Re:11colors

毎週木曜日更新(2023年5月現在)。模型、日常。面白いことあれば他の日も

プラモデルを作る前に読むと良いかもしれない、プラモデルに全然関係のない本

最近プラモデルを作っていますが、戦車にも飛行機にもそこまで興味が無いのでどういう風に色を塗っただとかそういう話が全くできません。

が、組むことを通じて得る経験の話はできていると思います。

 

なので今日はタイトルの通りプラモデルとは関係のない本の話を書いていこうと思います。

 

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影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか/ロバート・B・チャルディーニ

 

この本を読む前と後ではプラモデルを組むときの感情はずいぶんと違ってくると思います。というか買う段階で違ってくると思う。

 

プラモデルを買うこと=組み立てることの場合は、もうプラモデルを買った時点で強烈な一貫性の原則の魔法にかけられます。そして、箱を開け、説明書を読み、組み立て始める。

 

この作業一つ一つが自分が自身に約束してしまう行為で、それが積み重なって気づいたら完成まで進んでしまうということを認識できるかもしれません。車体ができた→転輪ができた→履帯ができた……という具合にあれよあれよとプラモデルを作るということにコミットし続けてしまいます。

そして、そこにストレスを介在させていないことをこちらの記事で解説しているというわけですね。

 

re-11colors.hatenablog.com

 

一貫性の原則はたまに「小さなYESの積み重ねで、NOを言いにくくさせる」というようなテクニックとして扱われますが、プラモデル(ここではとりあえずタミヤのミリタリーミニチュアに絞ります)の説明書に従って作ることというのはまさにそのYESの積み重ねなんですよね。ニッパーでパーツを切ることもYESだし、張り合わせることもYES。当たり前といえば当たり前ですが、それがどんどんどんどん積み重なっていきます。

 

そして、そこで得られる「部分部分が完成していく満足感」は好意の法則に当てはまります。好意を持つとその対象に従いやすくなるという話ですね。

特にタミヤのミリタリーミニチュアはそういった点で左右のパーツの取り違えがないようにダボ穴に工夫があったりと、好意をもたせることに余念がありません。加えて言えば「失敗した!」というのはNOになってしまうので一貫性の原則に反するので、NOを無くす=YESを増やすことにも気を配っています。

 

そんな形で、楽しく作り終わったあとに「あーやっぱりタミヤってすごいなー」なんて思い出すと、権威の影響力にやられてしまいます。タミヤブランドに惚れるってことになってしまいますね。

 

こんな事を言う私自身だって、最初に作ってうまく言ったものが1/48なものだから1/48に好意を持ってしまいますし、次に紹介する本と写っている1/35のキットが古いとは知らず作り、失敗などをしてしまったのもあり「1/35は古いのは少し怖いな」なんて思いますし、さらに言えば1/48は古くても2000年以降のものということを聞けば「細かいこと考えずに購入できるのは1/48だな」なんて思ってしまいます。

それが良いとか悪いとかではなくて「今この瞬間の俺はこの感情によって支配されている」ということをプラモデルを通じて体感することができます。

 

夜遅くまでついつい作っちゃうのも一貫性の原則のせいかもしれません。

模型売場で意気込んで、キットとニッパーとデザインナイフと、ヤスリと……なんてやっていることは自らを一貫性の原則の魔法にかけているのかもしれません。

 

ちなみにこれがわかると「あー、俺今めっちゃ一貫性の原則にとらわれているわー今日は作業やめて寝よう」なんて思ったりもできますし「〇〇さんがこうやってたからこうしないと!っていうのは権威の影響力のせいかな」とか思うことが作ってる途中で出てきます。もちろん反対に「この人がこの程度で良いっていってたからこれでいいんだよね」なんて思うこともあるし、それで満足行く結果が得られれば、今度はその人の発言に好意を持って接することになります。

 

 

影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか

影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか

 

 

 

そして次。

 

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新インナーゲーム (インナーシリーズ)/W.T.ガルウェイ

 

はい。これはメンタルトレーニングの本です。

テニスを通じて、最大のパフォーマンスを発揮するには心と身体を一致させる必要があるというコンセプトのもと、その達成のために必要な事が書かれています。一人の人間を「自分(セルフ1)」と「自身(セルフ2)」に分けて

 

・セルフ1はセルフ2を常に非難したり命令する存在

・セルフ2はいつもセルフ1にいろいろと言われているが、セルフ2の力を引き出せば最大のパフォーマンスが得られる

 

