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毎週木曜日更新(2023年5月現在)。模型、日常。面白いことあれば他の日も

タミヤのミリタリーミニチュアで完璧な段取りと踊ろう

先日、タミヤウォーバードコレクションの記事を書きましたが、その後、今年タミヤのミリタリーミニチュアが50周年らしいということを知り、そして帰りの本屋でこちらを発見。

 

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そうですね。ホビージャパン。表紙の素組み(塗装などをせず組み上げた状態のこと)の写真に圧倒されてしまい、買ってしまいました。Twitterでも回ってきていたけどやっぱりあの本の大きさにギュッと詰まったキットの数々を眺めるのは違いました。なんかこう言うのって本当に初々しいですよね。

 

散々服とか靴とかギャーギャー騒いでたくさん買ったり色々してて、そういうバーチャルと実物の差って知ってるのに、プラモデルにフィールドを移すとその知識を持っていてもリセットされて喜びを味わってしまう感じ。でもこれってこういうことなんだろうな。って思ったのはどれを作ろうかとお店に無数に並ぶプラモデルを見て悩んでいるときでした。なんかワクワクしてしまう。なんででしょうね。僕は4歳で肺炎で入院してそこで同室のお兄さんがガンプラを作ってたのを、僕は全然記憶に無いんですけど実に楽しそうに見ていたそうです。退院した後はしばらく保育園に行けないものだから、父親がそれでガンプラを買ってきた(元祖SDガンダムF91でした)。

 

これが根底にあって今までも数年間のインターバルを置いてはガンプラを作って……とやってたので、そういう色々はわかってるんですけど、でもそういうのがなくても一度作ってしまうとこういうワクワクは本当に強くなると思います。そしてそれがお店でズラーッと並ぶ箱によって刺激されてしまう。あの、均一性のある前面のパッケージが並ぶ売り場は圧倒的。明確な規則があるようで、キット名の名前のせいでそうもいかない中で一定のマナーで保たれた文字組みは美しいの一言。ルールではなくマナーによって作られた美しさ。

 

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こんな服でも靴でも知っているワクワクを想定通りに受けて、悩んで、選んで買って組み上げる。そこでもまた感動してしまうのでもう完全に踊らされています。

 

わかりやすいマニュアル。そして組み違えが起きないようにパーツのダボの配置が違うとか、形状が円柱状なのか、少しカットされた形なのか。

 

 「そこまで考えるか?」

 

というくらい考えられています。一番感動したというか「やられた」って思ったのはここです。

 

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排気管ですかね。車のことは全然わからないのでアレですが、この先端の行き先がわかるにはわかるけど「まぁ、成り行きで」なんて思って位置を合わせながら説明書を見ていたら、見慣れない矢印。

 

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「何だこの白矢印」

 

なんて思いながら手で排気管をグリグリ動かしていると「ピタッ」っと合うんですよ。一瞬頭が混乱しました。は?なんで?なんて。

 確認するために外すと、そこに小さな凹みが、単なるくぼみではなく「そにこの角度に合わせてくれ!」と言わんばかりの形状。「メッセージのあるパス」なんて言葉が球技ではありますが、ほとんどそれ。メッセージのある凹み。

 

そうやって小さな気遣いのかたまりが完璧な段取りとして存在していて、その上で自分が踊らされている感覚に襲われるのはすごい楽しいです。というのも、仕事でこういうことって無いじゃないですか。下手すると段取りがグダグダで自分で段取りを組まないといけなくて、加えて完成形も用意されたパーツでは出来上がらないことがある。

 

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だからこうやってイギリス軍の装甲四輪車を組みながら「こういう感じで仕事ってできねぇのかな」なんて思ってしまうんです。でも「完璧な段取りってなんだろう」とも思いました。

 

