Re:11colors

毎週木曜日更新(2023年5月現在)。模型、日常。面白いことあれば他の日も

割れた身体を貼り合わせれば-PLAMAX Naked Angel 1/20 希崎ジェシカ-

 

 

写真のトリミングってあるじゃないですか。必要な部分だけ切り出す作業のことです。もしかすると、ネイキッドエンジェルのような人の身体をプラモデルにした製品ってパーツになる段階で、そういうことをしているんじゃないかって思うんです。

 

なにせ魅力的なポーズをしている人間を分割してしまっている。なので、自然とパーツ一つ一つに関心が行ってしまう。魅力的なポーズというのは、身体が曲がったり、ひねったりするようなポーズ。人間のプラモデルというのは、足を曲げれば太ももの裏が、ふくらはぎに押されてむにゅっとなることを教えてくれる。膝立ちになれば、前に倒れてしまわないように背すじがグッと伸びる。「部分的に身体が動く」ということはなく、どこかが動けば全体がそれを助けるようにバランスを取る。

 

 

ネイキッドエンジェルシリーズはそんな部分から全体へのバランスの波及が、部品が全てくっつくことを通して理解できるものがあると思う。アンバランスな脚やグイッと曲がった腰が組み合わさると、しっかりと安定感した形になる。これは、プラモデルならではの面白さだと思う。

 

プラモデルを通じて、一番身近な人間という存在の面白さを知る。これ自体がかなり不思議な状況なんだけど、じゃあプラモデルのように人間の体を注意深く観察することがあったかというと「手に取るように」というのはなかなか難しい。肩から肘までの距離や、頭と肩幅のバランス、肋骨がどの辺にあるのか。そういうことを知りたくなることはある。それに、手の形や大きさに大人っぽさや幼さを感じることはあったとしても、観察対象と観察者の関係になるにはデッサンやクロッキーでモデルと対話するしかない。

 



 

他者との会話のない中で、人間を生物的に観察する機会というのはなかなか無い。それに、どうしたって相手の気持ちを考えてしまうとも思う。

 

そんなことを考えながら「とりあえずこれで」とネイキッドエンジェルの1/20希崎ジェシカを組み立てて置いておいたのは半年くらい前。先日急に「ああ、今なら塗れそうだな」と思い手をつけたらものの2時間くらいで塗り終えてしまった。いざ塗り始めると急に人間味を帯びてきてびっくりした。衝動的な探究心で一気に完成まで持っていくためのガイドは3Dスキャンを拠り所にした説得力のある造形だ。陰影をつけるのは思った以上に楽だった。陰影をつけることでられる見た目の仕上がりの良さを加味しても、やってみる価値は十分にある。

 

それにしても誰が言ったか「フィギュアの顔は作業者好みの顔になる」というのは本当のようで、本人に似せようと思わなかったため、希崎ジェシカにはならなかった。眉毛の角度とか、アイメイクの仕方に「自分の好き」が出てしまうのは少し恥ずかしいですね。

 

今日の物販

 

 

 

 

 

 

他人の生活時間にお邪魔した後に、フィギュアを仕上げる-内藤あんもさんのマックイーン-

 

どの時間も、誰かが活動している。それは普段と違う日常を自ら選んで、活動することで確認することができる。

 

日曜日の朝は早起きして東京駅から出る都04のバスで、豊海ふ頭へ海鮮丼を食べに行った。朝8時ころに店に到着すると、ちらほら人がいて驚いた。観光に来たっぽい、大学生くらいの年齢の男女や、現場仕事を終えた男性などで、明らかに自分と違う生活をして今日ここにいるということがわかる。

 

その後は自転車乗りのライダーの二人組が数組入ってきて、これはこれで「早朝から自転車に乗っている人がいるのだな」という感じで「自分が普段寝ている休日の朝は、誰かにとっては主な活動時間である」ということを知ることができて、面白かった。

 

 

「朝早くても、飯を食べれば目は覚めるかな」と思ったらそんなことはなく、微妙に眠い。それに朝でも暑かったので頭の中はぼんやりしている。

 

次の目的地はどこにしようかなと思うと、たいていは11時からのオープンという感じで、若干手詰まりしてしまった。とりあえず、東京駅に戻ろうとバスに乗りながら、丸善の営業時間を調べると、なんと9時からやっていた。なので、丸善へ向かい、買い忘れていた本を購入し、店内のカフェで時間をつぶす。

 

11時オープンで、ここは行きたいと思っていたのが鶯谷の萩の湯だ。11時を少し回った時間に到着すると、すでに他のお客さんが結構いる。彼らはどんな人なのかというと、ランナーやライダーで「朝のうちに運動する」
という感じで、私と異なる時間を過ごしていた。

 

 

風呂に入るとさすがに目が覚めてきて、それと同時に頭もさえてきた。まだ午前中を少し回ったころに帰宅した。一日のスタートを早くすると当たり前だが、残り時間が増える。

 

