Re:11colors

毎週木曜日更新(2023年5月現在)。模型、日常。面白いことあれば他の日も

素敵な車のプラモの話

 

ビートルのプラモデルを作ることはないだろうと思っていた。これは個人的な理由でそうだと決めていたからだ。とにかく人生経験の中でロクな思い出がない車で、例えば行きたくない病院に向かう途中にある飲食店に必ず止まっていたことは象徴的な出来事だ。

 

ただ、最近になって気持ちが変わる出来事があって、ビートルのプラモデルを作っている。ハセガワの1/24スケールのものはボディにド派手なパーティングラインがあることを除いて良いプラモデルだ。神ヤスというスポンジやすり使って、ガリガリと削ればたやすくパーティングラインを取り除けるので、良いプラモデルということになる。

 

もう何年も前になるが随分と心を病んでいるときに、ガシャポンを回すのですら「どうせ欲しいものは当たらないんだよな」と思いながら回していた。そうして欲しいものが当たらないと「思った通りにダメですね」と落胆していた。

 

それが、ある日急に「運命を乗り越えるのは自分である」と思い直した。ガシャポンを回すときにちょうどKEN THE 390の真っ向勝負を聴いていて、”敵は自分とか寒いこと言わずに、越えたいあいつの背中”というリリックが流れて来て、「ああ、これがそういうことね」と直感的に理解したのだ。

 

ここで、生活が続いていくことに気づいたんだと思う。ガシャポンのハンドルをひねろうとするこの瞬間から、未来にかけての全てが自分の選択で良くなったり悪くなったりする。それをかなり生々しく感じた。その後はガシャポンを回すたびに「どうせ当たらない」と思うことはなくなって「運命を乗り越えて自分の欲しいものを手に入れられるか」と考えるようになった。もちろん、越えられたり越えられなかったりするのだけど。

 

要するに、気の持ちようって話になるんだけど「運命を乗り越えるガシャポンの日」からは色々あった中で体調は治っていった。一つ一つの出来事をどう受け取るのかは自分次第だし、それで気を病むことは特に必要ないなと思えたからだと思う。元気になった今の段階で一番楽しみなのは、仕事で全力で動くとどうなるのか? ということで、これは今年度の上半期に一気にやったところ穏やかな社風では相当浮くと気づいたので、今は小出しにしているが、部署を超えて仲のいい人が増えたのでまぁ良しとする。

 

ビートルのプラモデルを作ろうと思ったのは、家のそばにビートルが止まっている駐車場が3つくらいあることに気づいたから。不吉の象徴は別に自分が向かう嫌なところにあるわけではなく、どこにでもある素敵な車なのだ。パーティングラインを削ったボディは、サーフェイサーという黒いスプレーを吹いて、削り跡が残っていないかを確認した。今は、次の工程に進むのを楽しみにしている。

 

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