自分には一生縁のない靴だと思っていたが手に入った。
このブランドの厄介なところはいろいろあるが、端的に言ってしまえば「WESTONフィッティング」というワードに尽きると思う。そしてそれはなんとなく外野から眺めているだけだとそればかりが議題に上がるという事態を生み出している様な気がする。
履いてみるとどうだろうか。
採用されている11ラストに関して言えば足が比較的上手く収まるせいもあり、あまり痛みは感じない。
が、痛い。理由は簡単だ。足の形が一日の中で変わっているからだ。反面、靴の形が変わらない。だから痛い。なので痛い部分は時間で変わる。小指が痛いかと思ったら拇指球周辺が痛くなる。外踏まずが痛くなる。それに合わせて靴は目に見えない程度に(それは要するに足の変形に靴が負けないということだ)グイっグイっと変形する。
正直な話、ここの説明が難しい。形が変わるけど見た目には変わらない(普通の靴でも判別がつくほどかわることは稀だが)。これは靴が硬いからだ。靴が硬いなら形が変わらないのでは?というと変わる。変わりすぎない程度に変わるという線が妥当だろうか。
さらに言えば「底付けの行程で接着剤をほとんど使っていないからある程度フレキシブルなのだ」といっても良いか。加えていえばラストにしっかり足が収まることを良しとしているので、その辺とのバランスもある。
口に出して話せばある程度説明をすることは出来るが、文章にすると難しい。
強いていうなら吊り込みの強さがここでいう「靴の硬さ」に大きく寄与している。という印象を受ける(なぜならアッパーの革自体は柔らかくキメが細やかだから)。
しかし何日か履いていると次第に痛い部分とが無くなってくる。
靴が足に合ってくるのだ。この独特の履き心地の良さには間違いなく「靴の硬さ」が関係している。独特の履き心地だ。調度良いところで収まっているし固定されている感じがする。普通の靴ではこうはならない。馴染んで履きやすくはなるが、この「固定感」はほとんど生まれないのだ。普通の靴を馴染むと「弾力のあるクッション」のような感覚を覚えるとしたら、J.M.WESTONは程よく身体に馴染んだ固めの背もたれの椅子に座っているような感覚に近い。