんかそういうのの素地みたいなのできたんだな。

 

とはいうものの4色で本作ると値段がべらぼうに上がるのと色の調整の手間とか、いろいろあるんで色付けしたものは本にする予定はないかな。あと、PC止まったら嫌だし。

それに制限がある中で、習慣的な技法を学び使うことでかえって個性を発揮しやすいみたいなこと書いてあって「ああ、なんかラップぽいな」って思ったりした、その感触の良さを今は追いたい感じもあるので。

 

 

ペンで描く

ペンで描く

 

 

 

決定版 脳の右側で描け

決定版 脳の右側で描け

 

 

あとは、描くスピードが上がればもっと上達速度もあがるのでは。