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毎週木曜日更新(2023年5月現在)。模型、日常。面白いことあれば他の日も

最も優雅なプラモ趣味を知りたいのなら -スケールアヴィエーションを読んで-

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ファッションに長らくはまっていると思うが、ファッション雑誌から顔を背けるのはかなり早かったと思う。私服の高校で外見に関わる校則は一切なし。入学式を終え、週が明けるたびに、数人ずつ髪の毛が明るくなる。私も例に漏れず茶色くして、私もみんなも毎月毎月髪の毛の色が変わる。髪型も変わる。ピアスの穴も開く。都心の遊び場みたいな高校の帰り道には渋谷、原宿、新宿に池袋。どこでもいける。ハンジローでLevi’sの501が2980円。大仏のプリントされたポイントカードは還元率が異様に高い。

 

そんなところに通っているとファッション雑誌なんて読む必要がないのである。何が流行っているかもすぐにわかるし、コミュニティそのものがファッション命!みたいな感じだったので、あんなのが欲しいこんなのが欲しい、あいつはBEAMSでポーターの財布を買った、なるほどBEAMSへ行ってみよう。なんて自然と行動範囲は広がり知識も増えて趣味趣向も勝手に発展進化していく。固まった好みは確かな幹となって枝葉を伸ばしていくので今も揺るがない。

 

そんな風に野良でファッションに触れてきた私の心を離さない雑誌がある。スケールアヴィエーションという航空機プラモデルの専門誌だ(昨年の今頃、なんと私が書いた文章が掲載されている!)。私がこの雑誌が好きだなと思う理由は優雅さだと感じている。写真が綺麗で、清潔感がある。レイアウトも品がある。そのせいか、私は「飛行機プラモデルを作る」というのはプラモデル作りの中でもっとも優雅で大人なものだと思っている。

 

今号は2000円で楽しむヒコーキ模型の世界という私がプラモデルに触れるきっかけになった「1500円で楽しむヒコーキ模型の世界」の続きとなるもの。飛行機のプラモデルで2000円も出すと私みたいな「ガチ」じゃないプラモデルを作る人間としては結構満足の行くものが買えるし、色を塗ってどうこうなんてことをしなくても、この価格帯のタミヤの1/48の傑作機などは切って貼るだけで誕生する洗練されたデザインの塊として満足度が高いので、いい特集だなと思ったりもする。

 

私は常々、プラモデルはジーンズのように「大量生産品でありながら、オーナーの手によってそれぞれ違うものが出来上がる面白さ」があると思っていたが、それに近しいことが巻頭言に書いてあってとてもよかった。プラモデルの面白さは私とあなたが同じキットを作ったとしても同じものにはならないところだろう。技術の巧拙もあるかもしれないが、それよりも作っている過程の場当たり的な気分の痕跡が完成品としてプラモデルに残るのが楽しいのだと思う。

 

今号のスケールアヴィエーションは、知らない世界を覗くには恰好の一号ということになると思う。本屋をなんとなくうろついて、手にとって気に入ったら買ってもいいと思う。というか、表紙の水彩画のイラストとめくってすぐの切り絵だけで心を掴まれる。

 

たとえ私が、今日までプラモデルを作っていなかったとしても、この号を見て結局プラモデルを作ったのだろうな。

 

 今週の物販

 

Scale Aviation(スケールアヴィエーション)2021年 05 月号
 

 

 

 

君が色を見つけたときに

プラモデル作りというのは不思議なもので「プラモデル作ってるんだ」と話をすると色を塗るものだと割りと思われるので、色を塗らない完成品を見せると「色は塗らないんですか?」と聞かれる。とはいうものの、大抵の場合は箱の中のものだけで完結させるには塗装という工程を踏めないことがほとんど。そして組み立てに必要なものを用意するよりも塗装に必要なものの方が多かったりするので、いつも不思議な趣味だなと思う。

 

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色を塗ろうとするときに発生するのは「上手くいかない」という事態だ。言われた通りにやっても割とカジュアルに失敗はこちらに向かってくる。ただ、よく考えてみると「何が上手くいっていないのか」がよくわかっていない可能性があるのではないか。

 

子供の頃から習慣的にプラモデルを作っていて地続きの趣味としている場合には経験から「こんなものだろう」と自分の感性の判断があるからいいのかもしれないが、大人になってある日突然作り出すとその辺が難しい。

頭の中に浮かぶものも、なんだか左脳的というか具体的な感じだし、調べる力もついているから「すげー!」って感動したものに近づこうとかそういうのが「良い」と思ったりもする。私も、迷彩塗装はなんだか上手くいかなそうだなとずっとやっていない。先日チャレンジしようと思って買った飛行機は夜戦仕様になってしまった。

 

どうにもチャレンジができない状態が続いてしまっているのだけど、夜戦仕様の塗装は満足のいく出来になった。理由ははっきりとわかっていて、それは私が色を見つけたからだ。

