Re:11colors

しばらく毎週月曜日更新(2022年7月現在)。革靴、模型、日常。

力強く優雅な靴を再び履こうと修理に出した。BONORA スクエアUチップ

 

「好きな靴メーカーはどこですか?」
「BONORA。もう無いけどね」

 

こんな風に意地悪だけど良いものを教えてくれる先輩がいて、俺はそこからBONORAのことが気になって仕方がなくなった。BONORAはイタリアのシューメーカーだが、当時も今もイタリアの靴は日本ではすっかり下火で、聞いたこともないメーカーだった。ただ当時の俺は、ある時期のイタリアの靴はしっかりとしたものづくりをしているっぽいと仮説を立てていたのでBONORAを探すことにした。

 

 

「革靴を探す」というのは、デザイン、使用されている革、サイズの3つがそろったものを探すことを指す。どの条件も満たすBONORAを探すのに、三年かかった。イタリアンなスクエアタイプのUチップに凹凸が荒々しいダークブラウンのグレインレザーはまさに理想形。荒々しいモカは手縫いで力強く、それ以外の部分のステッチは非常に細かく優雅(前の持ち主が靴べらを使わなかったのか、カカトにややシワが入っているのだけど、これは仕方がない)。この靴はどこを切り取っても「力強く優雅」というとびきりのかっこよさを持っているのが最高だ。

 

 

手に入れてから、しばらくは得意になって履いていたのだけど、カカトのゴムが硬化していて歩くたびに、カツーンと景気のいい音を鳴らしてくれる代わりに私の膝に苦痛を与えてくれた。数年ぶりに履こうと思いハーフラバーとトップリフトを修理屋で交換をしてもらったら、履き心地が良くなった。

 

履き心地って結局は足の形と靴の形の相性が大事なので統一見解なんてものは出せない。ただ、俺の足にとっては土踏まずまで伸びたカカトの芯が、土踏まずを支えつつも結果的に内から外への力を与えてしまう割には、足が外に流れる感じがしないのがマジで絶妙だなと思っています。それと小指の逃し方がうまくて、歩いているとしっかりと靴の中の外側のラインを小指が動いていくのがわかる。

 

 

BONORAに関してもっとも有名な話はJohn Lobbのプレスレージラインの一部を作っていたという話だ。その印として、シームレスヒールの履き口のてっぺんに一本ステッチが走っている。それに加えて、靴をひっくり返して底面を見れば木釘がウェスト部分に打たれているBONORAの靴もある。そんなことを造作もなくやっているのはSaint Crispin'sくらいだ。イタリアの工房が閉鎖されたときに、一時的に底付けを委託していたのでは? という話もあるが、あくまでも一説にしかすぎない。ただ、この手の話はBONORAの本当の良さとはあまり関係がないと思う。「力強く優雅な靴」これだけで十分じゃないか。

 

 

 

 

塗装日記 9/23 と誕生日

 

ホネミッツ・プロダクツのレジンキットのアニエス・タウべ整備士を塗りました。塗装ってマジで不思議な行為。突然うまくなる。うまくなるというか「わかる」が「できる」になる瞬間が明確にある。

今まではチョロッとしか曲がらなかったカーブが、いきなりものすごいブレーキの効いた魔球になるというか。今回はそういう感じだった。今までは面相筆をメインに使っていたところをドライブラシ用のぼかし筆で塗っていった。そうしたら、面相筆で塗っていたときの、面ごとの明るさを評価する発想がしっかりと頭の中に入っていたので辻褄を合わせながら仕上げることができた。

 

 

塗装って正直言って、手順はさほど変わらないなという印象だったので少し飽きてた。ただ、明度差をどうつけるのかとか、色相差によるコントラストの作り方とかそういうことがわかってくると結構楽しい。なぜその手順を踏むのかがわかるから、応用することができるというか。

