Re:11colors

毎週木曜日更新(2023年5月現在)。模型、日常。面白いことあれば他の日も

ロードスターで遊べ

俺は車に乗るならオープンカーだとずっと思ってる。

 

車種はなんだろう。免許ないし、方向音痴だし、乗らないからな……なんてこの話は幕を閉じない。

俺の人生の書である「帯をギュッとね!」と「モンキーターン」。そして「とめはね!」の作者である河合克敏氏が描いたケータハムスーパーセブンという車が最高に好きだ。

 

これは河合克敏氏が漫画に描いてくれたから知ることができた車であるし、しかも出てくる場面が、主人公のライバル、洞口雄大が「父さんがコレしか貸してくれなかった」と青島優子とデートをするときに乗ってくるというものである。

 

このときのエピソードは今も好きだ。

青島優子がこの車を二人乗りで無駄がなくて競艇用のボートみたいだという話とか、この車で洞口父は奥さんとデートしたかったに違いないとかそういう話をする。そのデートのあとに本作の山場の一つ「スーパーキャビテーションペラ」の秘密を優子に話すところとか、その後、勝利に固執し続けて、多くのものを失う洞口の姿も好きだ。

 

だから、俺はなんというかこの「ケータハムスーパーセブン」という車だけは中学校の頃からずっと好きだ。かっこいいし、そのかっこよさを河合克敏さんに漫画を通じて教えてもらったから(書いていて涙が出てきたのはなぜだろう)。

 

ただ、こういうときに俺が「俺らしいな」って思うことがあって、それは「河合克敏ケータハムスーパーセブンと俺のケータハムスーパーセブンは違う」って思ってしまうこと。俺は俺のそういう物を見つけないと、河合克敏が漫画にわざわざ登場させるような、同等の気持ちになれないと思ってしまう。そんな風に思っていたのだが、コレである。

 


1/24 マツダ ロードスター発売記念 スペシャルトークショー

 

この動画を見ているとマツダロードスターがどのように作られているのかがよく分かる。無駄のないデザインをホワイトボードに描いて示す、中山氏。クレイモデリストとしてのせめぎあいを語る淺野氏。そして、これは「こだわっている」と少し触れられるだけであったが実は鍵な気がするLEDのフロントライト。「デザインを実現させる技術」をこれほどまでに直感的にわからせるものはないだろう。その前の絵で可動式のフロントライトに触れているが、この機構だってLEDがあれば話は違っていたのではなかろうか。

 

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さて、こんな感じで車のことをよく知らずにロードスターのデザインについての話を聞き、自分で考えを巡らせると

 

「あ、これが俺にとってのケータハムスーパーセブンだ」

 

と納得します。そして、そのまま作る。

 

ボディの色はタミヤのブルーで筆塗り。プレミアムトップコートの光沢仕上げ。

シャーシなどの黒の部分はシタデルカラーの黒で塗った。凹凸に富んだ面はシタデルカラーが入っていく感じやムラの表情がキレイだった。

 

この車は、なんとも言えない、なんですかね。なんだろう。

 

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難しいんだけど、少しグラフィカルに作るというか、少しおしゃれに作ろうと思っても良いような気がします。その辺をなんて言ったら良いのかわからないんですけど、例えばボディとホイールの色を同じにしてしまうだとか、幌の色をぶっ飛んだ色にしちゃうとか。何故かそういうのがとても良い。

 

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俺にとってのロードスターは多分、河合克敏が作中で「お父さん、お母さんとデートしたかったんだと思う」だとか「だって、二人乗りだもん」とかそういう話をわざわざ描いたのを読んだという気持ちが凄い乗っかってしまってるんだと思う。

二人で楽しく乗る車。そこには渋滞もないし、排気ガスの匂いもない。

 

「気持ちいいねー」

「え??聞こえない」

「気!持!ち!い!い!ね!」

「ああー良いでしょこの幌のオレンジ。ニクラウストロクスラーのポスターからイメージをー」

 

