使い込んだ様子のものとか、均一ではない表情に愛着を覚えたりすることは、きっと誰にでもあったりして、かっこいいものだと時計だとか指輪だとか、ジーンズやジャケット……といった具合でファッションアイテムが多いのかな。そうでもないものだと、毛布とかクッションとかぬいぐるみ。
我が家にも昨年の今頃精神的に参っていた頃に受けたセミナーで、講師の方に褒めてもらったことが嬉しかったのでその直ぐ側にあったポルシェのお店で買ったポルシェのぬいぐるみがある。かわいい。
AIRFIXのヴィンテージクラシックス 1/72ホーカー デモンはクッションとか毛布、ぬいぐるみの類に近い、決して一級品の何かというわけではないが、それでも愛着が湧く良さがあるキットだと思う。
私は、この毛布がペンドルトンのアレだったらな!とか、クッションはもっと高級なもので、ぬいぐるみはシュタイフでとかそういう「こんなに長く使うのであれば、もっと良いものにすればよかった」という後悔をしたり、では、その一方で今話したような丈夫で長く使えそうなものに取り替えようとすると、大きさが合わなかったり、思ったより重かったり軽かったり、手で触った感じが気に入らなかったりとかそういうことで結局いつまで経っても昔使ったもの以上のものみたいなのは見つからなかったりして、そのまま「なんか家にあるもの」を許してしまう。
決して上等なものではないが、良いというもの。
そしてこのデモンもそんな感じがする。
複葉機の面白いところは作る側にしっかりとに組み立てを要求するところだと思う。力任せに翼を棟上げすれば支柱はポロポロと外れるし、足回りも上手く安定させないといつまで経ってもグラグラ。ただ、どちらもしっかりと組み上がるとバシッと固くなるので、骨組みが持つ強度というのがよく分かる。本当に複葉機を作っているような、頭を使う「ハードな組み立て」が楽しい。
そして、その複葉機の文法は多分、現代のキットでもさほど変わらないんだろうなと思う。せいぜいパーツの精度が上がるくらいで、「上翼と支柱が一体成型」みたいなことは起きないだろう。
出来上がったものは超絶ディテールでバキバキに決まったものというよりは、複葉機の文法を抑えた素晴らしい存在。複葉機の楽しみをたっぷりと味あわせてくれる。気分が良かったせいもありしっかり塗装をしてデカールも貼って張り線も渡してしまった。大作や名作ではないかもしれないが、素晴らしい凡作だと思う。すごい好きだ。
それでも「この力の注ぎ具合をもっと良い複葉機のプラモデルに……!」と思ったりもするが、さっき話した毛布だとかクッションのように、気合を入れて作ろうと思えば思うほど、愛せる飛行機は見つからなくなるだろう。
複葉機のプラモデルが部屋にある様子は私の中ではなんだか特別な気分になる。なんだか、大人のプラモデルという感じがするからだろうか。
よくできた何かが部屋にあるのは気分がいい。
複葉機、一丁、いかがでしょう。
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