「偉大なる凡作」なんて言葉があるが、Church’sのSHANNONをはじめとするプレーントゥダービーは「これだ!」という名作を探すのが結構難しい。
この形の靴って世の中にたくさん溢れていて、高いのも安いのもいっぱいあるのだけど、SHANNONは型崩れせずに見た目の変化もほとんどないという点に優位性がある。そもそもプラダグループ傘下になる前のChurch’sの靴のデザインは、保守的なデザインという風に語られることが多い。
しかし、2メートル先からもわかる、他の靴よりもやや大きく開けられたブローギングをもつディプロマットやチェットウインドや、「サスフィシャス」と形容されたコンサルの一部だけダブルステッチになった甲部分の縫い合わせなどは、それがChurch’sの靴であると認識するには十分すぎる個性だ。
SHANNONの特徴はポリッシュドバインダーカーフ(旧ブックバインダーカーフ)という素材を贅沢に使った、つるんとした表面だろう。継ぎのないデザインは、ワークシューズともドレスシューズとも取れる個性的なデザインだ。
このポリッシュドバインダーカーフには常に「エイジングするのかどうか」という話題がつきまとう。エイジングとは「持ち主が許せる経年劣化」だと思っているが、10年近く履いてわかるのは、その変わらぬ見た目の清々しさである。これほどまでに見た目が変わらない素材があるだろうか。風合いも出ず、見すぼらしくもならない。刻まれるのはシワとキズだけだ。
せっかくなのでバインダーカーフに関して少し触れておくと、現行の、ポリッシュドバインダーカーフは非常に上質なガラスレザーといった様子。これ旧Church’s、AlanMcAfeeと時代とラインが変わってくると徐々にスムースレザーに近くなる。AlanMcAfeeのバインダーカーフは非常に柔らかい。
10年履いてようやくオールソール。修理の機会が遅くなりがちなのは革靴をたくさん持っている人間の特長で「革靴は一生ものである」というのは、実はたくさんの革靴を持っていて履く機会が少ないからなのではと思う。
修理面においてSHANNONの良いところは、ザクザクと大きめな運針でキレイに縫われているところだ。細かすぎないのでだし縫いがガタガタしないというか。ダブルソールは返りと呼ばれる、靴の屈曲性がすこぶる硬い。なので、オールソールのついでにつま先ラバーをオーダーした。
もう10年履ければ、十分活躍したと言えるだろう。