Re:11colors

毎週木曜日更新(2023年5月現在)。模型、日常。面白いことあれば他の日も

今まで会った人を思い出すのが日常劇の面白さかも ♯QのセルフカバーVol.1を見てきた

 

頑固かつ急に拗ねるムーブにかつて付き合っていた人のことを思い出し、マスクの下で顔を引きつらせた。♯Qという演劇をやるチームの「セルフカバーVol.1」という芝居を見ていたら急に俺に流れた知らない感情を注入される不思議な時間。

 

芝居を見るといっても俺は芝居の心得は何もないし、映画なんかも見ない。なんならドラマも見ないので「人が誰かを演じること」に対して何かを評する術がない。なので最初に観劇に誘われたときも俺は芝居を見ても楽しめないだろうなという気持ちだった。ところが、日常劇と呼ばれるようなものは素直に楽しめる良さがあることに気づいた。素直に楽しむというのは「よくわからないけど面白い」と感じて、笑ったりシュンとしたりすることだ。もちろん顔を引きつらせても良い。

 

 

3つの短編集からなる公演のうちの一つ、「high-end soda」に出て来る、井本みくにさんが演じた樹里さんは、どんな人の話も聞いてくれそう。それに相手に対して話すことを仕向けるのが上手。相手の話から、それとなく気づいて欲しいと思っているフレーズを拾って立ち入った質問をして、切り込んでいく会話の組み立てが面白い。「デートって思ってたんだ?」と人魚に話しかける姿は、モテる人の話し方。仕掛けるのがうまい。「会話とは切り合いである」ということを感じさせるが、他人と恋人を会わせることに不安を覚える姿が愛おしい。樹里さんが人にするようなことを樹里さんにしたら、慌てるんだろうな。

 

他にも色々な登場人物が出てきて、それぞれに対して想像を膨らませられるのは、私がそういう人であったり、周りに似たような人がいるからだと思う。芝居の延長線上に自分の生活が交差する。

 

 

俺は前職は接客業で、老若男女ありとあらゆる人に接して、仲良くなったり結婚相手を紹介されそうになったりして、昨日は7年ぶりくらいに電話がかかってきたりした。店員仲間で個人で頑張るような仕事に就いたやつと、典型的なサラリーマンになった俺みたいな互いの違いに悩んだりもしている。そういう「マジでいろんな人が世の中にいるんだな」という事態を通過したから楽しめたっぽいぞ、というのは見終わってわかった。そういう個人的な日常っていうのは、カタチは違えど誰にでもあるわけなので、日常劇は日常を拠り所として客と演者をつなぐのかもしれない。だから見やすい。

 

タネがどうなっているかなんて気にもせずに手品を見るような感じで、役者の人たちの演技にすっかりのめり込んで芝居を見ているのが今だ。俺の顔を引きつらせたのは沈ゆうこさんが演じる美樹ちゃんだ。昔付き合っていた人に似た振る舞いを第三者視点で見るって、人生でなかなかないぞ。ただ、あれはあれで、ピュアさがいいんですよね……って思えるくらいのリアルさなんだよな。まじで関わっている人全員がすごい。

 

 

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