初めて高い腕時計を買って店を出る瞬間に視界の端っこに写った時計があった。バカか。買って一分と立たないうちに次に買うものを考えている。しかし、価格はそのとき購入したものの倍の倍。買えないものだった。
「買えない」とはどういうことなのだろう。これは、少し考えてみると2つに分けられることに気づく。1つ目は簡単。「全財産を絞り出しても買えない」だ。1000万円の時計は僕の全財産を絞り出しても手に入れることができない。2つ目は「怖くて買えない」だ。これは「今までそんな金額のものを買ったことがない」という感覚が近いと思う。今まで3万円の時計しか買ったことない人には10万円の時計は高い。10万円の場合は40万円も出せないとか。
「高い、出せない」の裏に潜むものは失う怖さだ。リスクと言ってもいい。一番わかりやすいのは、紛失のリスク。他にも「気に入った時計が、世間的に見てダサいものだったらどうしよう」みたいなリスクもあるだろう。ロレックスやオメガなどの名だたるブランドの歴史と伝統がもたらす世間的な評価の大事さを感じる。
僕が気に入ったのは以前書いた、ドイツの時計メーカーDAMASKOのユーロファイターモデル。一番かっこいいクロノグラフはこれだ!とすぐに思った。それこそ、時計を買って時計屋を出る瞬間に。
現用戦闘機の名前を冠している点に現在進行系の歴史を感じることができるし、アイスニッケル加工といった使用されている素材の面白さや、とろけるように折れ曲がるブレスレットも最高。文句のつけようがない。それを、買う。ここまで好きなら、買うのも怖くない。
そうして、分割に分割を重ねて手に入れた時計は瞬く間に価格改定の波に飲まれて「全財産を絞り出しても買えない」のカテゴリに足を突っ込んだ。買えなくもないけど、もっと支払いを分割しないといけない。それは精神的負担が大きいと思った。未来のことはわからないから。「未来が怖くて買えない」というわけだ。もっと若ければ、怖くなかったと思う。ただ、今が一番若い。
僕の上半期のベスト〇〇はこのDAMASKOのユーロファイターモデルということになる。買い物を示す「バイ」や「高級品」といった言葉が〇〇に入る。それにドキドキしながら買ったあとに腕時計をもらってしまうのだから、面白い。
なんだか妙なきっかけになった買い物でもあり、特別感が一層高まっている。
今週のお題「上半期ベスト◯◯」
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