材料を規定のステップを踏んで成果物に上げるものって例えば料理とかもそうだと思うんですけど、カレーなんかは極論、レトルトカレーを買えばいいじゃないですか。

でも、それだと作った感動がなくて、じゃあ今度は「自宅で作れるカレーセット」みたいなスパイスとか野菜が入ったものがあったとして、いざ野菜を切るってなるとそこで「少し切れ目が入っててどこに包丁入れれば良いのかが、わかる」みたいな、まぁ実際そんなことは無いし多分料理にそういうことは求められないので無いと思うんですけど、そういう「作業中に起こるであろうトラブルをイメージした設計」っていうのがすごい高い精度でできていて、その完璧さがどこに宿るかって言うと「作ったのは俺」っていうところだと思うんですよね。作ってて「タミヤに作らされた」とは思わない。実際はめっちゃ踊らされているのに。

 

それを完璧な段取りとするなら仕事でも「成果を出したのは俺」っていう風に思わせる段取りが良いなぁって思ったりします。たまにあるじゃないですか。バチバチに縛られて「これ俺がやる意味あるのかな?」みたいな。失敗はしないけど感動はないやつです。

 

その辺の設計の線引きはどう決めてるのか、あるいは50周年の蓄積の為せる技なのかはわかりませんが、この踊らされている感覚は日常生活ではとっても不思議です。

 

そして、ホビージャパンを読んでいたら「兵隊が存在することで情景が生まれる」と書いてあって「いやいやそんなわけないでしょー」とか「俺は、機械としての軍用車両が置きたいんだ!」なんて斜に構えていましたが、いざ兵士を乗っけると

 

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「うわ、情景が生まれた!」

 なんて感動。ここまで踊らされるともう何がなんだか。

加えて一車両作り終えたあとの余力で作るには非常に簡単なのと、機械を組むのとはぜんぜん違う頭の使い方をするのでデザートにもぴったりなのが上手いところ。

 

 

熟練の達人とダンスを踊るような、そんな感覚にうっとり。それに加えて組み立てを通じて日々のいろいろなことに気付かされる、そんなタミヤのミリタリーミニチュアでした。

 

 

ホビージャパン18年11月号

ホビージャパン18年11月号

 

 

 

 

 

Pointerのデニムカバーオール

今年の春は軽く羽織るものが豊作であった。

その中でもかなり出番があるのはこれ。

 

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Pointerのデニムカバーオール。 アメリカのテネシー州のワークブランドで1913年から続く老舗。未だにMade in USA。生産国なんてどうでもいいと思うときもあるけど、アメリカのブランドでアメリカ産だとやっぱり嬉しい。

典型的な胸と裾に左右2個ずつの4つのポケットで構成されたカバーオールで、左の胸ポケットはペン差し用に口だけ分けられている。

 

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偉いのは(?)ココ。襟が少し大きくて高め。なのであまりだらしなくなりません。

大体こういう物を着るとき、というか着たいなぁというときは心が心底ダラ付いてるので全体的に緩くなりがちですが体裁を保ってくれるので非常に助かります。鏡や窓ガラスに映る自分を見て「あ、なんとか。なんとかだけど、パリッとしてるな」なんて思います。

 

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とは言いつつも基本的にはこれを着たい日は先述の通りのテンションなので、裾のポケットに財布でもスマホでもハンカチでも突っ込むので入り口がよれてきますが、これは味。なんだかんだで作業着なので。

 

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そのまま前立てをペロッとめくると「WHITE OAK CONE DENIM」の文字が。

この工場はもう閉鎖してしまっているので近々このタグはなくなります。一応補足しておくとLevi'sの良いラインの生地を作っていた工場です。あとは詳しい他のサイトを見てください。それと、写真に写っている一番下のこのボタンだけロゴが曲がってついているのも味。アメリカ製って良いですよね。なんでもこうやって言えちゃう感じ。それで雰囲気抜群なんだから。

 

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というわけで袖口にもブランドネームの刻印されたボタンが付いてます。かっこいいですね。

 

アメ横のJalanaが在庫もあってお店の人のテンションも安定している感じがあって、そこで買ったのですが、意外なほどにシルエットはキレイ。ダボつかないというかだらしなくなり"にくい"です。基本的には作業着なのでダラ着ですね。僕の中では。