 

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夜戦仕様と呼ばれる飛行機は通常黒に塗られることが多いような気がするが、果たして本当に真っ黒だったのだろうか、何かそうでもないようなことがあったりするのではないか。大体、今の黒と当時の黒は質が違うのではないか? といった疑問が浮かんで、自分の思う黒さを気にしながら色を塗ってみた。

 

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最初は青く塗ってその上に薄く黒を重ねる。さらに茶色を塗って、青と茶色を混ぜた濃いグレーを塗って、また黒を塗るみたいなことをやっていたのだけど、これは楽しかった。なんだか黒が黒くなっていくのが面白かったのだ。そこに若干の青みがあったり、赤みがある。自分の中の黒が見つかり、本当かどうかわからない説明書の「黒」が消えた瞬間は「この通りでなければいけない」という塗装に感じていた堅苦しさが和らいだひとときだった。プラモデルが致し方なく縛ってしまう「指定色」として名前のついたいろいろな色を自分の目の中に見つけたとき、きっと塗装は楽しくなる。

 

今週の物販

 

 

エアフィックス 1/72 ボールトンポール デファイアント Mk.1 プラモデル

エアフィックス 1/72 ボールトンポール デファイアント Mk.1 プラモデル

  • 発売日: 2015/07/03
  • メディア: おもちゃ&ホビー
 

 

 

忘れられたり、見過ごされそうな「買う」に注目してみる。

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企画を立てるという行為を分割すると「考える」「選ぶ」「形にする」だという話がある。それぞれを全部やるのは大変だけど部分的にトレーニングを行うと比較的楽。

その中でも特に楽なのは「考える」だという。

なぜなら場所も道具も必要とせずいつでもどこでもできるから。

やろうと思えば今でもできるし、明日の朝でもできる。飯を食いながらもできるし、洗濯物を干しながらもできるだろう。そして「考える」の効率を上げるために「発想法がある」というわけだ。

 

そんな話を加藤昌治というおじさんがしていたのだけど、彼のいう通りにワークショップに参加すると確かに「考える」ということの面白さがよくわかる。結果として生まれたアイデアは使えるか使えないかは別としてとにかく数が出る。考えるとは、ということがよくわかる印象的なセミナーであった。

 

プラモデルが完成するまでというのをそんなふうに分けてみると「買う」「組み立てる」「塗る」みたいなそんな感じだろうか。いやいや、違うでしょという場合はそれぞれで勝手に分けて欲しい。買って完成するまでを分けてみようというのが大事という感じだ。

 

さて、俺は俺なりに三つに分けてみたがどう見ても楽なのは「買う」である。買うだけならすぐできる。このブログが書き終わった後にプラモデルをAmazonなりヨドバシなりでポチれば終わり。

 

「考えるだけ」をするように「買うだけ」に注目してみると、どうにも「買う/買わない」の選択や「どれくらい買う」「いつ買う」などいつもならノリで買っている部分に細かなジャッジがあるということに気づく。「疲れているから買う」なんて精神的な話も出てきたりするかも。

 

俺はプラモデルを積むことはあんまり得意ではなくて、たくさん積まれていることに耐えられなくなってくる部分があるのだけど、先日、たくさんのプラモデルを一気に買ってみた。RODENの1/72の複葉機を7つ。自分としては「買いすぎ」といった感じだったが、あえて買いすぎてみたかったので買ってみた。プラモデルを買うというのがどういうことなのかが、自分でもよくわかっていなかったからだ。

 

買ってみてよくわかったのは、たくさん買うのは楽しいかもしれないけど山のように積まれたプラモデルは俺にとって好ましいものではないということだった。なので、ロケット鉛筆のように積まれたプラモデルのいくつかは売られ、いくつかは急に手をつけ出し、そのまま完成させることになった。

 

「プラモデルを買う」というのは遊びの中でもスタートになる大事なフェーズだが、気分や衝動で買ってしまいがちだ。自分でもそういうことが多い。例えば「好きだから買う」というのがあると思うが、俺の場合は戦車も飛行機も船もそういう目で見たことがないので特に実物に思い入れがないのだ。例えば戦記物で活躍していたり、映画や漫画で大きく取り上げていたりするものを作るのは楽しいだろうか、と思ったりもするがどうにもそうではなさそうである。

 

ただ、何か魅力を感じて選んでいるはずだと思う。「どこに、何を?」というのがまだわかっていない。ただ、買うことだってよく理解できて、説明できる日がくるはずだ。

 

「実物はいつどこで活躍した」

 

それ以外の「買ってもらう理由」ってなんかあるんじゃないかって。

 

 

今日の物販

 

 

考具 考具シリーズ

考具 考具シリーズ

 

 

 

Roden Royal Air Force BE2C 飛行機モデルキット

Roden Royal Air Force BE2C 飛行機モデルキット

  • メディア: おもちゃ&ホビー