Re:11colors

だいたい木曜更新です。革靴、模型、日常。

1/35の男の交差点には戦車がある

昔、ラフォーレ原宿の向かいにGAPがあって、店の前は少しフリースペースというか、階段を上がったところに空間があって、そこはおしゃれな若者達の溜まり場だった。なぜかというと、そこには雑誌のカメラマンがファッションスナップを撮るために待機していたから。

 

そんな明治通りと表参道の交差点にあったファッションのメッカのような存在が戦車のプラモデルだ。私は戦車のプラモデルがあまり得意ではない。その気持ちは今も変わらない。どこを作っているのかわからない感覚、細かな部品を組み付ける作業、1mmの穴あけ指示。転輪の組み立て図についている「8個つくります」というワード。A、B、Cとバリエーションごとに違う微妙なパーツの組み分け。しかもそれがほんの数年の違いや、どこで使われたのかで変わること。出来上がりはその作業の分、精密で魅力的だが、車や飛行機のような軽やかさとは異なる重厚感、そして戦いの姿。

 

これら全ては戦車のプラモデルの魅力だが、それが私にとっては大変で、なんだか受け付けにくいのだ。

 

しかし、そこに集まる男達はとても魅力的だ。確かに私も原宿のGAPには数えるほどしか入ったことがないが、店の前はよく通った。そして、そこに集まっている人たちを冒頭に書くくらいには覚えている。鮮烈だったということだ。

プラモデルの戦車に集まる、つまり戦車兵だとか歩兵、陸軍なんて書かれているものにはそんな風に鮮烈で魅力的な人物が多い。多いというか、多数のキットが発売されているので選ぶ幅が広いとも言える。そして、私は彼らのことが結構好きで、魅力的なポーズとかいい表情とかそういうことに惹かれる。細かく再現された服装を見ては、今の服装にも生きるディテールに感心する。

 

これは、そんな俺みたいなモデラーへの手紙だ。

俺みたいにプラモデルに何か自分なりの可能性を見出すタイプの人間への、メッセージだ。それは例えば、Good WearのTシャツとほとんど変わらない厚手の生地で襟首がヨレることのない(しかもかなり安い)ユニクロUのTシャツを見て「襟首がヨレるのがGood Wearの難点だと思っていたが、トータルのバランスでいうとヨレた方が良いんじゃないか?」とかそういうことに気づく人間へのメッセージだ。最適化され、説得されそうな何かに、待ったをかけて納得するまでに時間をかけるタイプの。

 

俺は何か、まだ、言葉にしにくいことに気づいている、そしてこれだけは言える「こういう風なことに気づいている人間にあったことはない、検索してもそういう話は出てこない」と思ったり、戦車はあまりにも戦いの様子を感じてしまうとか、そのせいで部屋に置くとなんだかイマイチだとか何かそういうことを感じる人への話だ。

 

素直にミリタリー、かっこいい!戦う男達がかっこいい!とは思えない。他にも色々と納得いかない理由があると思う。そのせいで、なんだか作れない。ただ、それでもそれを取り巻く人の生き生きとした姿に惹かれていることに薄々気づいているのであれば、これだけは書いておく。

 

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彼らが集まるのは戦車だ。ファッションに敏感な若者達が生き生きとした、あの交差点のGAPのように。1/35の魅力的な男の視線の先には、戦車がいる。

 

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Dressing the Man: Mastering the Art of Permanent Fashion

Dressing the Man: Mastering the Art of Permanent Fashion

  • 作者:Flusser, Alan
  • 発売日: 2002/10/01
  • メディア: ハードカバー
 

 

未完成な日

まず、今月は試しに日曜の昼頃を定期更新日にしようと思います。

そして、失敗の話ってあんまり聞かないなと思いますが、私の失敗の話がこれから始まります。

 

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海外の模型を二回連続で完成前に廃棄した。どちらも飛行機で、原因はパーツの組み立て方が悪かったり、流し込み接着剤でプラが裂けたりしたから。

これを総称して「パーツの合いが悪く、キットの出来もイマイチ」ということもできそうな感じだったけど、どうにもそうでない感じがわかる。

 

というのも、前者は説明書を見てもコックピット周りのフレームの取り付け位置がわからなかったからというのが理由で、後者は表から見たときに角が立っているようなパーツに流し込み接着剤が流れたからということで、原因がよくわかっているからだ。

 

私はそういう意味だと模型を信じている節があるので、悪いのは説明書だともパーツの成型がダメだったとも思っていない。設計した人はそれでいけると思ったから世の中に出ているわけで、これは椅子みたいなもの。世の中の多くの椅子が作った人が「これは座り心地が良い」と考えて世に出している中で、そうでもない椅子があるような感じだ。誰かがOKを出して、世の中に出回っている。

 

説明書とパーツが生む取り付け位置の決まらなさ、結果的に組み立てがうまくいかないってのはこれは単純に慣れの問題。私がタミヤやハセガワの説明書を読めるように、そのキットの説明書を普通に読める人もいるというわけで、パーツに関しても同様で合わせ方がわかる可能性は十分にある。

 

また、最近は洋服の生地や革靴の革のように模型のプラスチックを素材として見るのはありだなと思って見ているわけだけど、今回失敗した2つはどれも

 

