Re:11colors

毎週水曜更新(2021年9月現在)。革靴、模型、日常。

早さの意味が評せないプラモデルという世界

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私はプラモデルを作るのも、(レジンも含む)フィギュアを塗るのも早い方だと思う。これは早く出来上がりが見たいという気持ちの現れだと思うし、集中力が短時間しか続かないとかそういう適性の問題もあると思う。1/24だとか1/20という縮尺のリップクリームかそれより大きいくらいのフィギュアを金曜日の夜から明け方まで塗装をして、数時間仮眠して土曜の朝に仕上げる。というと大体9時間くらいだろうか。サラリーマンの法定内労働時間の8時間に1時間残業がつくくらい(ここでうちはそういう概念はないからな……と思ったあなた、今、私は趣味の話していますよ!)。

 

と、ここまで書いてフィギュアの塗るスピードが早いか遅いか分からなくなってきた。ただ、制作のスピードは概ね早いといってもいいだろう。組むだけ、スプレーをボディパーツに吹くだけ、と非常にシンプルなプラモデル生活をしていたけどフィギュア塗装をして「筆塗りの塗装」というフィールドに足を踏み入れたときに「あ、やっぱ俺早いな」って自分で思ったりもした。

 

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ただ、この趣味、概ね「早い」ということに関しての評価がまだまだ怪しい。早いことは手放しで褒められることではなく、反対にじっくり取り組むことに関してはあんまり悪い話は聞かない。なんでだ?というと、私が数年前に出会ったオックスフォード大学に留学していたという女性の話を思い出す。

 

彼女は「興味を持ったものはとりあえずやってみたいと思うしやるようにしている」と話していて私に料理の話をしてくれた。まずは、子牛を丸々買ってきてさばくところから始めて、ソースなどもできる限り手作りで一から十まで時間をかけて行う。一度、全部やってみる。次からは「この工程は自分には必要がないな」という部分を検討して同じ料理を作る。わかりやすくいうと肉はあらかじめ部位ごとに切り分けられたものを買うとか、そういうことをする。

 

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子牛を買ってきて完成までの手順を運ぶことを彼女は「真面目」と評していて、その次の工程を「真剣」と言っていたし、続けて「日本人は真面目は多いけど真剣は少ないわね」とも言っていた(ただ、真面目にやらないと真剣にはやれないとも話していたけど)。この、真面目から真剣への変換をポジティブに評価したり、言葉として表現することができず、せいぜい客観的な忙しさや趣味の多様さに寄りかかることしかできないのが現状だろうか。

 

あるいは博報堂の加藤 昌治は「企画とは、考えること、選ぶこと、形にすること3ステップだ」という理論から「まずは考えることだけやりましょう」という徹底的にアイデア出しをさせる講座を開くが「考えたことを評価しないでください、それは選ぶことなので」とも言った。これはプラモデルにおける「組み立てるだけ」という行為に類似性がある気がする。

さらに加藤は続けて「ベテランになると経験から”選ぶこと”と”形にすること”は得意になってきて”丸めること”ができるようになるが、反面”考えること”ができなくなってくる」という話をしていたが、この辺に「考えるだけ、組み立てるだけ」の重要性が潜んでいるのではなかろうか。もちろん1ステップだけを行うのでこなせる数量が上がる。

 

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思うに「早い」ということに関して何も観察されていないのが現状だと思う。早さが何を生むのか、どうしたから早いのか、そしてそうする意味がどこにあるのか。あまりにも早すぎて観測ができないのだ。逆に言えば「遅い」ということは工程が増え続けることでもあるので、単純に緻密な大作が生まれやすく、その瞬間瞬間にドラマを観測できるのでより評価がしやすいのだろう。プラモデル、加速しろ。

 

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