ウォーハンマーのミニチュアを塗っているときに赤いローブを明るくするために、ファレホの蛍光オレンジを塗っていった。そうすると深みのある赤色になっていくのが楽しかった。半ば強引に彩度を上げていくために蛍光オレンジを使ったのがうまくいったようだ。赤に対して、黄色を足す方法で明度も上がるので、一石二鳥だった。
ただ、すべての色を蛍光色にするのは難しい。なのでグレーズメディウムというファレホの透明度を上げる液体を買ってきた。蛍光オレンジは隠蔽性に乏しく、それは透明度が高いということだからだ。
試しに、ブルーグレーのスプレーで塗られたキューベルワーゲンにグレーズメディウムを足した青色を重ねると、嘘みたいに鮮やかになる。調子に乗って別の青色を重ねるとさらに彩度が上がる。鮮やかさとは、眩しさなのかと思いながらも、延々と鮮やかになる姿をアクセル全開で楽しんでいた。
透明感とは「表面の透け」と「下地の反射」によって表現されるものなので、グレーズメディウムで透明度を上げたということは、通常よりも表面の透けを高めたとも言える。下地の反射に関しては同系色を重ねていったので濁ることがなかったのだ。
また、ファレホは様々な色が展開されている。ニュアンスの効いた色があるのが持ち味だが、これは大抵複数の顔料を混ぜて作られている。なので厳密に言えば、塗装段階で濁っているものもある。これは例えば、緑を作るのに、緑色の顔料だけで作るか、青と黄色の顔料で作るのかの違いだ。後者は混色して緑を作るので濁っている。
どの塗料にどれくらいの色の顔料が混ざっているかはわからないが、その濁りがもたらすのは透明感の低下だ。そうすると、透明感の条件である「透け」は低下するので、「下地の反射」も起きなくなり、なんだかどんよりしてくるというわけ。グレーズメディウムで「透け」を上げることで今度は「下地の反射」を起こす。そうすると透明感が上がってくる。
ただ、ひたすら透明感を上げていくと、今度は見た目が軽くなる。透明感の対義語は重厚感かもしれないと直感的に思うくらいだ。事実「濁っていて、透明感に乏しい塗料」は実は透けも反射も発生しにくいので、重厚感を与えるには適している部分があるだろう。
透明感を生かしたまま、重厚感を当たるには配色テクニックのようなものが重要そうだ。例えば、暗部を黒ではなく紫にするとか、明るい部分は黄色みを増していくようにするとか。どちらも頭に色相環が入っているとわかりやすい。純色において、明度が高い方、低い方へ色相をずらしていくイメージだ。
他にも、青に対して補色の黄色やオレンジ系統の色の明度を思いっきり上げた色をハイライトに使うという方法もある。補色というと「眼がチカチカする色」というイメージがあると思うが、そのチカチカをハイライトに利用するのだ。キラキラしてほしい部分をチカチカさせるのは何ら悪いことではないだろう。なので男性の水色のシャツの明るい部分はハイライトフレッシュという色で塗っている。
この辺がわかると「影が紫だから、ハイライトは黄」みたいなイメージが浮かぶし、光と影をどの程度の色相差で表現するのかとか、想定したハイライトの色が純色だと影色よりも明度が低いとか、そういう面倒なことがわかってくる。理屈っぽい配色の世界が垣間見えるのだ。例えば、水色をハイライトに茶色を影にすると、コンプレックスハーモニーという配色が発生する。不調和の調和などといわれる配色は、ズレている様子が面白い。
グレーズメディウムはファレホを透けさせることで、透明感を構成する「透け」を高めるもので、鮮やかさを増すことができる。ただ、その分、軽さが出るので配色テクニックで軽さを補ってみると良い感じになる。みたいなことを考え出すとある程度理屈で配色が決まってくる部分があるようだ。それはグレーズメディウムに限らず……という話になるのだけど。それを守るか守らないかは、自由だし、無限に理屈がありそうなんだけど。
それに、下地をつや消しの塗料じゃなくて例えば、シルバーだとかつや有りの塗料にしたらどうなるだろう。「下地の反射」にはまだ考える余地がある。
※「ファレホに使われている顔料が何色であるか」というのは、実はウェットパレットに出した塗料に水を少量垂らしてしばらく置いておくとわかる。例えば茶色から思わぬピンク色が現れたり、オリーブグリーンから発色の良いグリーンが現れることがある。
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