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毎週木曜日更新(2023年5月現在)。模型、日常。面白いことあれば他の日も

勉強のご褒美は、 一生手に入らないと思ってたもの

 

店員時代に経験したことって人生においてかなり衝撃だったので、今の会社でもその話をすることが多い。接客業の面白いところは誰でもできるところだ。正確に言うと、誰でも出来るように見えるところだ。そして、そこに勉強の余地がかなりある。なので、話し方や、チーム作りの勉強をして良い店を作った。

 

ただ、他人からするとこの手の勉強に価値があると思われることはほとんどない。なので、店員時代の話って今の会社ではほとんど確実に軽んじられる。

 

年度末に、いきなり立ち上がったプロジェクトを任されているときに、あまりにも大変だったので「店長やっているころよりも状況がひどい」と思わず仲の良い先輩に言ってしまった。そうしたら、先輩は「いや、うまくいってるよ。店長時代の経験にたっぷり利息が付いて返ってきている」と言ってくれた。その後はプロジェクトに関する打合せがあるときには必ずその先輩と反省会をしながら帰った。

 

帰り道では「会議を進めるのが上手い」「対話が上手い」ということをいろいろな角度から説明してくれて、利息がどういったものなのかを教えてくれた。

 

 

僕がプロジェクトを進めていくうちに、今まで店員時代の話や経験を軽んじていた人も気づき始めた。「こいつ、会議上手いな」とか「最初の数回はチームビルディングをやっていたのか」とか。そこで改めて「店長やっていたんだよね」と声を掛けられるようになった。

 

ここが難しいところだなとも思っている。何せ、接客業を「誰でもできるように見えている」といったように、会議も、対話もチームビルディングも、できているように見えることだからだ。俺たちは、日ごろ会話をするし、気づいたら仲のいい集まりが出来上がっている。何かを教えることだってある。どれもできていることだ。なので、勘と経験でなんとかなると、どこかで信じているのだと思う。

 

僕だって、経験したことと勉強したことがある。それに勉強した後に経験したこともある。なので、やっぱり「経験に頼る割合」は常に多い。違いは、そこに勉強したものがあるかないかだ。会議だとか対話だとかって行為は基本的に人と人とのやり取りなので、うまくいかない理由の一つに相性がある。なので、たいていのことは相性のせいにできる。「勉強しなかったからだ」とはまずならないし、「失敗したから勉強しよう」とはもっとならない。だから、こういう話はあんまり人にはしない。教えても、やる人なんてほとんどいない。

 

 

今日、同じ部署のおじさんが、手をブンブンと振って俺を招いた。このおじさんとは、何度か仕事をしたことがあってそのたびに「教えるのが上手い」「話すのがうまい」といわれる。結構すごい経歴の人のわりに、しがない店員だった俺と部署が違う頃からも一緒に仕事をする機会が多い人だ。

 

おじさんのそばに行くと「これあげる!」といってポケットからジャラジャラした何かを取り出して俺の手によこした。手を広げてみるとアンティークのTudorだった。ブレスも、竜頭も、裏面の刻印もROLEXだった。1960年代〜70年代のものらしい。何が起きたのかわからず、まさに面食らった形になった。

 

落ち着いてから話を聞くと「いつもお世話になっているからだよ」と教えてくれた。大きな利息が、また返ってきてくれた。一生手に入らんだろうと思っていたものが、ある日突然手に入ったのだった。

 

 

 

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