白を用いたほうが黒と白の明度差が強くなるので鮮やかな仕上がりを目指す場合は白いほうがよさそうだ。銀の場合は、明度差は黒と白よりも少なく、反射の差が強いので重厚感を出しながら透明感を出していくことに強みがあるだろう。
50年前に発売されたプラモデル2020年代に命名された塗装方法で仕上げる行為は、さながらクラシックの名曲を現代の環境で演奏するようなものだと感じた。
タケウチメソッドというミニチュアの塗装方法がある。これはウォーハンマーを塗る際に気軽に完成度の高い仕上がりを目指す方法だ。具体的な手順は考案者のジャイアントホビー竹内氏の動画を見ることで理解できると思うが、特徴的な動きはサーフェイサーなどを使って真っ黒に塗り、その後に銀色の塗料でドライブラシを行うという最初の2手だ。スラップ&チョップという塗装方法があるが、あちらはドライブラシを白で行うので、ドライブラシの色が違う。
タケウチメソッドの利点はいくつかあるが、動画の中で氏が語っている最後のメリット「メタルミニチュアっぽくなる」はミニチュアを塗る上で特に強みがあるように感じた。というのも、私が塗る上で辛く思う点が「途中がかっこ悪い」というものだからだ。それが黒の下地に銀のドライブラシでいきなりかっこよくなるので、解消される。
実際に塗装で失敗するケースを考えると、最初の段階で何かの我慢がきかず、必要以上に色数を使用してバランスが取れなくなる、塗りたいところだけ塗って、陰影や汚しなどを部分的に進めてしまい全体の仕上がりに調和がとれず、飽きて、失敗するというパターンがほとんどだ。それがわかっていてもジワリジワリと山登りのように毎回進めることは難しい。
メタルミニチュアっぽくなったタミヤのSASジープは、まさか発売された1974年にはこう塗られるとは思いもしなかった姿だ。そこにボックスアートに近しい緑色を透かすように塗って行くステップはいつもと違う仕上がりを予感させる見た目。
下地を生かしながら幾重にも色を被せる工程は塗れば塗るほど色合いが複雑になるので、同じ色を何度も塗り重ねるよりも、手数に対して見た目にうつる色の情報量が多い。その分、色の調和を意識しないといけないので、スピードを得る代わりに考える時間が必要になる。色彩理論やボックスアートといったすでに確立されたもは大いに参考になる。今回のSASジープは3時間ほどで大体の塗装を終えることができた。
黒に白のドライブラシと、銀のドライブラシで何が違うのかというとこれは透明感に影響があるように思える。透明感とは「透け」と「反射、または吸収」によって生まれるものだが、下地を透かして塗ることで「透け」は達成される。なので下地は透けを、反射するのか吸収するのかだ。黒に銀のドライブラシの場合は、銀が強烈に反射するのと黒の吸収の対比が生まれるので質感の差が黒に白よりは大きく出るように思える。
思いもよらぬ姿から、いつか欲しいと思っていた「暗いけど鮮やかな仕上がり」のプラモデルを手に入れることができたのは非常に楽しい経験だった。
<タケウチメソッドの動画>
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