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毎週木曜日更新(2023年5月現在)。模型、日常。面白いことあれば他の日も

適切な逸脱は、今の自分を超えていく。「オシムの遺産」を読んで

 

「なんで仲間を助けないんだ!」と1対1でサッカーの練習をしている様子を見ている選手に向けて、声がかかる。

 

すると、2対1になる。それだと人數的に不利だからと2対2になる。そうして、どんどん人が増えていく。これはサッカー日本代表監督をつとめたイビチャ・オシムさんについて書かれた「オシムの遺産」という本に出てくる話だ。

 

彼が行う練習はとにかく複雑で、僕らみたいにオンタイムでオシムさんの仕事を知っている世代だと「複数の色のビブスを付けた練習」とか「ゴールが多い練習」とかそういう話を聞いたことがある人もいると思う。

 



本の中には、オシムさんの練習を体感し、それを研究をした人の話があり、そこには「適切な逸脱」という段階があると書かれている。

 

「適切な逸脱」とは例えば、1対1の練習をしているところでどちらかの味方として誰かが参加することを指す。練習は試合に勝つために行われる。なので、加勢することは勝つためには「適切」であり、1対1の練習という状況からは「逸脱」しているというわけだ。

 

 

 

 

 

適切な逸脱が生むものは、サッカーの場合は勝利だ。その手前に選手たちの上達がある。

 

ただ、例えば足が早くなるとか、テクニックがうまくなるとかそういう話ではなさそう。サッカー選手としてのプレイ全般に影響を及ぼすというか。なのでイメージとしては上達というよりは進化に近いと思う。考え方が変わるというか。

 

では、それが楽しいのか。本の中では日本代表合宿に招集された選手が練習の凄さや「この人についていけば上達すると思った」というような話が書いてある。なので、きっと苦労はするが楽しいのだろう。これはおそらく「進化する喜び」なのではないか。

 

進化の先が勝利なのはサッカーだからであって、得られる喜びはなんでも良い。進化した結果が勝利ではなくても構わないはずだ。「勝たなくても楽しければ良い」なんてことも、この話の流れですぐに思いつきそうだ。ただ、もう一歩進んだ「楽しく勝つ」なんのも全然ある。「楽しく」が「自由に」に変わってもいいし「勝つ」が「満足する」になっても良い。

 

 

適切な逸脱はときに理不尽だ。1対1の練習をしているところでの「助けないんだ!」は明らかにそうだ。とはいうものの、その先の一人増え、二人増え……といった練習の充実度は想像に難くない。全員が自発的に動き回る姿が目に浮かぶ。だから日本代表合宿に参加して、凄いと思った人がいるのだろう。

 

適切な逸脱は、自律的な行動によって起こされ、既存のルールに導かれない責任感に導かれた行動ともいえる。その先の進化は、きっと周囲や今の自分の想像を超えるものだ。誰しもの想像を越えたクリエイティビティは適切な逸脱の先にある。

 

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