それに、意図を持って塗装をすると一筆一筆の変化も劇的だ。今回はまずはガツンと暗くすることを意識して塗装した。暗いと色相の変化が分かりにくくなるが、変化に富んだ暗色を作ることを意識する。しっかりと土台を作るようなイメージ。そこからポイントポイントでギュッと明るくしていくと明暗差が出しやすく、特にハイライトを入れたときの効果の出方がとても良かった。

 

 

かなり最初の頃に塗ったホネミッツ・プロダクツのレジンキットの1/20 宇宙整備員サヴィーナ航海士 と並べると差がよくわかる。同じ手順を踏みながらも、今は明度差をどうつけるのかに意識が向かっている。また、服の色をキッパリと分けずに大雑把にまとめて全体で見せていく感じもある。

塗装って、どの模型でもできるし、良くも悪くも慣れてくる。だから「やっていることはあんまりかわらないよな」と思って飽きたんだと思う。ただ、昨日塗った飛行機の発見が今日塗ってる車に使えるみたいな、全てがつながってる感じが面白かった。

 

 

あ、そうそう。昨日が誕生日なんです。ただ、ここ最近忙しくてあんまり誕生日をエンジョイできてないですね。ゆっくり自分へのプレゼントでも見たかったのですが、買い換えることになったG-SHOCKが今年の誕生日プレゼントっぽいです。誕生日が人生最悪の日という仕様がここ数年でついてしまいましたが、とりあえず今年も一年なんとか生きてこれました。

 

 

そろそろ1/20スケールのマシーネンも作りたいですね。

 

 

 

 

 

カムバック シャノン Church’sのSHANNONが修理から戻ってきた。

 

「偉大なる凡作」なんて言葉があるが、Church’sのSHANNONをはじめとするプレーントゥダービーは「これだ!」という名作を探すのが結構難しい。

この形の靴って世の中にたくさん溢れていて、高いのも安いのもいっぱいあるのだけど、SHANNONは型崩れせずに見た目の変化もほとんどないという点に優位性がある。そもそもプラダグループ傘下になる前のChurch’sの靴のデザインは、保守的なデザインという風に語られることが多い。

しかし、2メートル先からもわかる、他の靴よりもやや大きく開けられたブローギングをもつディプロマットやチェットウインドや、「サスフィシャス」と形容されたコンサルの一部だけダブルステッチになった甲部分の縫い合わせなどは、それがChurch’sの靴であると認識するには十分すぎる個性だ。

 

 

SHANNONの特徴はポリッシュドバインダーカーフ(旧ブックバインダーカーフ)という素材を贅沢に使った、つるんとした表面だろう。継ぎのないデザインは、ワークシューズともドレスシューズとも取れる個性的なデザインだ。

このポリッシュドバインダーカーフには常に「エイジングするのかどうか」という話題がつきまとう。エイジングとは「持ち主が許せる経年劣化」だと思っているが、10年近く履いてわかるのは、その変わらぬ見た目の清々しさである。これほどまでに見た目が変わらない素材があるだろうか。風合いも出ず、見すぼらしくもならない。刻まれるのはシワとキズだけだ。

せっかくなのでバインダーカーフに関して少し触れておくと、現行の、ポリッシュドバインダーカーフは非常に上質なガラスレザーといった様子。これ旧Church’s、AlanMcAfeeと時代とラインが変わってくると徐々にスムースレザーに近くなる。AlanMcAfeeのバインダーカーフは非常に柔らかい。

 

 

10年履いてようやくオールソール。修理の機会が遅くなりがちなのは革靴をたくさん持っている人間の特長で「革靴は一生ものである」というのは、実はたくさんの革靴を持っていて履く機会が少ないからなのではと思う。

修理面においてSHANNONの良いところは、ザクザクと大きめな運針でキレイに縫われているところだ。細かすぎないのでだし縫いがガタガタしないというか。ダブルソールは返りと呼ばれる、靴の屈曲性がすこぶる硬い。なので、オールソールのついでにつま先ラバーをオーダーした。

 

 

もう10年履ければ、十分活躍したと言えるだろう。

 

 

 

 

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