リクエストは制約だ。「自由に描いてください」だと欲しいものは得られない。ただ、あれもこれもとお願いしすぎるとがんじがらめになる。短歌や俳句が文字数の制限によって趣や遊びを持った多彩な表現を得たような、良い制限のバランスを探るところにリクエストする側としての面白さがあるように思える。
このブログもそうだが諸々のインターネットサービスのアイコンを変えたくて、好きなイラストレーターに依頼することにした。好きが勝ってしまい、リクエストをするのが難しかったのでどう考えたのかを書こうと思う。「好きが勝ると難しい」というのは、自分の依頼がノイズになる可能性を危惧してしまうからだ。自分がお願いしたポーズが、自分がお願いした髪型が、却ってイラストレーターの良さを損なってしまわないかと実際3日くらい悩んだ。
Twitterをきっかけに存在を知ったので、今まで掲載していたイラストをさかのぼり、好きなものの好きなところを探した。均一な太い線で描かれているところと、毛束感のあるヘアスタイル、秀逸な衣装デザインが彼(彼女?)の画風で特にグッと来たところだった。依頼には本人がリクエスト募集に使っているSkebを使った。
指定したのは、ポーズと性別、髪型と持っている武器と色合いだった。髪型はそもそもの画風で良いと感じたところだ。武器はハープーンランチャーという銛を発射するもの、色合いは気に入っているミニカーを元ネタに依頼した。衣装はそれに沿うようなテイストでお任せにした。
ハープーンランチャーは、突き立てて持っているポーズを依頼したが、上がってきたものは車輪がついたものが上がってきた。あとで話を聞くと農具をイメージしたようで、HONDAの耕運機が「女性でも取り扱えるように」と作られたという話を思い出した。これは、想定していたよりもはるかに素晴らしいアイデアだ。衣装は膝をつく部分だけダブルニー仕様、ブーツのつま先の補強も良い。「形態は機能に従う」とはいうがその通りの見た目。
安全靴などを調べたそうで、自然とディテールが合致するものにアクセスできることに感心した。私は理屈で読み取ったが、その正解へすんなりとたどり着くという手早さのなんと創造的なことか。これこそがイラストレーターで、クリエイターだと感心しきりだった。
難しいのは依頼料だ。最低価格をSkeb側で提示されているのでそれでも良いが、リクエストの文章を眺めると結構なお願いをしている気がする。出せるだけ出そうと考えたが、自分の自由に使えるお金の何パーセントを出すか?とか家賃に比べてどうかとか、そういう決め方をして最低価格よりいくらか高めの金額を支払うことにした。
リクエストのきっかけになったのはハープーンランチャーで、これはネクロムンダで僕が撃ちたくて撃ちたくて仕方がない武器だ。「自分が好きなものを使っている人間」をお願いするというのはリクエスト方法としては結構アリな気がする。
絵をお願いした人
w.m (@2061_wm) | Skeb