ということで、いかにセルフ1を黙らせるのか?という話が書かれています。

これはプラモデルを作っているときに関していえば「『慎重に慎重に』とか頭の中言ってるときほどパーツを落とす」だとか「失敗するたびに『なんだよもー』とか言ってしまう」ということが結構近いです。

そしてこの作業中のセルフ1が頻繁に出てきてしまうのは、パーツの合いが悪かったり、説明書が不親切だったりする場合だと思います。そこが、インナーゲームの始まりです。

 

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セルフ1を黙らせるためには集中力を高めることが有効になってきますが、それに関しても記載があるので読んでみると面白いです。

このインナーゲームの概念を取り入れると日常生活でも集中力をグッと高めることができるので、プラモデル作りながらメンタルトレーニングをしたいという方は本当に読んでみてください。

 

 

新インナーゲーム (インナーシリーズ)

新インナーゲーム (インナーシリーズ)

 

 

 

「プラモデルは脳に良い」

 

なんて冗談みたいな話がありますが、私は上記の二冊を読んで自分の心理状態を認識しながら作業を進めていくことができるのであればそれは、本当かもしれないと思います。

 

「あーめんどくさいから流し込み接着剤で」と、実際は普通の接着剤で何ら問題のない(しかもめんどくさくない)作業を、セルフ1が命令したが故に、セルフ2はそれを使わなければならないと従い、うっかり多めにつけてしまい、想像よりも広い範囲に広がる体験を味わうことは、インナーゲームの概念を知っていると非常に大きな経験になります。

 

また、この失敗(NO)からくるストレスは一貫性の原則を反対の方向に進めてしまい、作業に悪い影響を及ぼしてしまうことを感じると誰かに失敗をさせてしまうことは良くないのでは?と知ることができます。

最悪、作業をすることを止め、プラモデルを完成させることができなかったとしてもそれを買ったときの気持ちを思い返すと

 

「あー買ったときは『家に帰ったらすぐに作ろう!』なんて気持ちがあったのに、一貫性の原則が崩されると挫折するもんだな」

 

なんて思えるかもしれません。

 

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ただ、それにしたって(私の場合ですが)「やっぱり1/48は気軽に作れていいな。1/35は作るにしても新しいものにしよう」と思えるほどにプラモデルは歴史と製品バリエーションがあるので、とりあえず今回の2冊を読んでみて、好きなプラモを作ってみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

 このキット、説明書を信じていればOKとカッチサー効果で作ってしまうと、最後の人を乗せるときに痛い目にあうのであくまでも箱絵や完成見本のように作りたいという意志を強く持ちましょう。(私の写真の様に後ろの砲塔が説明書と箱絵では向きが違います…。大きい説明書と追加の別紙で向きが違うという。詳しくはたぶんもっとしっかりした記事があると思いますのでここでは言及しませんが、報告です)

大晦日から元日

昨年はいいことがたくさんあって、今年もたくさんあるといいなと思います。

 

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五條天神社って上野の不忍池のそばにある神社にお参りに行きました。

 

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結構大掛かりなお焚き上げ。

 

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見てると、火って怖いなと思う半面、それをコントロールする人はなにか神の使いのような気がしてきます。炊き上げ用の井桁組に水をかけながら燃えすぎないようにしているけど、反対に消えないようにメラメラと燃えている状態をキープ。

 

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五條天神社の1月1日の参拝の目玉は木鷽の授与です。

0時からのスタートで結構並ぶので早めに行って列をなしましょう。

1月25日が休めず、木鷽を家に迎い入れたい人はこのタイミングしかないかも。

そして、ランダムで写真手前の金鷽が入っています。確率に関しては

 

「非常に稀」

 

とのこと。手に入れると「特に吉兆」とされるそうです。

やったね。

 

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そして最後に福餅の引換券を頂いて餅を入手してお参りは終了。

結構いろいろなところの初詣に行きますが、中規模で盛り上がりもあって、ということで五條天神社は良いと思います。

 

それでは2019年もよろしくお願いいたします。

日本海軍 コマツ G40 ブルドーザーで認識する形の由来と大局観

何か専門職についてる方ってどれだけいるのでしょう。

 

そういう特定の分野についてると「ここはこうあるべき」「こうの方が良い」って気づくことってかなりあると思います。

私の場合は前職から「誌面のレイアウト」がそれにあたったり、狂ったように靴を買って絵を描いたりしてるので「靴の絵」とかがそれにあたって、そういう良く見える抑えどころってそれぞれの人が様々な分野でそれを持ってると思います。だから「〇〇風の△△」なんて再現した面白いものが世の中に出回るわけで、それがどれだけ上手いところを抑えて、それ以外のところで遊んでるかが楽しいとか、笑えるとかそういう話になるのかなと思います。