「粘りがなく、脆くポロポロと崩れる割れ方をする。ただしその分、元に戻ろうとする力が弱いので通常の接着剤でつけてると形状を変えてそれぞれが組み合わさる」

 

というような見解を持って望んだので、流し込み接着剤がプラが薄くなっているところに流れ、裂けるというのはあとで振り返ると明らかにこちらのミス。

そもそも海外のキットなのでもしかすると流し込み接着剤を使わない前提で設計されているかもしれないし、まだこの世に存在しない時期に作られた模型かもしれないので、そう思うとキットの素材と製作方法の見切りが悪いこっちのミスという色はますます濃くなってくる。

 

海外キットはそういう意味だと文化や風習が異なる人と仕事を進めるような感じが強く、そこに今の日本人モデラー的な感覚で飛び込むと失敗してししまうよな、という体験だった。そこの理解ができてキットが作れると一番楽しいんですけどね。

 

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時計の良さにどう感動すればいいのか

数年前にテレビでSEIKOとHUBLOTの工場というか、生産現場を取材したものがあってそのときにどっちの生産現場でも互いのものは決して生まれないなと思ったりした。特に印象的だったのはSEIKOの方で確かGSの工場を撮影してて、限られた時計師がそこで時計を作るんだけど、その人それぞれに合った机や椅子の高さのものを提供される。で、それのデザインは時代家具的なもので、和風のそれだったりして、そこで匠の技術の結晶のGSが出来上がるという様子だったと思う。

 

ただ、それをなんで覚えてるかっていうともう一方のHUBLOTのことがあるからだったりして、こっちはいかにもクリエイティブの誕生する土壌といった感じでこっちも良かった。で、ここが問題なんだけどHUBLOTは匠の技術の結晶ではないのかというと、決してそんなことないんですよね。

 

新しい金属とかも研究したりしてたし独創的なデザインを生み出すことだって昨日今日サラサラサラーと描いてどうこうってものではなくて議論だったりアイデアの塗り替えや積み重ねは頻繁に起きてる。そう思うと匠の技術の結晶的に語られるまでにとどまる状態って結構きついよなって思ったりもしたわけです。デザインなんかは、そういう意味だともう華があるのはどっちかっていうのは明らかなので、質実剛健とか伝統とか、そう言わざるを得なくなってくる。役割が違うのはわかってるけど、それでも同じ時計ですからね、そこが難しいですよね。

 

最近は久しぶりに時計を買おうかなって思っていろいろ調べてますがSEIKOなんかはそういう意味だと意地でも機械式の時計を水深200mまで潜らせようって思いがあっていいですよね。多分SEIKOの匠の技術とかデザイン的な面を褒めるというか、財産的に捉えるとしたらここなのかなという感じがします。本当の伝統というか。

 

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なんて話をしてますが、私は新品の時計はCITIZENが多いです。100周年記念の時に初めて買ったんですけどそのときのテーマが「夜明け」ってことで黒をメインにモデルによっては所々金を挿すというカラーリングで多くのデザインを発表してくれました。安いものだと5万円しないくらいの定価で、ヨドバシとかだともっと安く手に入ったりしました。象徴的なツノクロノって呼ばれる、上がってる写真のものも10万円と、金額としては高いけど時計としたら安いものをメインに持ってきたりしてくれてありがたい限りでした。独自性のあるデザインを売りにして中身を凝ることで値段を上げることだって可能だったわけなので、大したもんです。

 

このアニバーサルイヤーを前にミラノサローネなどで素晴らしい展示をしていたのですが、それと連動するデザインだったのでこれもまた追加点です。

 

CITIZENはそういう意味だと少しデザインが自由ですね。考え方が柔軟というか。

日本の王者SEIKOが頑張ってる下でほどよく自由にやってるような気がします。

 

時計の厄介なところはコンビニでレジに並んだときに「チキンも買おう」って思うように、直感で買いにくい所で、名前は忘れましたがじっくり検討して買うジャンルのものだということです。何度も調べたり、納得したりを繰り返して買うという点がチキンとは違う所ですね。家みたいなもんです。

そこで納得させてくれる材料みたいなのが機械の話やデザイン的に見て質実剛健とか、TIMEXなどの安いものですらそういう言葉にし易い事象の話で溢れてしまってるのが少し悲しいかなと思いますが、そうするしかないのでしょう。そして、私もそうですが、そういう言葉を身にまとっているような感じがあると思います。つい「道具として」とか言っちゃいますよね。

そんなこという癖に、一番道具として優れている時計は私の場合だと手持ちの時計で一番高いツノクロノだったりします。エコドライブ、デュラテクトということで動作も丈夫さも相当上です。

 

そういう意味だと「夜明け」と強いコンセプトと、それをもとに統一感のあるラインナップを広い価格帯で打ち出したシチズンの100周年記念はとても面白かったし、周囲を納得させながら進めるような、背景世界を存分に語る形、プレゼンテーションありきの成果物ではなく「俺たちはこれで行く」と宣言するような強いコンセプトは眩しく映りました。理由ありきというよりは表現が先に立つ感じがかっこよく見えたのです。そのおかげですっかりCITIZENが好きになってしまったりしているのでした。

 

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