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ボディが白い分、大変だけど、それを超える「俺のカッコいい」が全力で乗ります。

夢の世界をドライブしましょう。

 

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大きさもナイスです。

 

 

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とても良い作例もあって「なんとかなりそうだな」と背中を押してくれるのはありがたい。

 

 

 

 

 

 

 

完璧の悪魔とフェラーリ

「無駄のない形」などということをたまに口にするがそれが本当にそうなのかはその時の思いつきで言っていることがほとんどだったり、その場ではそうであったりしてあとで振り返るとそうでもないことがあったりして無駄のない形ってなんだろうかという気持ちになる。

 

そう思うとこの言葉あんまり使えなかったりして、使用方法に注意なフレーズだよなと思ったりしてしまう。

 

タミヤフェラーリが最終出荷。あとはあるだけ。なんていう噂を耳にしたのでせっかくだからどれか一個作ろうと思ったがこういった複雑な曲線と技術的になにか高度なアレをして、街中を走る車とは明らかに一線を画すフォルムは非常に魅力的でクラっと頭に刺激を与えてくれる。「ああ、これ完璧に作りたいな」と。

 

定番の赤を部屋にポンと置く。派手か。でも黄色を置くと間違いなく赤を欲しくなるだろう、というかどのフェラーリを作ろうか。とめちゃくちゃ悩んだが、結果的にフェラーリ360スパイダーに落ち着いた。コイツは珍しくメタリックグレーなのと、モデナ360の微妙にピンとこないフォルムがオープンカーになることで随分と変わったからだ。

 

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作ってみると、無駄のない形や洗練されたフォルムというよりも「今まで気になったどの車とも様子が違う」という面白さに負けてしまい、そのまま「完璧に作りたい」という悪魔に取り憑かれた。そしてトップコートを失敗すること2回。ボディパーツをミスることは完璧に作る以前の問題なので大人の財力に任せてリトライを続けて、3回目も「あまり納得は行かないがとりあえず良いか」というような仕上がりでそのまま完成まで進めた。

 

3回目でそう思ったのは、ちょうど、トップコートを乾燥させている間に暇だから以前作ったポルシェ934RSRイェーガーマイスターのデカールや吹っ飛んでなくしてしまったパーツを部品請求したものをくっつけて仕上げ直したりしたときだった。

 

 

「俺、いつからプラモデル作るの上手くなったんだろう」

 

上手くなったのかどうか、というのを成果物を指標に考えると上手くなっていると思うが、よくよく考えると「作り慣れてきた」だけなのかもしれないなと思ったりもした。

 

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最初に作ったカーモデルのイェーガーマイスターを触っていると異様に慎重になりながら作って、トランプでピラミッドを作るようなバランスの上で作っていた記憶が蘇る。あのときは、というかいつもは「できないことは来世」と思っていたし、それでよかったのに。ただ、これは「納得の行く感じ!」とルノーアルピーヌA110で体験したことがあるので「できたはずのことができない」という微妙な違いがあるのだけれども、あの頃の俺はこんなにも取り憑かれて「完璧!完璧!」とやっていたかというとそうではなかった。

 

まぁ、言葉を選ばずに言えば「フェラーリのプラモを置く俺」みたいなのに酔ってたんだろうな。それくらいに車が好きになった。飲めなかったコーヒーが飲めるあの感じ。それは違うか。

 

 

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そんな形で作り進め、完成させたスパイダーはやっぱり、というかこれを買わずして何を買うと思えるような見た目をしていて、ボディをシャーシに乗せたときの前後のラインが最高に美しい「これは無駄がないぞ」と直感的に感じてしまうほどだ。

 

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また、横から見た姿はもちろんだが正面から見たときに両目が焦点をギュッと合わせたあとに輪郭がはっきりしてくる低く、きれいに収まった形は惚れ惚れする。

  赤や黄色を選ばなかった理由は色々あるが、究極的には「膨張色ではないこの色は車の形をはっきりとシンプルに目で楽しむことができる」。これだ。

 