で、記憶スケッチってあるじゃないですか。テレビ番組とかでも「〇〇を描いてください」とかいって描かせて上手い下手で笑ったり驚いたりするやつ。コマツのG40 ブルドーザー はそれに近いような感じがします。
ブルドーザーってなんとなく知ってる。本当になんとなく。絵を描けって言われたら描けない。でも、正解とどこが違うかはわからん。そんな感じ。

 

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だからこの棒がなんなのか、今作ってるもののどっちが前で後ろなのか天地はどうなのか?なんてのは作ってるときはあんまり良くわからない。


「ここがこうなってこう」


と思い込むとなんか変な感じ。無心で組むにしても「ブルドーザー」というイメージが先に走る、けど先に作るのはブルドーザーのシャベル的部分ではなくてボディとかレバーとか細かなもの。なのでなんだかわからん箱ができて、その後にアームとかキャタピラとか作って


「あーはいはい」


ってなって、とかなんとかやって進めてると


「え?これがこう?」


ってなる。推理小説とかサスペンスドラマとかで「犯人が特徴的な服装をしていると、目撃者はそれしか覚えてない」なんて話が出てきますが、ブルドーザーも多分そうです。自分の中のブルドーザー像は全体のシェイプとドーザー的な部分でしかなく、それ以外のものはなんのためにあるのかはわからないから、よくわからない。

 

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これは私がまだまだデザイン事務所に就職したもののデザイナーではなかった頃と似ています。
なんでこの葉っぱのマークが大きいのかは、ぱっと見は見出しを目立たせるためですが、本文が短いため、それをなんとかやりくりしてスペースを保たせるためというのが1つの本音としてあると言われたのを思い出しました。


それを、教わってもないのに理不尽に詰問されその後厳しく教えられたこと、そして同じロジックを適用したら他の上司に「それは逃げ」といわれたということが良い体験かどうかは別として、そういう微妙なやりくり、陣取り合戦が1つの誌面やポスター、広告を構成することを知ったことと、このブルドーザーを作ることはかなり似ている。

 

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そして、商品なのであたりまえですが、優しくそのような、内側から織りなされる造形を教えてくれます。しかも誰がどう見ても客観的に「完成しました!」という形で。そこには「うーん、なんか違うんだよね。ここはこうで、こうで、なんでここはこうしたの!?」なんて話はありません。


コマツのG40ブルドーザー に関しては制作時間がスッゲー短いです。それと、パーツが少ないため「早く作ろう!」という意識を強く持ってもミスが起こりにくいです。そういう点がわかりやすい美点になります。みるみる出来上がるということです。

 

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ファンタスティックな曲線を描くパイプが左右非対称なことに最後のボディとくっつける瞬間に「ミスったか?」と不安を抱きましたが、そんなことはなく「そことそこが合う?」と思わずツッコミを入れたくなるような驚きが待っています。これは多分後先考えずに完成まで突っ走ったが故の感想です。


シミュレートしておけばこんなことはなく、難なく終わると思いますが、そこは簡単故に慎重さよりもスピード感を持って作ると楽しいと思います。


「待てよここは慎重に……」とストップをかける自分を抑えて「このまま最後まで走り抜ける!」とボロボロになった自転車を無茶な身体の使い方で無理やり漕いでゴールできるかどうか?みたいな、こち亀のハチャメチャな自転車レースの回みたいな気持ちで行ってみてはどうでしょうか。

 

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簡単そうなものを、事務的にその都度確認せずに、感覚で確認箇所を嗅ぎ取りながら進めることは仕事のスピード感や大局観を得ることに繋がるかもしれません。


スピード重視で作ると私の好きな本の「脳の右側で描く」の"群島を、よそから来た航海士は海図を見て、詳細なルートを作成して進むが、現地の人間はそういったことをせず、自分がいる位置を島と自分の船の距離感で見て進めていく"なんて文章が記されていますが、その後者の感覚に非常に近い体験ができます。

 

 

タミヤ 1/48 ミリタリーミニチュアシリーズ No.65 日本海軍 コマツ G40 ブルドーザー プラモデル 32565

タミヤ 1/48 ミリタリーミニチュアシリーズ No.65 日本海軍 コマツ G40 ブルドーザー プラモデル 32565

 

 

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