なんというか「無事、あなたの個性は、あなたに身につきましたよ」という風に言われたような気分がした。ずっと柄物を着ていてよかった。
今年、一番良い買い物をしたのはスーツだ。いつもは百貨店でスーツを作るのだけど、昔お世話になっていた店員さんが、春ごろに戻ってきた。彼がいない間は、なんだか張り合いがなかったのでスーツを作るのをサボっていた。
近辺に用事があるついでに立ち寄った売り場で「あ!」とお互いに声を出して再会。いろいろと話をして、その流れでスーツを作ったというわけ。
当日は、ナイロンのシャカパンにプルオーバーのパーカー。インナーには90'sのHIPHOPを彷彿とさせるデザインのスポーツブランドのTシャツを着ていた。そこで「パーカー脱いでください」って言われたのはマジで笑った。脱いだ姿を見て向こうも笑っていた。「4年ぶりっすね」と言われながら変わった体形についてもケタケタ笑ったりもした。
生地はモスグリーンと茶色の細かなチェック柄で、通年着れるものにした。昔は「内ポケットに、何も入れられないっすよ」なんて言いながら、イケイケのカットを提案してくれていたけど、私も彼も年を取ったのと、トレンドもだいぶ変わったので「今はまぁ、こんな感じかな」と、ふんわりと緩めのラインを描くイメージで作ろうという話でまとまった。
出来上がったスーツを着てみる。そうすると「おお、これは年を取ったな……」という驚きがあった。柄物のスーツを着ると『同世代と違うスーツを着ているオレ感』が昔は出たのだけど、今はそういったものがない。ただただ、良いスーツを着ている人間が目の前にいる。しかも、以前よりも身体に沿わない、緩いシルエットにした影響で、リラックスした着心地と、どこか優しそうな雰囲気が良い。
かなり気に入っているので、休みの日でも「今日はちゃんとするか」というときに着る。映画を見にったり、演劇を見に行ったりするときに、サラッと着ておくと良い感じなので。
ああ、これがよく言う、そして若いころになんとなくあこがれていた「サラッと着る」ってやつか。
今週の物販