「無駄のない形」などということをたまに口にするがそれが本当にそうなのかはその時の思いつきで言っていることがほとんどだったり、その場ではそうであったりしてあとで振り返るとそうでもないことがあったりして無駄のない形ってなんだろうかという気持ちになる。
そう思うとこの言葉あんまり使えなかったりして、使用方法に注意なフレーズだよなと思ったりしてしまう。
タミヤのフェラーリが最終出荷。あとはあるだけ。なんていう噂を耳にしたのでせっかくだからどれか一個作ろうと思ったがこういった複雑な曲線と技術的になにか高度なアレをして、街中を走る車とは明らかに一線を画すフォルムは非常に魅力的でクラっと頭に刺激を与えてくれる。「ああ、これ完璧に作りたいな」と。
定番の赤を部屋にポンと置く。派手か。でも黄色を置くと間違いなく赤を欲しくなるだろう、というかどのフェラーリを作ろうか。とめちゃくちゃ悩んだが、結果的にフェラーリ360スパイダーに落ち着いた。コイツは珍しくメタリックグレーなのと、モデナ360の微妙にピンとこないフォルムがオープンカーになることで随分と変わったからだ。
作ってみると、無駄のない形や洗練されたフォルムというよりも「今まで気になったどの車とも様子が違う」という面白さに負けてしまい、そのまま「完璧に作りたい」という悪魔に取り憑かれた。そしてトップコートを失敗すること2回。ボディパーツをミスることは完璧に作る以前の問題なので大人の財力に任せてリトライを続けて、3回目も「あまり納得は行かないがとりあえず良いか」というような仕上がりでそのまま完成まで進めた。
3回目でそう思ったのは、ちょうど、トップコートを乾燥させている間に暇だから以前作ったポルシェ934RSRイェーガーマイスターのデカールや吹っ飛んでなくしてしまったパーツを部品請求したものをくっつけて仕上げ直したりしたときだった。
「俺、いつからプラモデル作るの上手くなったんだろう」
上手くなったのかどうか、というのを成果物を指標に考えると上手くなっていると思うが、よくよく考えると「作り慣れてきた」だけなのかもしれないなと思ったりもした。
最初に作ったカーモデルのイェーガーマイスターを触っていると異様に慎重になりながら作って、トランプでピラミッドを作るようなバランスの上で作っていた記憶が蘇る。あのときは、というかいつもは「できないことは来世」と思っていたし、それでよかったのに。ただ、これは「納得の行く感じ!」とルノーアルピーヌA110で体験したことがあるので「できたはずのことができない」という微妙な違いがあるのだけれども、あの頃の俺はこんなにも取り憑かれて「完璧!完璧!」とやっていたかというとそうではなかった。
まぁ、言葉を選ばずに言えば「フェラーリのプラモを置く俺」みたいなのに酔ってたんだろうな。それくらいに車が好きになった。飲めなかったコーヒーが飲めるあの感じ。それは違うか。
そんな形で作り進め、完成させたスパイダーはやっぱり、というかこれを買わずして何を買うと思えるような見た目をしていて、ボディをシャーシに乗せたときの前後のラインが最高に美しい「これは無駄がないぞ」と直感的に感じてしまうほどだ。
また、横から見た姿はもちろんだが正面から見たときに両目が焦点をギュッと合わせたあとに輪郭がはっきりしてくる低く、きれいに収まった形は惚れ惚れする。
赤や黄色を選ばなかった理由は色々あるが、究極的には「膨張色ではないこの色は車の形をはっきりとシンプルに目で楽しむことができる」。これだ。
部屋においても主張しすぎず、ソリッドな塊がボコッとある感じ。
「お!フェラーリ」というよりも「ん?フェラーリ?」という色でなく形で認識させるので作って程よい感じで作ってみてはいかがでしょう。

タミヤ 1/24 スポーツカーシリーズ No.307 フェラーリ 360 スパイダー プラモデル 24307
- 出版社/メーカー: タミヤ(TAMIYA)
- 発売日: 2008/02/16
- メディア: おもちゃ&ホビー
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