 

ただ、これは何でしょうね。全体のシルエットとかカフの太さとか襟の高さとか形がキレイに纏まろうとしている様子が不思議です。不思議っていっても当時はこういうメーカーがわんさかあって、その中で「少しでも良いものを!」となると、今の高機能素材のような生地方面の技術革新がない限りは見た目をかっこ良くするするのは差別化としては当然の方向なのですが。そういうかっこよさが今もあるのは嬉しい。

まぁ、今の季節は色々な洋服を楽しむのには最適なシーズンですが、こういう本来は一番外側に着る上着をちゃんと羽織って外に出るのは楽しいです。

 

サイズが結構面倒というか微妙なところで形がキレイなのでXSでぴったり着ても良かったけれど、まぁダラダラ着たいしな。ということでSサイズ。洗って少し縮んでいい感じ。あと、最初は硬いので家で着てゴロゴロしてると馴染むのが早い。

 

あ、あとはあの、なんすかね。とりあえず着るってのに便利なのでとりあえずサイズの合ったやつを着てみましょう。

 

 

 

コストの話はほとんどしないんですが、この服は確実にモト取りますね。

「高すぎるということは無い」という感じの服です。

デニムが一番当たりかな。ダック地もあるので普段穿くパンツと相談して見ると良いです(私はデニムはほとんど穿かなくなったのでデニムにしました)。

 

 

 

今年は戌年ですので悩んでいる方は今のうちにそれを理由に買っちゃいましょう。

 

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犬のマークが素朴。

中山製靴7ヶ月

中山製靴のチロリアンシューズ、最近履く機会が多くて「ああ、そういえば結構経つよな」と思ったので書くことにした。

 

一年の殆どを革靴で過ごし、下駄箱の都合でスニーカーともお別れしているのでスニーカーの履き心地なんてとうの昔に忘れたのだけど、そうでもなく革靴とスニーカーが半々みたいな感じの人の感覚に近いものをたまに感じる。

それは「足を休ませる」ということだ。靴なんて、フィット感にOKを出すサイズ選択がそれぞれなのだけど、僕は割とピタッと履く人。それで全く問題はないのだけど、時折こういう少し楽な靴があると嬉しい。

 

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革靴は凝りだすと途端に「品」とか「味」とか言い出したりするものなんだけど、毎日毎日毎日ひたすらに履いて、数も増やしてと行っているとそういうことは「誰かに見られる自分」とか、その反対の「自分が見た誰か」に対する話ではなくなってきて、自分がそれをどう思うのか?なんて話にすごい近づいてくる。

自分にとってこの靴はどういうものなのか考えたり、役目を与えたり、求める役割を果たせるものがない(ということにして)から新しいものを買ったりする。

 

僕がこのチロリアンシューズを手に入れた理由は、ダラダラ履く革靴が欲しいなと思ったから。だってこの靴のデザイン、どう見ても完璧に足に沿うなんてことはなさそうなんだし、脱ぐときも紐をぐいっと引っ張って一気に緩めてガボッ、ガボッと脱げばいい。

 

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それととにかく硬い。型崩れ全然しないもんな。もう結構馴染んでるから履いてる分にはそういう硬さは感じないんだけど、脱いで靴を見たときにビシッとしてる。

 

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まぁ本当にこういう靴は貴重です。変な理屈を付ける前にぽんっと履いて、ドレスシューズの品でもなくワークブーツのとっぷりと油を塗りたくられた漢らしさでもない、ただなんとなく履く様子とかこの靴のおかげで革靴を履く生活がしっかりと成り立ったりしてしまう感じとか、そういう無頓着そうで愛しているみたいな靴を履く楽しさとかを味わってもいいと思います。

しかも最後の最後に要確認という感じで書いちゃうけどこれ、オーダーメイドだからね。細い・普通・広いの木型の中から選んで作れるというだけでも非常にありがたい。

 

しかし60周年とは長い。

 

登山靴 手作り職人の店 中山製靴

 

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