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部屋においても主張しすぎず、ソリッドな塊がボコッとある感じ。

「お!フェラーリ」というよりも「ん?フェラーリ?」という色でなく形で認識させるので作って程よい感じで作ってみてはいかがでしょう。

 

 

 

ミリタリーミニチュアの魅力はその都度違う

ミリタリーミニチュアってフナかなにかなのでしょうか。

最近、車が超楽しくて車ばっかり作ってたらフェラーリの360スパイダーのボディの仕上げを失敗してめちゃくちゃしょんぼりしてミリタリーミニチュアに泣きながら帰ったんですよ。もうカーモデルなんて怖くて作れない!なんて。

 

それでも模型は作るの楽しいから、作りたいんすよ。作りたい。

でも今は失敗はしたくない。失敗をしない方法は超簡単で、できることしかやらない。

光沢を拭こうとしたら思ったより湿度があってミスったりとかマジで馬鹿だなって思うけど、でも何度か成功しているとできるもんだと思ってしまう。失敗して「怖いな」ってなると初めて「やるかやらないか」を考え出すんだけど、大抵は「やる」んですよね。

フェラーリ、実は2回異なるトラブルでミスっているんで3回めは「やらない」になるのかどうかはわからんのですが、それにしても何をするにしても「失敗する可能性はあるが、成功したときの旨味は知っている」という最初の頃とはずいぶん違う心持ちになっているのがニクいですね。

 

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その点ミリタリーミニチュアはなんか「塗らなくてもいいかー」って思ったりしてしまうので不思議です。理由はいくつかあるんだけど、成型色が面白いなとか、マシンを塗るのと人間を塗るのは異なる技術が必要そうな感じがバリバリするので手を出さないとか。ね。あとは人が生み出す魅力が最高なわけですよ。

 

まぁ、何にしても色を塗らず切って貼って立体を生み出すと様になるこの優しさは良いなぁって思います。作るのも比較的楽ですし。

車が最高に楽しい理由の中に「履帯転輪を作らなくて良い」というのがあったりしてそういうのがまるっきりない軍用車両はちょうど具合が良い。

 

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何を作ろうかなと思ってたけどフォードgpaにしました。なぜって実質オープンカーという。つまりフェラーリ360スパイダーと同じ。あと奥さんが実家から昔ルーブル美術館で手に入れたカバの置物を持ってきたのでそいつをエスコートする何かがあると良いなと思うと、この直感的な水陸両用なルックスがぴったりでした。

 

作るのは、結構簡単です。最初のボートの底面に車としてのパーツを組み込む過程が一瞬謎ですが、あれはああ書くしかないなと上手くハマったときに思うので大丈夫。あとは本当に簡単に進む。積載物や装備が少なかったり、細かなものが少ないのが大きい。

 

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そして、仲良さそうな三人組が良いですね。なんか運転する人と、助手席の兄貴と、後ろでバリバリに警戒心を高めているボス。なんて思わず関係性が見えてくる感じ。

僕は少しおもちゃっぽくしたかったので、説明書の指示を無視して星を3つ並べたり、他の余ったデカールを貼って車体番号を大々的につけてしまったりと遊んでいるので余計にこの三人が仲良さそうで。

 

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あとはもうさっきも書いたけど、この唯一無二の車両のルックスでしょう。舟に車輪。もちろん細かいところを見ればデザイン的な面白さはありますが舟に車輪です。水面と陸上の2つを直感的にカバーしてくれるので部屋にあるだいたいのものとマッチするという。オープンカーな見た目が人の存在感をバッチリ見せてくれています。

車メッチャたのしーってやってるからこその「実質オープンカー」。

ミリタリーミニチュアの奥深さというか、豊富かつ魅力的なラインナップに再びガツンとやられました。

 

なんか不思議な動物の置物のそばに置くと動物の特別管理区の管理者みたいでいいですね。