このまま寝てしまってもよかったが、時間もあるのでワンフェスで買った内藤あんもさんが手がけた、ウマ娘 プリティダービーのメジロマックイーンのフィギュアを塗ることにした。うまい飯を食べ、良い風呂に入ったので頭がクリアになっているのか、いつもより視野が広い。

 

なので、普段とは違う塗装方法で全体を仕上げることができた。全体的にぼんやりと仕上げたので、フリーハンドのラインのヨレも許される感じだ。そして、それを「許容値まで持っていく」という観点では、描きはじめと終わりの、細くなってしまっている部分を、キュッと手直しすれば良いことも分かった。

 

 

朝早く起きて、誰かが生活している時間にちょっとお邪魔して、いつもと違う日常を過ごす。

 

そうすることで「あー、人っていろんな時間で生きているんだな」という、当たり前のことを身をもって知ることができた。いつもと違うことをしたからか、脳と手の接続の選択肢が増えたのだろう。「考えることと、行動がいつもと違う」という現象の痕跡としてメジロマックイーンが出来上がったのが楽しかった。

 

模型趣味は、何かを作り出しているような感覚になれるのが楽しいなとつくづく思う。実際には、すでに用意されたものに手を加えているというだけでもある。とはいうものの、絵を描く人が早朝の光をとらえたいと思い、朝早くからスケッチするような感覚を、模型の塗装を通じて楽しめたのは、本当に良かった。

 

-海鮮丼を食べたところ-

マグロ卸のマグロ丼の店(トヨミフィッシャリーズテラスは昔の名前みたいです)

suzuyoshi.info

 

-今日の物販-

 

 

 

 

ワンフェスからプラモ売り場まで。それと更新日について

 

7月24日の日曜日、ワンダーフェスティバルに初めて参加した。夏のワンフェス。というやつだ。

 

このイベントは個人出店で「版権もの」と呼ばれる二次創作的な造形物と、オリジナルの造形物の即売会がメインで、いわゆるガレージキットと呼ばれるものが多く販売される。それに加えて「企業ブース」で、文字通り企業が出店して新作の発表や、先行販売などの物販を行う。あとコスプレをされる方もいる。

 

参加して思ったことは個人出店のものは、どれもこれも「作家が作ったもの」という様子がはっきりと伝わるということ。これは「確かにそうだろうな」と自分も思っていたが、それよりも印象深く受け止めるようなことだった。それくらい「ここでしか買えない」という雰囲気が会場内で醸成されてた。

 

私は世の中に自分みたいな人間が結構いると思っていたので「自分が欲しいものが全部売り切れていたらどうしよう」と思っていた。ただ、当日はそんなことは一切なく「あれ?」という感じで肩透かしを食らう形になった。こうして書いてみると「確かに欲しいけど、そこまで欲しい人はどれだけいるのか?」という形で「ふるいにかけられて、会場にいるのが私だった」のだと思う。

 


買ったものはどれもよかった。リサセッズさんのpanpanya先生の女の子とレオナルドと、ひつじっこ。内藤あんもさんのウマ娘プリティダービーのメジロマックイーンとオリジナルの戦車兵。ネコワークスさんの、ルノーR8のデフォルメキットなどなど。他にもその場で買いたくなるものはいろいろあったけど、我慢した。

 

我慢した理由は金銭的な面もあるにはあるけど「果たしてこれを完成させて部屋に置いたときに俺が満足するだろうか?」というものだった。あれもこれも完成させられるような腕前と道具がそろってはいるが、それを部屋に置きたいのかというと話は別ということに気づいたというか。

 

そう思うと買ったものはどれも「これは部屋に置いても良いな」と思うものだけ。といってもやっぱり全部を一堂に飾ると大変だと思うので、しまったり出したりというのは大事だと思う。そういうところに、私が考える物との付き合い方があるのだろう。表層では反射で買い物をしたいものの奥底では「好きなものに囲まれつつもすっきりとした空間」を求めている。

 

 

こういう思考パターンって「手元に残る金とモノ」という意味だと一番損をするタイプだ。買っては手放し買っては手放しを繰り返すので金もモノものもそれほど残らない。そういう意味だと、いつでも、どこでも、誰でも買えるプラモデルなんかは、やっぱりインスタントで、気軽なので、それはそれで良いなとも思ったりもした。手放してもまた買えるし、良いなと思ったら真似もできる。まぁ、それでも金は残らないんだけど。

 

とはいうものの小回りが利くのは個人という感じなので「こ、こんなものが立体物に!!」というニッチさだったり、ニッチだからこその作家の方と自分が心の中で握手する感じも楽しい。そういえば「欲しいものを手に入れるためな地球の裏側まで探せ」と友人が以前言っていた。欲しいもののありかが、即売会なのか、街のプラモ売り場なのかってだけで、とりあえず欲しいものは買うんだろうな。これからも。

 

※しばらく月曜更新を試してみます。よろしくお願いします。

 

今週の物販